今月は大きな契約が決まって、しっかり売上が立った。それ自体は、とても嬉しいことです。ただ、来月のことを考えると、次の申し込みのあてがない。売上が入った月ほど、かえって不安になる。講師やコーチ、フリーランスの方から、こういう話をよく聞きます。
この不安は、気持ちの問題ではありません。売上の立ち方の問題です。毎月、ゼロから新しいお客様を探して売上を作っているので、今月がどれだけ良くても、来月はまた同じところから始まる。これでは、不安が消えないのは当然です。
結論から言うと、見るべきなのは今月の売上の額ではなく、「見込み客が毎月、積み上がっているかどうか」です。見込み客が少しずつでも増え続け、その人たちとの関係が自動で深まっていく仕組みがあれば、来月の売上のあてが見えるようになります。
この記事では、売上があっても不安が消えない理由、目指す仕組みの形、仕組みが作れない2つの理由とその外し方、そして単発の売上から移るための4つの手順を解説します。
売上があっても不安が消えない理由
まず、なぜ売上が立っても不安が残るのかを整理します。
多くの個人事業は、次のような流れで売上を作っています。知り合いから紹介をもらう。発信を見た人から問い合わせが来る。個別に話をして、契約になる。一件一件はきちんと成果になっています。
問題は、この流れが毎回そこで終わってしまうことです。契約にならなかった人との関係は、そこで途切れます。発信を見て「いいな」と思ったけれど、まだ申し込むほどではなかった人は、どこにも記録されずに通り過ぎていきます。
つまり、毎月の売上は立っていても、次のお客様になりうる人が手元にたまっていかないのです。売上の額がどれだけ大きくても、見込み客が増えていなければ、その売上を使い切ったあと、次のあてはありません。
会社員であれば、来月の給料はある程度見通せます。個人で仕事をする場合、その見通しは自分で作るしかありません。来月の見通しを作るのは、今月の売上ではなく、手元にいる見込み客の数と、その人たちとの関係です。
目指すのは「見込み客が少しずつ積み上がる形」
では、どんな形を目指せばいいのか。私は、次の3つがそろった状態を目指すようにお伝えしています。
- 入口がある:発信を見た人が、無料の特典などを受け取るために、連絡先を残してくれる
- 関係が自動で深まる:連絡先を残した人に、役に立つ話や考え方が、決まった順番で自動で届く
- 案内の場がある:関係が深まった人に、講座や個別相談を案内する機会が定期的にある
大事なのは、見込み客が一度にたくさん集まることではありません。毎日、毎週、少しずつでいいので、入口から人が入り続けることです。入った人が自動で関係を深めていく流れがあれば、見込み客は月をまたいで積み上がっていきます。
積み上がった見込み客がいると、売上の作り方が変わります。毎回ゼロからお客様を探すのではなく、すでにあなたを知っている人に案内すればよくなるからです。関係ができている人への案内は、初めて会う人への売り込みとはまったく違います。売り込まなくても、必要な人が自分から手を挙げてくれます。
この形の全体像は、フルオートマーケティング構築の5ステップでも解説しています。
仕組みが作れない理由は、2つしかない
「その仕組みが大事なのは分かっている。でも、作れていない」という方がほとんどだと思います。作れていない理由は、突き詰めると次の2つのどちらかです。
| 作れない理由 | よくある状態 | 外し方 |
|---|---|---|
| やり方を知らない | 何から手をつければいいか分からず、調べるだけで止まっている | 全体の順番を先に知り、最初の一歩だけを決める |
| 時間がない | 毎日の発信や目の前の仕事で手一杯になっている | 新しい時間を作るのではなく、やめることを決める |
多いのは、2つ目の「時間がない」です。そして、この問題は時間を増やす工夫では解決しません。一日は誰にとっても同じ長さで、睡眠を削るようなやり方は続かないからです。
解決する方法は一つで、今やっていることの中から、やめることを決めることです。毎日の投稿、毎週の新しい記事、頼まれるままに受けている無料の相談。こうした「今日の作業」の一部をいったん止めて、その時間を「一度作れば残り続ける仕組み」に回します。
逆説的ですが、何かをやめないと、仕組みを作る時間は生まれません。何をやめるか迷ったら、次の2つの問いで見分けてください。
- その作業は、終わったあとに何か残るか:その場で消えていく投稿や対応なのか、一度作れば次からも使えるものなのか
- その作業は、見込み客を増やしているか:今いる人に向けた作業なのか、新しい人が入ってくる入口を作る作業なのか
どちらの問いにも「いいえ」となる作業は、しばらく止めても大きな影響はありません。止めた分の時間を、入口や自動のメッセージづくりに回します。少ない時間で成果を大きくする考え方は、エッセンシャル思考でも書いています。
私も独立したばかりのころは、何を発信すればいいか分からないまま、ブログもSNSも続けていました。毎日作業はしているのに、次のお客様につながる流れが何もない。当時一番欲しかったのは、「これをこの順番でやればいい」という手順でした。やることを増やすより先に、順番を知ることが必要だったのです。
単発の売上から移る4つの手順
では、実際にどう移っていけばいいのか。次の4つの順番で進めます。
- 今ある発信の中から、入口にする場所を選ぶ
- 入口に、無料で受け取れる特典を1つ置く
- 受け取った人に届く、自動のメッセージを数通用意する
- 積み上がった見込み客に、定期的に案内する場を作る
1つ目で大事なのは、新しい発信の場所を増やさないことです。新しい媒体や新しい手法は、次々に話題になります。そのたびに飛びついていると、どれも入口として育つ前に次へ移ることになります。すでに読まれている記事、すでに見てくれている人がいる場所。そこを入口にする方が、ずっと早く結果が出ます。
2つ目の特典は、豪華なものでなくて構いません。入口にした発信を見た人が「続きがほしい」と思うものを、小さく作ります。
3つ目の自動のメッセージは、特典を受け取った人に、あなたの考え方や、つまずきやすい点の乗り越え方を届けるものです。最初は数通で十分です。ここで大事なのは、売り込むことではなく、「この人の話は役に立つ」と感じてもらうことです。
4つ目の案内の場は、積み上がった見込み客に、講座や個別相談を案内する機会です。私の場合は、それがチャレンジ企画です。3日間、参加者に手を動かしてもらい、その先に進みたい人だけに個別相談を案内する。先に開催日を決めてしまえば、そこに向けて入口や自動のメッセージを整える理由ができます。日程から決める進め方は、先に日程を決めるチャレンジ企画の実践スケジュールで解説しています。
たとえば、単発の依頼で食べているコーチがいたとします
例で考えてみます。紹介で個別のコーチングを受けているコーチがいたとします。月によっては大きな売上が立ちますが、紹介が途切れた月はほとんど収入がありません。発信もしていますが、読んだ人とのつながりは何も残っていませんでした。
このコーチは、新しい発信を増やすのをやめ、よく読まれている過去の記事を入口にすることにしました。その記事の続きになる、自分の考えを整理する書き込み表を特典にし、受け取った人に数日おきに届くメッセージを用意しました。そして、季節ごとに少人数の体験会を開き、積み上がった見込み客に案内する形にしました。
紹介の依頼は、これまでどおり受けます。変わったのは、紹介がない月にも、体験会で案内できる見込み客が手元にいることです。
もう一つ変わったのは、体験会に来た人がどんな悩みを持っているかが、事前に分かるようになったことです。自動のメッセージに返信してくれる人がいて、その言葉から、次の発信のテーマも見えてきます。見込み客が積み上がると、売上の見通しだけでなく、次に何を書けばいいかの材料もたまっていくのです。
見るべき数字を、売上から見込み客に変える
最後に、毎月振り返る数字の話です。
仕組みに移ろうとしても、毎月見ている数字が売上だけだと、どうしても目の前の売上を作る作業に戻ってしまいます。そこで、売上と並べて、次の数字も毎月見るようにします。
- 今月、新しく入口から入ってくれた見込み客の数
- 自動のメッセージを読んでくれている人の数
- 案内の場に参加してくれた人の数
特に1つ目は、仕組みが動いているかどうかをそのまま表します。売上が少ない月でも、この数字が伸びていれば、来月以降の見通しは明るくなっています。反対に、売上が大きい月でも、この数字がゼロなら、それは単発の売上です。
この数字は、最初は小さくて当然です。月に数人でも構いません。大事なのは、ゼロではない月が続くことです。入口が一つ動き始めたら、次によく読まれている発信にも同じ入口を足していく。入口が増えるほど、毎月入ってくる人の数も少しずつ増えていきます。一度に大きく増やそうとせず、止まらない流れを作ることを優先してください。
2つ目の、読んでくれている人の数も大事です。見込み客の数が増えても、誰も読んでいなければ関係は深まりません。数の測り方は、本当に読まれているかを測るアクティブ読者率で解説しています。
まとめ
- 売上があっても不安が消えないのは、見込み客が積み上がっていないから。毎月ゼロから始めているのが原因
- 目指すのは、入口・自動で深まる関係・案内の場の3つがそろい、見込み客が少しずつ積み上がる形
- 仕組みが作れない理由は「やり方を知らない」か「時間がない」。時間がないなら、やめることを決める
- 新しい媒体を増やさず、今ある発信を入口にし、特典・自動のメッセージ・案内の場の順に整える
- 毎月の振り返りで、売上と並べて「新しく入ってくれた見込み客の数」を見る
まずは、先月1か月で、新しくあなたに連絡先を残してくれた人が何人いたかを数えてみてください。その数が、あなたの来月の見通しをいちばん正直に表しています。


