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仕事を請け負うほど、時間の切り売りから抜けられません|フリーランスが「やる側」から「教える側」に回る5つの手順

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依頼は途切れずに来ている。腕も上がってきた。それなのに、月の収入はある額からなかなか伸びない。休めば収入が減るので、体調が悪くても手を止められない。デザイン、ライティング、経理、ウェブ制作。どの分野のフリーランスの方からも、同じような悩みを聞きます。

収入が頭打ちになるのは、腕が足りないからでも、営業が下手だからでもありません。収入の形が「働いた時間の分だけ受け取る」形になっているからです。この形のままだと、どれだけ単価を上げても、1日の時間という上限からは逃げられません。

結論から言うと、実務で身につけた知識や手順を、「やってあげる仕事」ではなく「やり方を教える商品」にすると、この上限を外せます。同じ知識を、一度作った形で何人にも届けられるからです。実務をすぐにやめる必要はありません。教える商品を横に並べていくことで、少しずつ収入の形を変えていきます。

この記事では、なぜ教える側に回ると時間の切り売りから抜けられるのか、学ぶ人が何にお金を払うのか、そして教える側に回る5つの手順を解説します。

実務の収入は、働いた時間で上限が決まる

まず、実務で稼ぐ形と、教えて稼ぐ形の違いを整理します。

実務の仕事は、お客様一人ひとりのために、毎回あなたが手を動かします。10件の依頼をこなすには、10件分の時間がかかります。収入を増やすには、単価を上げるか、働く時間を増やすしかありません。単価には相場があり、時間には限りがあります。

教える商品は違います。あなたが実務で身につけた手順を、動画や資料、講座の形に一度まとめれば、それを何人に届けても、作る手間は増えません。材料を仕入れる必要もなく、在庫を抱えることもありません。

比べるところ 実務を請け負う やり方を教える
1件あたりの手間 毎回同じだけかかる 一度作れば、届けるたびには増えない
収入の上限 働ける時間で決まる 届けられる人数で決まる
休んだとき 収入が止まる 作ったものは届け続けられる
相手に渡すもの 完成品 自分でできるようになる力

知識そのものは同じでも、「やってあげる」か「やり方を教える」かで、収入の形がまったく変わります。 一番儲かるのは実務をこなす人より、そのやり方を教える人だ、という話を聞いたことがあるかもしれません。これは教える人が偉いからではなく、同じ知識を届けられる人数の上限が違うからです。時給を上げる努力に限界がある理由は、時給を上げるための努力をやめる話でも書いています。

学ぶ人は「その先の見返り」にお金を払う

教える商品を作る前に、学ぶ人が何にお金を払っているのかを確かめておきます。

人がお金を使う先は、大きく2つに分かれます。一つは、楽しんで終わる「消費」。もう一つは、あとで何かが返ってくる「投資」です。本や娯楽のように楽しんで終わるものは、価格が低くなりがちです。一方で、仕事の腕が上がる、収入が増える、時間が浮くといった見返りがあるものには、人はまとまったお金を払います。

フリーランスが実務で身につけた知識の多くは、学ぶ人にとって「投資」にあたります。たとえば、ウェブ制作の手順を学べば、自分で作れるようになったり、制作の仕事を始められたりします。経理の手順を学べば、毎月の作業が早くなり、税理士に払う額を見直せるかもしれません。

ここで大事なのは、教える商品は「情報を渡すもの」ではなく「その先の見返りまで届けるもの」だということです。情報だけなら、本や検索でも手に入ります。教える商品が本より高い価格で選ばれるのは、質問に答えてもらえる、自分の作ったものを見てもらえる、途中でつまずいたときに手助けがある、といった「成果まで伴走する仕組み」があるからです。

教える側に回る5つの手順

では、どうやって教える商品を作るのか。私は次の5つの手順で考えます。

  1. 自分がたどってきた道を書き出す
  2. 教えるテーマが「商品になる形」かを見極める
  3. 教える相手を絞る
  4. 情報ではなく、成果まで伴走する形にする
  5. 小さく売ってみてから、形を整える

手順1:自分がたどってきた道を書き出す

最初にやるのは、あなたが実務を身につけるまでにたどった道を書き出すことです。どこでつまずいたか、何を知って楽になったか、最初の依頼をどう取ったか。

実務を続けてきたあなたは、学ぶ人がどこで悩むかを、自分の体験として知っています。そして、教えるための知識を改めて勉強し直す必要もありません。もう身につけているからです。これは、ゼロから新しい商売を始めるのと比べて、大きな強みです。経験を棚卸しする考え方は、経験と知識を商品の材料に変える棚卸しで詳しく書いています。

手順2:教えるテーマが「商品になる形」かを見極める

書き出したテーマが、すべて教える商品に向いているわけではありません。次の3つに当てはまるものは、個人が教える商品にするには向いていません。

向いていないテーマ 理由
お金を払えば誰でも手に入る資格や認定そのもの 教える人の違いが出にくい。教えるのに別の許可が要ることもある
成果が出るまでに何年もかかるもの 学んだ人の「できた」という声が集まりにくく、教える範囲も広すぎる
簡単すぎて、一人で調べれば済むもの お金を払って習う理由がない。次に学ぶことがないと一度きりで終わる

反対に向いているのは、「そこそこ難しく、適切に教えれば多くの人が数か月で成果を出せて、その先に次の段階があるもの」です。成果が出やすいテーマなら、学んだ人の声が集まり、それが次の人の申し込みの理由になります。次の段階があれば、入門の講座のあとに、実践の講座や個別のサポートを続けて用意できます。

手順3:教える相手を絞る

テーマが決まったら、教える相手を絞ります。フリーランスが教える商品を作るとき、つい「誰でも学べます」と広く構えてしまいがちです。ところが、大きな教室や通信講座と同じように「誰でも」を相手にすると、知名度や価格で比べられてしまいます。

個人が選ばれるのは、「これは自分のための講座だ」と相手が感じたときです。「本業の合間に副業でウェブ制作を始めたい人専用」「一人で経理を回している小さな会社の事務担当の方へ」のように、誰の、どの場面のための講座かをはっきりさせます。対象を絞ると、学ぶ人は自分のことだと感じやすくなり、比べられにくくなります。絞った方が、少人数でも申し込みが集まります。相手の決め方は、WHO設計の11項目と選び方で解説しています。

手順4:情報ではなく、成果まで伴走する形にする

4つ目は、商品の形です。前の章で書いたとおり、教える商品の価値は、情報の量ではなく、学んだ人が成果を出せるかどうかで決まります。

形を考えるときは、次の3つを組み合わせます。

  • 伝える部分:手順や考え方を、動画や資料で伝える。文字だけより、声や動画がある方が、学ぶ人は続けやすい
  • 手を動かす部分:学んだ人が自分でやってみる課題を用意する
  • 手助けの部分:質問への回答、課題の添削、進み具合の確認の場を用意する

伝える部分は一度作れば何度でも使えます。手助けの部分は、あなたの時間を使います。時間の切り売りから抜けるには、手助けの部分を「全員に無制限」ではなく、「回数や期間を決めて」用意することが大切です。

手順5:小さく売ってみてから、形を整える

最後の手順は、全部を作り込む前に、小さく売ってみることです。数人の相手に、少人数の講座や勉強会として教えてみる。どこで質問が出るか、どこでつまずくかを見てから、動画や資料の形に整えます。

最初から完成した講座を作ろうとすると、誰にも求められていない部分まで作り込んでしまいがちです。反応を見ながら作る方が、早く、ずれの少ない商品になります。

たとえば、ウェブ制作のフリーランスがいたとします

5つの手順を、例に当てはめてみます。個人のお店のホームページ制作を請け負っているフリーランスがいたとします。依頼は毎月あるものの、1件ごとに打ち合わせと制作で手いっぱいで、これ以上は受けられません。

このフリーランスは、自分がたどった道を書き出してみました。すると、依頼主から毎回同じ質問をされていることに気づきます。「作ったあと、自分で更新するにはどうすればいいか」です。

そこで、「ホームページを作ったあと、自分でお知らせやメニューを更新したいお店の方へ」という講座を考えました。テーマはそこそこ難しく、数回の練習で多くの人ができるようになり、その先に「集客のための発信」という次の段階もあります。まずは制作を依頼してくれたお客様数人に、少人数の勉強会として教えてみて、質問が多かったところを動画にまとめていきます。

こうすると、制作の依頼を続けながら、同じ知識をお客様以外の人にも届けられるようになります。制作の仕事の時間は変わらないまま、教える商品の分だけ、収入の形が変わり始めます。

実務はやめなくていい。順番を守る

最後に、よく聞かれることに答えておきます。「教える側に回るなら、実務はやめるべきですか」。私の答えは、「今すぐやめる必要はない」です。

実務は、あなたの教える内容の裏付けです。現場で起きていることを知っているから、学ぶ人がつまずく場所が分かります。教える商品の売上が育つまでの間、実務の収入があなたを支えてくれます。

順番は、実務を続けながら小さく教え、教える商品が売れる形になったら、実務の量を少しずつ減らす、です。私自身、コンサルを始めて1年未満で月収100万円になりました。教える仕事は、一度に全部を切り替えなくても、この順番を守れば少しずつ形になっていきます。

まとめ

  • 実務を請け負う形は、収入の上限が働ける時間で決まる。教える形は、届けられる人数で決まる
  • 学ぶ人は情報ではなく、その先の見返りにお金を払う。教える商品は成果まで伴走する形にする
  • 自分のたどった道を書き出し、「誰でも手に入る」「成果まで長すぎる」「簡単すぎる」テーマは避ける
  • 教える相手を絞り、伝える・手を動かす・手助けの3つを組み合わせる。手助けは回数や期間を決める
  • 全部を作り込む前に小さく売ってみる。実務はすぐにやめず、教える商品が育ってから減らす

まずは、あなたが実務で依頼主から毎回聞かれる質問を、思い出せるだけ書き出してみてください。一番多い質問が、あなたの最初の教える商品のテーマの候補です。