「ペルソナを決めましょう」と言われて、年齢、性別、職業、家族構成を埋めた。名前まで付けた。それなのに、発信の中身はあまり変わらず、見込み客の登録も増えない。こういう経験をした方は多いのではないでしょうか。
ペルソナづくりが空回りするのは、やり方が雑だからではありません。項目を埋めたところで止まってしまい、「では、その人にどこで、何を届けるのか」まで落とし込んでいないからです。
結論から言うと、ペルソナは「その人が今、どうやって自分の悩みを解決しようとしているか」まで書いてはじめて役に立ちます。そこが分かれば、発信する場所も、届ける言葉も、用意する商品の形も、ほとんど自動的に決まっていきます。
この記事では、なぜ先にお客様を決める必要があるのか、ひとりに絞る理由、ペルソナの材料の集め方、打ち手まで落とし込む5つの手順、そして作ったあとの育て方を解説します。
お客様が決まらないと、届ける価値が決まらない
まず、なぜ発信や集客の工夫より先に、お客様を決める必要があるのか。理由はシンプルで、誰に届けるかが決まらないと、何を届ければいいかが決まらないからです。
知識や経験を売る仕事の価値は、「お客様の悩みをどれだけ解決できたか」で決まります。ところが、お客様がぼんやりしていると、悩みもぼんやりします。すると、発信は「売上を上げたい方へ」「人生を良くしたい方へ」のような、誰にでも当てはまる言葉になっていきます。
誰にでも当てはまる言葉は、誰の心にも引っかかりません。読んだ人が「これは自分のことだ」と感じないからです。
もう一つの問題は、同じテーマの中にも、正反対の悩みを持つ人が混ざっていることです。たとえば「話し方」を教える講師がいたとします。人前で緊張して声が出ない人と、話しすぎて要点が伝わらない人では、必要な助言がまったく違います。この二人をまとめて「話し方に悩む人」と見ていると、片方には的外れな言葉を送ってしまいます。緊張する人に「もっと短くまとめましょう」と言っても、響かないですよね。
お客様を決めるというのは、この取り違えをなくすことでもあります。
ペルソナは「ひとり」に絞るほど、発信が楽になる
「ひとりに絞ると、他の人を取りこぼしてしまうのでは」という不安はよく聞きます。ただ、実際は逆のことが起きます。
ひとりに向けて書いた言葉は、具体的になります。その人の一日の流れ、よく口にする不満、夜に考え込んでいることまで思い浮かべて書くからです。具体的な言葉は、そのひとりだけでなく、似た状況にいる人にも「自分のことだ」と届きます。
もう一つ、ひとりに絞ると、書き手の側が楽になります。「今日は何を書こう」と悩む時間が減ります。 「あの人が今つまずいている、あの悩みについて書こう」と決められるからです。発信のネタに困っている方ほど、相手をひとりに絞ってみてください。
少人数でも売上は作れる、という私の考え方も、この延長線上にあります。大勢に薄く届けるより、ひとりに深く届く言葉を書く方が、申し込みにつながります。人数が少なくても売上を作る考え方は、集客3名でも売上は作れる理由で詳しく書いています。
ペルソナの材料は、机の上ではなく外にある
では、そのひとりをどうやって描けばいいのか。方法は大きく2つあります。
| 状況 | 作り方 | ポイント |
|---|---|---|
| すでにお客様がいる | 「この人のためなら頑張れる」と思えるお客様を数人選び、共通点をまとめる | 実在する人がもとなので、言葉や悩みがリアルになる |
| まだお客様がいない | 何年か前の自分、または身近で困っている人をもとに描く | 当時の悩み、使っていた言葉、知識の量を思い出す |
おすすめなのは、何年か前の自分をもとにする方法です。今のあなたは、過去に抱えていた悩みを、試行錯誤して乗り越えてきたはずです。その頃の自分が何に困り、どんな言葉で検索し、何を知らなかったのか。これは、あなたが誰よりもよく知っています。
私自身、独立したばかりのころは、何を発信すればいいか分からないままブログやSNSを続け、無料相談をしても成約しませんでした。当時一番欲しかったのは、「これをこの順番でやればいい」という手順です。この頃の自分は、今でも私の大事なペルソナの一人です。
ただし、頭の中だけで描いたペルソナは、どうしても書き手の都合に寄ります。材料は、できるだけ外から集めてください。
- 直接話を聞く:お客様や、お客様に近い人に「今、何に一番困っていますか」と聞く。本人の口から出た一言は、どんな想像よりも強い
- 質問が集まる場所を見る:同じテーマの質問サイトやコミュニティで、どんな言葉で質問が書かれているかを見る
- 口コミの不満を読む:同じテーマの本や講座の口コミで、「ここが物足りなかった」という声を拾う
- アンケートを取る:すでに読者やお客様がいるなら、短い質問をいくつか送る
特に大事なのは、悩みの「言葉づかい」をそのまま控えておくことです。書き手が使う言葉と、お客様が使う言葉はずれていることが多いからです。言葉の言い換え方は、見込み客が普段使う言葉に言い換える方法で解説しています。
ペルソナを打ち手まで落とし込む5つの手順
材料が集まったら、次の5つの順番でまとめていきます。
- 望んでいることを書く:その人が手に入れたい状態は何か
- 悩んでいることを書く:日々、頭を抱えている問題は何か
- 痛んでいることを書く:悩みより深く、我慢の限界に近いことは何か
- 基本の情報を書く:年齢、仕事、家族、一日の時間の使い方
- 今の解決の仕方を書く:その人は今、どこで、どうやってこの悩みを解決しようとしているか
1〜4は、よく見るペルソナの項目です。特に3の「痛み」は丁寧に書いてください。人は「もっと良くなりたい」より、「もうこの状態は嫌だ」という気持ちの方が、はるかに強く動きます。発信の最初の一文は、この痛みから書くと届きやすくなります。
そして、一番大事なのが5つ目です。ここが分かると、あなたが何をすればいいかが決まります。
| その人の今の解決の仕方 | あなたの打ち手 |
|---|---|
| 検索して記事を読んでいる | 悩みの言葉で検索される記事を書く |
| 動画で学ぼうとしている | 同じ悩みに答える動画を出す |
| 本を買って読んでいる | 本の内容の「その先」を扱う資料や講座を用意する |
| 他の講座やセミナーに参加している | その主催者と組む、または講座の後に困ることを扱う |
| 身近な人に相談している | 紹介が生まれやすい関係を作る |
「どこで発信すればいいか分からない」という悩みは、ほとんどの場合、この5つ目が空欄のまま起きています。発信の場所は、あなたが得意な場所ではなく、お客様が今いる場所で選ぶ。これが基本です。
たとえば、整理収納を教える人がいたとします
例で考えてみます。自宅の片付けを教える講師がいたとします。最初のペルソナは「片付けが苦手な30代の女性」でした。これだけでは、発信の中身も場所も決まりません。
そこで5つの手順で書き直します。望んでいるのは、家族が帰ってくる前に部屋が整っている状態。悩みは、片付けてもすぐに散らかること。痛みは、急な来客のたびに慌てて物を押し入れに詰め込み、自分が嫌になること。平日は仕事で、夜しか時間がありません。
そして今の解決の仕方を聞いてみると、寝る前に短い動画を見て、収納用品を買い足していることが分かりました。ここまで分かれば、打ち手は見えてきます。寝る前に見られる短い動画で、「収納用品を買う前にやること」を伝える。入口の特典は、夜の短い時間でできる片付けの手順表にする。ペルソナが、そのまま発信と商品の設計図になるわけです。
反対に、この人が休日に地域の講座へ足を運んで学んでいると分かったなら、打ち手は変わります。動画を増やすより、地域の講座を開く人と組んだり、講座の後に家で続けるための教材を用意したりする方が、ずっと早く届きます。同じペルソナでも、「今の解決の仕方」が違えば、やることはまったく変わるのです。
ペルソナは作って終わりではなく、試して育てる
最後に、ペルソナを作ったあとの考え方です。
まず、作ったペルソナは、あくまで「仮の答え」です。本当にその悩みを持つ人がいて、お金を払ってでも解決したいと思っているかは、まだ分かりません。確かめる方法は一つで、そのペルソナに向けて発信し、商品を案内してみることです。
申し込みがあれば、そのペルソナは実在したということです。反応がなければ、ペルソナの悩みがずれていたか、届け方がずれていたかのどちらかです。どちらなのかは、反応の数字を順番に見ると分かります。振り返り方は、申込から成約までの9つの数字の見方で解説しています。
次に、ペルソナは更新し続けるものです。実際にお客様と話し、申し込みが入るたびに、最初は見えていなかった特徴が分かってきます。
- 申し込んだ人に共通していた、仕事や生活の状況
- 申し込みの決め手になった一言
- 思っていなかった層からの反応
こうした発見を、その都度ペルソナに書き足していきます。特に、狙っていなかった人から申し込みが来たときは、見逃さないでください。あなたの商品が本当に役に立つ相手を、市場が教えてくれているサインです。
ペルソナ作りでよくある3つの失敗
- 項目を埋めて満足する:年齢や職業を細かく決めても、「今の解決の仕方」が空欄なら打ち手は決まらない
- 理想を詰め込みすぎる:お金も時間もあって、素直で、すぐ行動する人は、ほとんどいない。実在する人の姿から離れない
- 一度決めたら変えない:市場の反応を見ても直さないと、ずれたペルソナに向けて発信し続けることになる
まとめ
- お客様が決まらないと、届ける価値も言葉も決まらない。発信の工夫より先に、誰に届けるかを決める
- ペルソナはひとりに絞るほど、言葉が具体的になり、書き手も楽になる
- 材料は外にある。実在のお客様、何年か前の自分、質問や口コミに出てくる言葉から集める
- 望み・悩み・痛み・基本情報に加えて、「今どうやって解決しようとしているか」まで書くと、発信の場所と打ち手が決まる
- ペルソナは仮の答え。発信して反応を見て、気づいたことを書き足して育てる
まずは、あなたのペルソナに「その人は今、どこで、どうやってこの悩みを解決しようとしているか」を一行書き足してみてください。書けなければ、身近な人に一人だけ聞いてみる。それが、発信の場所を決める最初の一歩になります。


