自分の知識を講座にするとき、多くの方は中身づくりに時間をかけます。何を教えるか、どの順番で教えるか。そこは丁寧に考えるのに、「どんな形で届けるか」「どうやって渡すか」は後回しになりがちです。撮りやすいから動画にする。作ったファイルは、保存サービスの共有リンクをメールで送る。そんな形で始める方は多いですよね。
ところが、ここで2つの問題が起きます。1つは、形式が中身に合っておらず、受講者が途中で止まってしまうこと。もう1つは、渡し方が甘く、お金を払っていない人にまで講座が広がってしまうことです。どちらも、講座の中身がどれだけ良くても防げません。
結論から言うと、形式は「受講者に何をしてほしいか」で選び、渡し方は「購入者だけが見られるか」で決めます。この2つを最初に決めておくだけで、受講者は学びやすくなり、買ってくれた人に対しても誠実な講座になります。
この記事では、文字・音声・動画それぞれの得意なこと、形式を決める3つの問い、共有リンクで渡すときの落とし穴、そして購入者だけに届ける4つの守り方を解説します。
形式を「作りやすさ」で選ぶと、受講者が止まる
講座の形式を、作る側の都合で決めてしまうことはよくあります。話すのが得意だから動画、書くのが得意だから文字、という選び方です。
もちろん、続けて作れることは大切です。ただ、それだけで選ぶと、受講者の学び方と合わないことがあります。たとえば、じっくり考えて書き出してほしい内容を動画だけで渡すと、受講者は「見て分かった気になる」だけで終わります。反対に、手の動きを真似してほしい内容を文字だけで渡すと、読んでも再現できません。
受講者が途中で止まる原因は、やる気よりも、形式と中身の組み合わせにあることが少なくありません。形式は、中身を届けるための道具です。道具は、使う人がそれで何をするかで選びます。
文字・音声・動画、それぞれの得意なこと
まず、3つの形式の特徴を並べてみます。
| 形式 | 得意なこと | 受講者の使い方 | 苦手なこと |
|---|---|---|---|
| 文字 | 深く考えてもらう。書き込むワークを渡す | 手元で読み返し、線を引き、書き込む | 手の動きや画面の操作を見せること |
| 音声 | 声で人柄を伝え、親しみを持ってもらう | 移動中や家事の合間に聞く | 図や手順を正確に伝えること |
| 動画 | 最も多くの情報を、目と耳の両方で伝える | 画面を見ながら手順を真似る | 見るだけで終わりやすく、読み返しにくい |
文字は、昔からある形式ですが、今でも強い形式です。自分の頭で考え、書き出してもらう内容に向いています。顔を出したり声を録ったりすることに抵抗がある方でも作りやすいのも利点です。
音声は、あなたの声そのものが届くので、文章だけでは伝わらない人柄や熱が伝わります。受講者が「ながら」で学べるため、忙しい人向けの講座と相性がいい形式です。
動画は、手順を実演したり、画面の操作を見せたりするのに向いています。情報量が多いぶん、長くなると最後まで見てもらえなくなります。動画の見てもらい方は、動画が途中で離脱される理由と7つの原則でも書いています。
形式を決める3つの問い
どの形式にするかは、次の3つの問いで決めます。
- 受講者に何をしてほしいか:考えて書き出すなら文字、覚えて身につけるなら音声、真似して手を動かすなら動画
- 受講者はいつ、どこで学ぶか:机に向かえる人なら文字や動画、すき間の時間で学ぶ人なら音声
- 自分が最後まで作り続けられるか:どれだけ良い形式でも、途中で作れなくなれば講座は完成しない
多くの場合、答えは1つの形式に絞られません。本編は動画で手順を見せ、ワークは文字で渡し、復習用に音声を付ける。このように、中身ごとに形式を組み合わせるのが現実的です。ワークの渡し方は、書きやすいワークシートと提出率を上げる7つの工夫でも紹介しています。
ただし、最初から全部そろえようとすると、作る量が何倍にもなります。まずは中心になる形式を1つ決め、受講者の反応を見ながら足していく順番にしてください。
「リンクを知っていれば見られる」渡し方の落とし穴
形式が決まったら、次は渡し方です。ここで一番多いのが、保存サービスの共有リンクや、動画の「限定公開」のリンクをそのまま送る渡し方です。手軽ですし、受講者も迷わず開けます。
ただ、この渡し方には落とし穴があります。こうしたリンクは、鍵をかけているわけではありません。「住所を公開していない」だけです。リンクを知っている人なら、誰でも中身を見られます。
購入者が悪気なく友人にリンクを転送する。どこかにまとめて保存したリンクが、ほかの人の目に触れる。場合によっては、検索で見つかる状態になることもあります。そうなると、お金を払ってくれた人と、払っていない人が、同じものを見ている状態になります。
いちばん困るのは、売上が減ることよりも、買ってくれた人に対して不公平になることです。正規に申し込んでくれた人が損をしない形で渡すのは、売る側の責任だと私は考えています。
購入者だけに届ける4つの守り方
では、どう渡せばいいのか。個人の講座なら、次の4つを組み合わせれば十分です。
守り方1:ファイルやページにパスワードをかける
文字の教材なら、ファイルそのものか、ファイルを入れたフォルダにパスワードをかけます。音声や文字をブログのページに載せるなら、そのページにパスワードをかけます。どれも特別な知識がなくてもできる方法です。
守り方2:再生できる場所を限れる動画の配信サービスを使う
動画は、誰でも使える無料の投稿サービスの「限定公開」ではなく、有料の講座を守る機能がある配信サービスを使うのが安心です。動画ごとにパスワードをかけたり、自分のサイトの中でしか再生できないように決めたりできるものを選びます。
守り方3:購入者専用のページにまとめる
教材の置き場所をばらばらに送るのではなく、購入者だけが入れるページを1つ作り、そこにまとめます。受講者は「ここを開けば全部ある」と分かり、あなたも中身を差し替えやすくなります。
守り方4:共有しないお願いを書き、ときどき確かめる
渡すときの案内に、「この講座は購入された方のためのものです。リンクやパスワードは共有しないでください」と一文添えます。多くの人は、知らなかっただけで、言われれば守ってくれます。あわせて、ときどき自分の講座名で検索して、外に出ていないかを確かめます。
守りを固めすぎて、受講者が見られなくなるのは本末転倒です。パスワードはできるだけ1つにまとめ、見方の案内を最初に渡しておきます。「守ること」と「迷わず学べること」は、両方そろえて初めて意味があります。
渡し方でやりがちな3つの失敗
- 教材ごとに別々のリンクを送る:受講者はメールを探し回ることになり、途中で見失います。置き場所は1つにまとめます
- パスワードを教材ごとに変える:守りは固くなりますが、受講者が覚えきれず、問い合わせが増えます。講座ごとに1つで十分です
- 受講期間の決まりを書いていない:いつまで見られるのかが分からないと、受講者は安心して学べません。見られる期間と、期間が過ぎたらどうなるかを、申し込みの前に書いておきます
渡すまでの流れも、先に決めておく
渡し方と一緒に決めておきたいのが、申し込みから受講開始までの流れです。
形のない講座なら、支払いのあとに表示されるページで案内を見せ、購入者専用の連絡先に登録してもらい、登録と同時に受講の場所を自動で届ける、という流れを作れます。こうしておくと、夜中に申し込みがあっても受講者を待たせません。そして、購入者だけに連絡できる場所が自然にできます。そこで、学び方の案内や次の講座の案内を届けられます。
一方で、本や道具など形のあるものを送る講座は、支払いの確認までは自動にできても、梱包と発送は手作業です。申し込みが増えるほど作業も増えるので、形のあるものを付けるかどうかは、自分の時間と相談して決めます。
少人数で始める段階なら、立派な会員サイトを作り込む必要はありません。何をそろえれば始められるかは、チャレンジ企画を開くために最低限そろえる7つの準備でもまとめています。
たとえば、パンづくりを教える人がいたとします
イメージしやすいように、例を出してみます。自宅でパンづくりを教えている人が、オンライン講座を始めるとします。
最初に考えたのは、レッスンを全部動画で撮り、限定公開のリンクをメールで送る形でした。手軽ですが、3つの問いで見直すと、足りないところが見えてきます。
- 受講者に何をしてほしいか:生地のこね方や成形は、手の動きを真似してほしい。ここは動画が合う。一方で、材料の分量や温度、焼き時間は、キッチンで何度も見返したい。これは文字のほうが使いやすい
- いつ学ぶか:作りながら見るので、スマホで開きやすく、止めやすい形がいい
- 作り続けられるか:毎回すべてを動画で撮り直すのは負担が大きい。分量表は文字にしておけば、直すのも簡単
そこで、手の動きは動画、分量と手順は文字の表にまとめることにしました。渡し方も、限定公開のリンクをやめ、再生できる場所を限れる配信サービスで動画を用意します。分量表と一緒に、パスワード付きの購入者専用ページに置くことにしました。
中身は同じでも、受講者は迷わず学べるようになり、買ってくれた人が損をしない講座になります。
まとめ
- 講座の形式は、作りやすさではなく「受講者に何をしてほしいか」で選ぶ
- 文字は考えて書き出す内容、音声は人柄と「ながら」の学び、動画は手順の実演に向いている
- 共有リンクや限定公開は、鍵ではなく「住所を公開していない」だけ。購入者以外に広がることがある
- パスワード、再生場所を限れる配信、購入者専用のページ、共有しないお願いの4つで守る
- 申し込みから受講開始までの流れも、先に決めておく
まずは、今作っている講座の中身を一つずつ見て、「ここは受講者に考えてほしいのか、覚えてほしいのか、真似してほしいのか」を書き出してみてください。それが、形式と渡し方を決める出発点になります。


