面談の台本を作り、何度も読み込んで、ほぼ暗記した。それなのに本番では、相手が台本と違う答えを返した瞬間に頭が真っ白になる。次の質問が出てこず、沈黙を埋めようと商品の説明を始めてしまう。
こうなると、「自分は話すのが向いていないのかもしれない」と感じてしまいますよね。でも、うまくいかない原因は、話の才能ではありません。台本を「覚える」ことと、型を「使える」ことは、別の段階だからです。
結論から言うと、個別面談の上達を決めるのは、面談の数と練習の量です。そして練習には、読むだけでなく声に出す時間が必要です。型は「読む」「思い出しながら言う」「自然に口から出る」という3つの段階を通って、はじめて自分の言葉になります。
この記事では、その3つの段階、二人一組の練習のやり方、一人でもできる練習、そして練習の場になる面談の数を増やす導線の見直し方をお伝えします。
暗記した台本で固まるのは、まだ「読む」段階にいるから
台本を暗記するのは、悪いことではありません。ただ、暗記は「台本どおりの順番で、台本どおりの答えが返ってくる」ことを前提にしています。実際の面談では、相手の答えは毎回違います。台本にない答えが返ってきたとき、暗記だけでは次の一言が出てきません。
いちばん多い失敗は、台本を読んで「分かった」気になって、声に出す練習を飛ばすことです。頭で分かっていることと、口から自然に出ることの間には、大きな差があります。声に出したことのない言葉は、緊張する本番ではまず出てきません。
もう一つ、面談の型そのものを見ておきたい方は、個別面談の5つのステージと最初の「つながる」で全体の流れをまとめています。練習するのは、この順番です。
型が自分の言葉になるまでの3つの段階
台本どおりに話そうとすると、最初はどうしても棒読みになります。それで構いません。型が自分の言葉になるまでには、次の3つの段階があります。
| 段階 | やること | この段階で分かること |
|---|---|---|
| 1 台本を読む | 台本を見ながら、声に出して読む | ステージの順番と、質問の並びが体に入る |
| 2 思い出しながら言う | 台本を閉じて、思い出しながら言う | 言葉に詰まった場所が、まだ身についていない場所 |
| 3 自然に口から出る | 相手の答えを聞きながら、次の質問が考えなくても出てくる | お店で料理を注文するくらいの自然さで言える |
大事なのは、2つ目の段階で「詰まった場所」を見つけることです。全部をなめらかに言えるようになる必要はありません。詰まった場所だけを、もう一度1つ目の段階に戻して読む。これを繰り返すと、練習の時間が無駄なく使えます。
自分の言葉にする=順番を変える、ではない
ここで1つ、勘違いしやすい点があります。型を自分の言葉にするというのは、順番を変えることではありません。
面談の型は、ある質問が次の質問の土台になるように組まれています。途中で自分の質問を差し込むと、話がそちらに流れ、気づけば時間切れで、悩みを聞く途中で終わることがよく起きます。変えてよいのは言い回しで、順番はそのまま守ります。
順番を守るもう一つの理由は、うまくいかなかったときに原因が分かるからです。型どおりにやって決まらなかったなら、どのステージで相手の反応が変わったかを振り返れます。毎回違うことをしていると、振り返りようがありません。再現性は、同じことを繰り返したときにだけ生まれます。オリジナルで頑張るな、パクって超えろ。まずは型どおりに、何度も繰り返してください。
二人一組の練習のやり方
練習の相手は、同じように講座やコンサルを売っている仲間がいちばんです。家族や友人に頼んでも構いません。
- 売り手役とお客様役を決める。三人いれば、一人は見る役に回る
- お客様役は、人物の設定を1つ決めて、その人になりきる(たとえば「技術で仕事をしていて、体の不安から働き方を変えたい50代」など)
- 1つのステージを5分ほどで区切り、台本の順番どおりに進める
- 終わったら、お客様役が「話しやすかったところ」と「言葉に詰まったところ」を伝える
- 役を交代して、同じステージをもう一度やる
お客様役の設定は、実際に面談に来る人に近いほど練習になります。過去の面談で多かった悩みや、よく出た迷いをもとに、設定をいくつか作っておくと便利です。
見る役が確かめる4つのこと
見る役がいると、自分では気づけないことが分かります。見るのは、次の4つです。
- 「でも」「しかし」が出ていないか:相手の気持ちを打ち消す言葉は口ぐせになっていて、自分では気づきにくい
- 質問のあと、相手の答えを待てたか:沈黙を自分で埋めていないか
- 相手の話を聞き流していないか:次の質問を考えるのに気を取られていないか
- 気持ちを確かめる一言が力んでいないか:その一言のところだけ、声の大きさや速さが変わっていないか
最後の点は、練習でとても差が出るところです。気持ちを確かめる一言に力が入ると、相手は圧を感じて答えなくなります。それまでの会話と同じ調子で言えているかを、見る役に注目してもらってください。
沈黙に慣れる練習
質問をしたら、相手が答えるまで黙って待つ。これが意外とできません。練習では「質問のあと10秒は自分から話さない」と決めてやってみてください。10秒は、やってみると驚くほど長く感じます。その長さに慣れておくと、本番で相手が考え込んだときに、焦って説明を足さずに済みます。
一人でもできる練習と、続け方
毎日10分のほうが、週に1回の2時間より身につく
練習は、まとめてやるより、毎日少しずつのほうが身につきます。朝の決まった時間に仲間とオンラインでつなぎ、1ステージずつ交代で回すと続けやすくなります。
続けるコツは、練習の時間と場所を先に決めてしまうことです。「時間ができたらやる」では、ほとんどの場合やりません。曜日と時間を決め、予定表に入れておきます。気合いで続けるのではなく、続く仕組みを先に作るという考え方です。
一人のときは、録音して聞き返す
相手がいないときは、自分の声を録音して聞き返すだけでも、多くのことに気づけます。
- 「でも」「しかし」が何回出たか
- 早口になっている場所はないか
- 質問のあとに、間を取れているか
- 気持ちを確かめる一言で、声の調子が変わっていないか
自分の声を聞くのは、最初は少し恥ずかしいものです。それでも、一度聞くだけで直す場所がはっきりします。なお、実際の面談を録音して振り返る場合は、必ずお客様の同意を得てください。
自分の「迷った買い物」を思い出す
もう一つ、一人でできるおすすめの練習があります。これまでの人生で、いちばん迷った買い物を1つ思い出し、買う前に何に迷ったか、最後に何が決め手になったかを書き出すことです。自分が迷いを越えたときの感覚を思い出すと、相手の迷いに向き合うときの言葉が、台本の言葉ではなく自分の言葉になっていきます。
練習の場になる面談の数を増やす導線
練習をしても、本番の面談がなければ上達は止まります。面談の数を増やすには、面談に人が来る導線が必要です。面談に来る人は、ある日いきなり現れるわけではありません。あなたを知り、連絡先を残し、あなたの話をある程度の時間見たうえで「この人に相談してみたい」と思って来ます。
- 連絡先を残してもらう:メールやLINEなど、こちらから案内を届けられる形で登録してもらう
- 見てもらう時間を増やす:セミナー、動画、メールで、あなたの考え方に触れる時間を作る
- 面談に招く:面談を「自分の課題を一緒に整理する時間」として案内する
私がよく使うのは、3日間ほどのオンライン企画です。参加者は毎日少しずつ自分の課題に取り組み、最終日に面談の案内を受け取ります。自分の課題に気づいた状態で面談に来てくれるので、悩みを聞く段階がとても進めやすくなります。
個別にメッセージを送るときの約束
知り合いや、発信に反応してくれた人に、個別にメッセージを送ることもあるでしょう。その大前提は、相手との関係と、受け取る側の気持ちを大切にすることです。面識のない相手に同じ文面を一斉に送るのはやめてください。各SNSの規約や、メールの送り方に関するルールも確認しておきましょう。
送るときは、売り込みではなく「判断を手伝ってもらう」形にします。挨拶と相手の活動で良いと感じた点、同じ立場の人が抱えやすい課題、自分が何を手伝っているか、そして「役に立ちそうかどうか、判断を手伝っていただけないでしょうか。ご興味がなければ読み流してください」という頼み方。断られたら、それ以上は送りません。
面談に人が来ないときは、症状から見直す
面談の数が増えないとき、まず疑うのは自分の話し方ではなく、導線のどこで止まっているかです。
| 症状 | 考えられる原因 | 見直すこと |
|---|---|---|
| 登録はあるのに、セミナーを見てもらえない | 案内が届いていない/見る理由が伝わっていない | 案内の回数と時間帯、件名や最初の一文 |
| 見てもらえるが、面談の申し込みがない | 面談で何が得られるかが伝わっていない | 面談の中身を具体的に書き、名前も「講座の設計図を一緒に作る60分」のように変える |
| 申し込みはあるが、当日来ない | 申し込みから面談までの日が空いている | 日程を近くする。前日と当日に一言連絡する |
| 面談はできるが、決まらない | 伝えられるお客様の話が少ない | 最初のお客様に深く伴走し、本人の許可を得て声を集める |
当日来ない人への連絡の仕方は面談リマインドと未返信フォローの考え方、どこで止まっているかを数字で見る方法は申込から成約までの9つの数字の見方で解説しています。
面談が回り始めたら、台本や質問の並びを文書にしておくと、自分の面談も安定します。いずれ自分以外の人に面談を任せるときも、同じ順番と同じ線引きで進めてもらえます。これが、1対1の面談を仕組み化していく最初の一歩です。
まとめ
- 面談の上達は、話の才能ではなく、面談の数と練習の量で決まる
- 型は「台本を読む → 思い出しながら言う → 自然に口から出る」の3段階で自分の言葉になる。変えるのは言い回しで、順番は変えない
- 二人一組の練習では、見る役に「逆の意味の口ぐせ・沈黙・聞き流し・力み」を見てもらう
- 練習は毎日10分を、時間と場所を決めて続ける。一人なら録音して聞き返す
- 面談に人が来ないときは、導線のどこで止まっているかを症状から見直す
次の一歩として、あなたの面談台本の最初のステージだけを、今日1回、声に出して読んでみてください。どこで言葉に詰まるかが分かれば、明日の練習でやることが決まります。


