自分の経験を商品にしたい。でも、講座にするほどの中身が自分にあるとは思えない。もっと詳しい人はたくさんいるし、自分が教えるのはおこがましい気がする。そう感じて、最初の一歩で止まっている方は少なくありません。
私も独立したばかりの頃は、何を発信すればいいのか分からず、ブログやSNSを続けていました。「自分には語れることがない」という感覚は、とてもよく分かります。
結論から言うと、中身が足りないと感じるなら、最初は「教える側」ではなく「聞く側」に回る方法があります。その分野の専門家に話を聞き、その取材を商品にする。あなたの役割は、見込み客が知りたいことを集め、専門家から引き出し、分かりやすくまとめて届けることです。これは立派な価値であり、同時にあなた自身の専門性を育てる近道にもなります。
この記事では、最初の商品を「完成品」にしなくていい理由、聞き手に回ると手に入るもの、取材を商品にする5つの手順、そして気をつけたいことを解説します。
最初の商品は「完成品」でなくていい
まず、最初の商品についての考え方をそろえておきます。
多くの方は、最初から何十本もの動画がそろった、完成された講座を作ろうとします。けれど、まだ誰にも売ったことがない段階で完成品を目指すと、何か月も作り込んだ末に、求められていなかったと分かることがあります。
最初の商品は、今すぐ出せる形で構いません。少人数に届けて、買ってくれた人と話し、その声をもとに本格的な講座を作る。最初の商品の役割は、利益を出すことより、お客様と対話するきっかけを作ることです。
今すぐ出せる形には、たとえば次のようなものがあります。
| 形 | 中身 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 少人数のオンライン勉強会 | 1つのテーマに絞って話し、質問に答える | 話せる中身がある程度ある人 |
| 個別の相談・添削 | 相手の悩みや作ったものを直接見る | 1対1で深く関わるのが得意な人 |
| 専門家への取材 | 詳しい人に話を聞き、まとめて届ける | 自分の中身が足りないと感じる人 |
この記事で扱うのは、3つ目の取材です。少人数から始めて売上を作る考え方は、集客3名でも売上は作れますでも書いています。
聞き手に回ると、何が手に入るのか
取材を商品にすると聞くと、「他人の話を売るだけではないか」と感じるかもしれません。でも、聞き手には聞き手にしかできない仕事があります。
1つ目は、質問を選ぶことです。専門家は知識が深い分、初心者がどこでつまずくかを忘れていることがあります。見込み客に近い立場のあなたが「ここが分からない」という質問を選ぶことで、専門家の知識が、初心者にも届く形になります。
2つ目は、まとめることです。長い話の中から要点を取り出し、順番を整え、見出しをつけて届ける。これだけで、同じ話でもずっと学びやすくなります。
3つ目は、届けることです。専門家の多くは、知識はあっても、それを商品にして届ける時間や手間をかけられずにいます。そこをあなたが引き受けます。
そして、取材を続けるほど、あなた自身にも大きなものが残ります。
- 中身:専門家の話を何度も聞くうちに、その分野の知識が自分の中に積み上がる
- 名簿:取材の商品を買ってくれた人は、その分野に本気で関心がある見込み客になる
- 信頼:専門家とのつながりができ、次の企画にも協力してもらいやすくなる
- 次の商品の種:買った人の感想や質問から、本格的な講座で扱うべきことが見えてくる
取材を商品にする5つの手順
ここからは、具体的な進め方です。
手順1:話を聞く相手を探す
まず、あなたが扱いたい分野の専門家を探します。見つけやすいのは、その分野の本を書いている人や、長く発信を続けている人です。本の著者は、その分野を体系立てて語れる人なので、取材の相手に向いています。
候補はひとりに絞らず、多めに書き出しておきます。断られることもあるので、何人かに声をかけられる状態にしておくと、気持ちも楽です。専門家の探し方は、Amazon著者検索のベンチマークリサーチ術や、売れる著者を合法的にストーキングする方法も参考になります。
手順2:相手の得になる形でお願いする
次に、専門家に取材をお願いします。「無名の自分が頼んでも相手にされないのでは」と不安になるかもしれませんが、専門家にとっても、自分の知識を新しい人に届けられる機会はうれしいものです。
お願いするときは、次のことを最初に伝えます。
- 何のための取材か:どんな人に向けて、どんな商品にするのか
- 相手の手間:話してもらう時間だけで、準備・編集・販売はこちらが引き受けること
- 相手の得:売上をどう分けるか、相手の本や活動をどう紹介するか
- 使い方の範囲:録画をどこで、いつまで、どう使うか
特に売上の分け方と使い方の範囲は、話がまとまった段階で、必ず文字にして残しておきます。後から「そんなつもりではなかった」とならないためです。
手順3:聞きたいことを、見込み客から集める
取材の前に、あなたの見込み客に「今度、〇〇に詳しい方に話を聞きます。何を聞いてみたいですか」と呼びかけて、質問を集めます。
これには2つの良さがあります。1つは、見込み客が本当に知りたいことを取材で聞けるので、商品の中身がずれないこと。もう1つは、質問を寄せてくれた人が、取材の商品が出るのを待ってくれる存在になることです。質問を集める段階から、すでにお客様との対話が始まっています。
集まった質問は、似たものをまとめて、「基本」「よくあるつまずき」「一歩進んだ話」の順に並べておくと、取材の流れがきれいになります。
手順4:話しやすい場を作って、収録する
収録で大事なのは、専門家がリラックスして話せる場を作ることです。
最初に「録画なので、後からいくらでも編集できます。言い直しも気にせず、気楽に話してください」と伝えます。生配信ではないと分かるだけで、相手は肩の力が抜け、本音や深い話が出やすくなります。
質問は順番を決めておきつつ、話が脇道にそれたときは、無理に戻しすぎないことです。脇道の話にこそ、本には書かれていない、その人ならではの経験が出てくることがあります。
聞き手として意識したいのは、答えを受け取ったあとの「もう一言」です。専門家の答えが少し抽象的だと感じたら、「たとえば、どんな場面でしょうか」「初心者がそれをやると、どこでつまずきますか」と聞き返します。この一言で、話が具体的になり、見る人が自分の場面に置き換えやすくなります。
反対に、聞き手が話しすぎるのは避けます。自分の意見や知識を長く挟むと、専門家の話す時間が減り、商品としての価値も下がります。聞き手は、相手の話を引き出す役に徹するくらいがちょうどいいです。
手順5:商品にして届け、感想を集める
収録が終わったら、聞き取りやすく編集し、冒頭に「この取材で分かること」、最後に「要点のまとめ」を添えて、商品の形に整えます。要点を文字でまとめた資料をつけると、さらに学びやすくなります。
届けたあとが、いちばん大事なところです。買ってくれた人に感想や、新しく出てきた疑問を聞きます。「もっとここを詳しく知りたい」「自分の場合はどうすればいいのか」。こうした声が、次にあなたが作る本格的な講座の材料になります。
専門家が同意してくれるなら、専門家の読者にも取材の商品を紹介してもらう方法もあります。その場合は紹介料の取り決めも含めて、手順2の段階で話しておきます。
たとえば、家庭菜園を始めたい人向けに発信している人がいたとします
例で考えてみます。ベランダでの家庭菜園を始めたい人に向けて発信している人がいたとします。本人も育てた経験はありますが、講座にするには知識が足りないと感じていました。
そこで、土づくりの本を書いている専門家に取材を申し込みました。事前に読者から質問を集めると、「土はどれくらいの期間で入れ替えるのか」「虫が出たときにどうするか」といった、初心者ならではの質問が集まりました。
取材の録画を編集し、要点のまとめをつけて、手に取りやすい価格で届けました。買った人の感想を読むと、「土の話は分かったけれど、自分のベランダの日当たりで何を育てればいいか分からない」という声が多く出てきました。これが、次に作る本格的な講座のテーマになります。聞き手から始めたことで、何を教えればいいかがお客様の言葉で見えてきたわけです。
取材を商品にするときに気をつけたいこと
最後に、気をつけたいことを4つ挙げます。
1つ目は、専門家の話を自分の実績のように語らないことです。取材で聞いた経験や数字は、あくまで専門家のものです。販売ページや発信で紹介するときは、「〇〇さんに伺った話」とはっきり分かる書き方にします。
2つ目は、約束していない使い方をしないことです。取材の録画を別の商品に使う、切り出して発信に使う、といったことは、事前に同意を得た範囲だけにします。
3つ目は、「必ず成果が出る」といった約束をしないことです。専門家の知識であっても、受け取った人の結果は人それぞれです。
4つ目は、聞き手のままで終わらないことです。取材を重ねるほど、あなたの中にも知識と経験が積み上がっていきます。お客様の声から見えたテーマで、いずれは自分の講座を作る。取材は、そのための助走だと考えてください。自分の経験を商品の材料にする考え方は、経験と知識を商品の材料に変える棚卸し7項目で解説しています。
まとめ
- 最初の商品は完成品でなくていい。役割は、お客様と対話するきっかけを作ること
- 中身が足りないと感じるなら、専門家への取材を商品にする「聞き手」から始められる
- 聞き手の仕事は、質問を選び、まとめ、届けること。続けるほど、中身・名簿・信頼・次の商品の種が残る
- 手順は、相手を探す → 相手の得になる形でお願いする → 見込み客から質問を集める → 話しやすい場で収録する → 届けて感想を集める
- 専門家の話を自分の実績にしない。使い方の範囲と売上の分け方は、必ず文字で残す
まずは、あなたが扱いたい分野で「この人に話を聞いてみたい」と思う専門家を、何人か書き出してみてください。そこから、最初の商品の形が見えてきます。


