原稿がようやく書き上がった。あとは表紙をつけて出すだけ。そう思って、手元のソフトで表紙を作り始める方は多いです。
ところが、自分で作った表紙は、なぜか「手作り感」が出てしまいます。文字の大きさがちぐはぐだったり、写真がぼやけていたり。本人は気づきにくいのですが、読者は一目で気づきます。
結論から言うと、Kindle本の表紙は外注が基本です。そして、外注で失敗しないために、あなたがやるべき準備があります。中身の図や書式も同じで、少しの決まりを守るだけで「ちゃんとした本」に見えるようになります。
この記事では、表紙を頼む前に用意する材料、見本の見せ方、図や画像の権利の守り方、読みやすい書式の整え方を順番にお伝えします。
読者は、中身を読む前に「見た目」で判断しています
Amazonで本を探すとき、最初に目に入るのは表紙です。題名を読むより先に、表紙の雰囲気で「読む価値がありそうか」を一瞬で判断しています。
ここで素人っぽい表紙が並んでいると、読者は「中身もきっとそれなりだろう」と考えます。どれだけ良い原稿でも、開いてもらえなければ読まれません。表紙は、本の中身を読んでもらうための入口なのです。
反対に、表紙がきちんとしていると、読者は安心して説明文を読み、試し読みに進んでくれます。表紙で本の価値が決まるわけではありませんが、表紙で「読まれるかどうか」は大きく変わります。
これは中身の見た目も同じです。文字がぎっしり詰まったページ、章の区切りが分からない構成は、読み進める気力を奪います。せっかく開いてもらえても、途中で閉じられてしまいます。
だからこそ、原稿を書き終えたあとの「見た目の仕上げ」は、おまけの作業ではありません。売れる本にするための、最後の大事な工程です。
表紙は「自分で作らず、頼む」が基本です
デザインの仕事をしている人でなければ、表紙は自分で作らないほうがいいです。理由はシンプルで、表紙のデザインには、文字の組み方、色の組み合わせ、小さく表示されたときの見え方など、専門の知識が詰まっているからです。
「無料のデザインソフトを使えば作れるのでは」と思うかもしれません。たしかに作ることはできます。ただ、作れることと、売れる表紙になることは別の話です。
私がいつもお伝えしているのは、「自分にしかできない仕事に時間を使う」という考え方です。表紙を何日も悩んで作る時間があれば、次の本の企画を考えたり、本業のお客様に向き合ったりしたほうが、ずっと成果につながります。
外注の考え方そのものは、ビジネスを加速させる「外注」という武器でも詳しく書いています。全部を自分で抱えないことは、仕組み化の第一歩です。
ただし、外注は「丸投げ」とは違います。頼む側が準備をしないと、どれだけ腕の良いデザイナーでも、期待に近い表紙は作れません。次の章で、その準備を見ていきましょう。
頼む前に、自分で用意する4つの材料
デザイナーは見た目を整える専門家ですが、表紙に載せる言葉を考える専門家ではありません。表紙に載せる言葉は、あなたが決めて渡します。
用意するのは、次の4つです。
| 材料 | 中身 | 決めるときのポイント |
|---|---|---|
| 題名 | 本のメインの名前 | 検索で使われる言葉を入れた、最終版を渡す |
| 副題 | 題名を補う説明 | 誰の、どんな悩みを解決する本かが分かるように |
| 著者名 | 本名かビジネスで使う名前 | 本業につなげたいなら、普段の活動名にそろえる |
| 短いアピール文 | 表紙の余白に入れる一言 | 「事例つき」「はじめての人向け」など、短く具体的に |
題名は、表紙を頼む前に必ず確定させてください。題名の長さで文字の配置が大きく変わるので、あとから変えるとデザインを作り直すことになります。
題名と副題の決め方は、Kindle本の題名と説明文の作り方で解説しています。表紙の依頼は、題名が決まってからにしましょう。
たとえば、整理収納のアドバイザーをしている人が、片づけの本を出すとします。題名に「片づけ」「リバウンド」といった読者が使う言葉を入れ、副題で「忙しい共働き家庭でも続く」と対象を絞る。アピール文には「間取り別の実例つき」と入れる。ここまで決めて渡せば、デザイナーは迷わず作業に入れます。
見本を3〜5冊集めて、「ここが好き」を言葉にする
材料がそろったら、次は見本集めです。デザイナーに「おまかせします」と伝えるのは、一番ずれやすい頼み方です。あなたの頭の中のイメージと、デザイナーのイメージは、言葉だけではまず一致しません。
そこで、Amazonで同じ分野の本を検索し、売れている本やデザインが好きな本の表紙を3〜5冊選びます。画像のリンクを保存しておき、依頼のときに一緒に渡します。
大事なのは、「この本が好き」で終わらせず、どこが好きなのかを分けて伝えることです。
- 1冊目は、題名の文字の太さと大きさを参考にしたい
- 2冊目は、背景の色の使い方が理想に近い
- 3冊目は、人物写真の置き方をまねしたい
このように部分ごとに伝えると、デザイナーはあなたの好みを正確につかめます。同じ分野の本を見るのは、読者がその分野の本に期待する「雰囲気」をつかむためでもあります。ビジネス書なのに絵本のような表紙では、読者は違和感を覚えてしまいます。
これは、私がよくお伝えしている「オリジナルで頑張るな、パクって超えろ」と同じ考え方です。丸写しをするのではなく、売れている型を参考にして、自分の本に合う形に仕上げてもらうのです。
依頼先の選び方と、頼むときの注意点
依頼先は、クラウドソーシングのサービスで探すのが手軽です。探し方は、大きく分けて2つあります。
- こちらから選んで頼む形:過去の作品を見て、気に入ったデザイナーに直接相談する
- 案を募る形(コンペ形式):依頼内容を公開し、集まった複数の案から選ぶ
はじめての方には、案を募る形が向いています。いくつもの案を並べて比べられるので、自分の好みがはっきりしますし、デザイナーを一人ずつ探す手間も省けます。
頼むときは、次の点も伝えておくと安心です。
- スマホの小さな画面でも、題名が読めるデザインにしてほしい
- 細かい飾りや小さな文字は入れすぎないでほしい
- 紙の本(ペーパーバック)も出す予定があるなら、背表紙や裏表紙の分も見積もってほしい
Amazonの一覧では、表紙はかなり小さく表示されます。パソコンの大きな画面で見て「きれい」でも、スマホで見ると題名がつぶれてしまうことがあります。納品された表紙は、必ずスマホでも小さく表示して確かめてください。
表紙画像の推奨サイズやファイル形式は、変わることがあります。KDPのヘルプで最新の条件を確かめ、その条件をそのままデザイナーに伝えましょう。
気の合うデザイナーが見つかったら、次の本や、ほかの制作物でも続けて頼める関係を作っておくと、2冊目からぐっと楽になります。
本文の図や画像は「使ってよい素材」だけを使う
表紙が整ったら、次は本文です。文字だけが何ページも続くと、読者は疲れてしまいます。図や画像を入れると、内容が伝わりやすくなり、途中で読むのをやめられにくくなります。
画像を入れる場所の目安は、次の3つです。
- 文字より絵のほうが早く伝わる場所:手順の流れ、比べる表、画面の見え方など
- 説明が長く続いて、読者が疲れそうな場所:本文と関係のある図で、ひと息つける区切りを作る
- 著者を知ってもらう場所:まえがきや著者紹介に、あなたの顔写真を入れる
ここで一番気をつけたいのが、画像の権利です。インターネットで見つけた画像を、勝手に本に使ってはいけません。検索結果に出てくる画像の多くには、持ち主がいます。あとから使用料を求められることもありますし、何より、著者としての信頼を失います。
使ってよいのは、次のような素材です。
- 自分で撮った写真、自分で作った図
- 商用利用が認められている素材サイトの画像(利用条件を必ず読む)
- お金を払って使用の許可を得た画像
素材サイトの画像でも、「本への掲載は可」「表紙への使用は不可」のように、条件が細かく決まっていることがあります。使う前に条件を確かめ、どこから持ってきた画像かを記録しておきましょう。AIで作った画像を使う場合も同じで、使っているサービスの規約を確かめてください。AIを使うときの注意点は、生成AI利用の守るべき注意点にまとめています。
もう一つ、Kindleの専用端末では白黒で表示されることがあります。色の違いだけで意味を伝える図は、白黒になると読めなくなります。線の太さや文字のラベルで区別できる、シンプルな図にしておくと安心です。
読みやすい書式は、4つの基本で決まります
最後は書式です。地味な作業に見えますが、読者が最後まで読み通せるかどうかを左右します。押さえるのは、次の4つです。
| 基本 | やること |
|---|---|
| 見出し | 章・節・小見出しの階層をそろえ、本文より大きく太くする |
| 改ページ | 章が変わるところでは、必ず新しいページから始める |
| 余白 | 段落と段落の間を少し空け、文字を詰めすぎない |
| 行間 | 行と行の間をやや広めにとり、目がすべらないようにする |
見出しは、文書作成ソフトの「見出し」の機能を使って設定しておくと、あとで目次を作るときにそのまま使えます。文字の色は黒を基本にし、色を使うのはどうしても強調したい場所だけにします。書体も、飾りのない読みやすいものを選びましょう。
本編のほかに、本らしく見せるためのページもそろえておきます。
- 題名と著者名だけのページ
- 著作権の表示と、免責事項のページ
- まえがき
- 目次
- あとがきと著者紹介
これらがあるだけで、読者が感じる「きちんと作られた本だ」という印象が変わります。あとがきには、本を読み終えた人に向けた次の一歩の案内を置くこともできます。この案内の作り方は、シリーズの最後の記事で扱います。
Kindleの形式に変換する作業を外注する場合は、改ページの位置や見出しの階層を、変換を頼む人とあらかじめすり合わせておくと、やり直しが減ります。変換と出版の手順は、Kindle形式への変換からKDP登録までの手順で解説しています。
まとめ
- 読者は中身を読む前に、表紙と見た目で「読む価値があるか」を判断している
- 表紙は外注が基本。ただし、題名・副題・著者名・短いアピール文は自分で決めて渡す
- 同じ分野の売れている本の表紙を3〜5冊集め、「どこが好きか」を部分ごとに伝える
- 本文の画像は、自分で作ったものか、利用条件を確かめた素材だけを使う
- 見出し・改ページ・余白・行間の4つをそろえるだけで、読みやすさは大きく変わる
まずは、表紙に載せる4つの材料を1枚のメモに書き出し、同じ分野の本の表紙を3冊選ぶところから始めてみてください。


