商品の特長も、内容の充実ぶりも、しっかり説明している。それなのに、お客様の心に届いている手応えがない。そんなふうに感じている方は少なくありません。
原因の多くは、説明の上手さではありません。お客様が「何を買いたいのか」を、売る側がつかみきれていないことにあります。
結論から言うと、お客様が本当に買っているのは、商品そのものではなく、商品を通して手に入る未来です。その未来をつかむ方法として私がおすすめしているのが、「未来のお客様から届く感謝の手紙」を、商品を売る前に自分で書いてみることです。
この記事では、なぜ感謝の手紙を書くとお客様が見えてくるのか、手紙を書く3つのステップ、書いた手紙を商品づくりや発信に生かす方法、そして使うときに気をつけたい線引きをお伝えします。
お客様が買っているのは「商品の先の未来」
商品を売るとき、私たちはつい、商品のことばかり考えてしまいます。どんな内容か、どれだけ充実しているか、ほかとどう違うか。どれも大切ですが、お客様の目線から見ると、それは「手段」の話です。
たとえば、ダイエットの商品を買う人が、本当に求めているのは「体重が減ること」だけでしょうか。その先には、「自分に自信を持ちたい」「好きな服を着て出かけたい」「健康に毎日を過ごしたい」といった願いがあるはずです。
お客様を動かしているのは、この「先にある願い」です。 商品の説明がどんなに正確でも、この願いに触れていなければ、お客様は「自分のための商品だ」とは感じません。
でも、この願いは、お客様自身もはっきり言葉にしていないことが多いです。そこで役に立つのが、感謝の手紙です。
なぜ「感謝の手紙」を書くとお客様が見えてくるのか
感謝の手紙には、「あなたのおかげで、こうなれました」という言葉が書かれます。つまり、お客様が手に入れた未来が、お客様自身の言葉で語られるのです。
- 「人前で話すのが怖くなくなりました」
- 「長年のコンプレックスから解放されました」
- 「やりたかった仕事に挑戦できました」
こうした言葉には、お客様が抱えていた悩みと、手に入れたかった状態の両方が入っています。
まだお客様がいない段階でも、この手紙を「想像して」書くことはできます。未来のお客様になったつもりで、商品を使い終えたあとに書く手紙を、先に書いてみるのです。すると、自分の商品が誰の、どんな悩みを、どんな未来に変えるのかが、売る側の言葉ではなく、お客様の言葉で見えてきます。
感謝の手紙を書く3つのステップ
では、実際にどう書けばいいのでしょうか。3つのステップでご紹介します。
ステップ1:お客様になったつもりで、使う前と後を想像する
まず、自分がお客様になったつもりで、商品を使う前と使った後の自分を想像します。
| 想像すること | 問いかけの例 |
|---|---|
| 使う前の悩み | どんなことに困っていて、どんな気持ちだったか |
| 使った後の気持ち | 何から解放されて、どう感じているか |
| 周りの変化 | 家族や職場の人の反応はどう変わったか |
| 毎日の変化 | 朝起きてから寝るまでの中で、何が変わったか |
できるだけ具体的に、場面が目に浮かぶところまで想像するのがポイントです。
ステップ2:商品の感想ではなく「手に入れた未来」を書く
感謝の手紙は、商品の感想文ではありません。「内容が分かりやすかったです」で終わらせずに、その先で手に入れた未来まで書きます。
たとえば、英会話の教材を売っているとします。感想文だと「教材が分かりやすかった」で終わります。感謝の手紙なら、次のような未来が出てきます。
- 旅行先で道に迷ったとき、自分から現地の人に話しかけて助けてもらえた
- 字幕なしで、好きな海外ドラマを楽しめるようになった
- 英語を使う仕事に、思い切って応募できた
一つの商品から、いくつもの未来が出てきます。それぞれが、違うお客様の「先にある願い」の候補です。
ステップ3:使う前の自分と比べて、気持ちまで書く
最後に、手紙にお客様の気持ちを書き込みます。「以前は人前で話すたびに緊張して、会議で発言できなかった私が」と使う前の自分と比べ、「今では自分から手を挙げられるようになって、それが少し誇らしいです」と、変化と気持ちを書きます。
3つのステップを通すと、たとえば英会話の教材なら、次のような短い手紙になります。
先生、ありがとうございました。以前の私は、英語で話しかけられるたびに固まってしまい、旅行でもずっと下を向いていました。先日の旅行で道に迷ったとき、初めて自分から現地の人に声をかけて、駅までの道を教えてもらえました。うまく話せたかは分かりません。でも、下を向かずに話せた自分が、少し誇らしかったです。次は、現地の人と食事の話ができるようになりたいです。
最後の一文のように、お客様が「次に望むこと」まで書けると、次の商品を考えるヒントにもなります。
使う前と後の差がはっきりしているほど、その手紙は、あなたの商品が届けたい未来を正確に表しています。
書いた手紙を、商品づくりと発信に生かす
書いた感謝の手紙は、読み返して終わりにせず、ビジネスの設計に使います。
商品の中身を見直す
手紙に書いた未来に、今の商品の中身でたどり着けるかを確かめます。「旅行先で話しかけられた」という未来を書いたのに、教材の中身が文法の説明ばかりなら、実際に話す練習が足りないのかもしれません。手紙は、商品に足りないものを教えてくれます。
発信の言葉を選ぶ
手紙の中の言葉は、お客様の目線の言葉です。ブログの記事や案内文を書くときに、「発音を学べる教材です」ではなく「旅行先で、自分から話しかけられるようになる」と書くと、読む人は自分の未来として受け取りやすくなります。お客様の言葉で書く考え方は、見込み客が普段使う言葉に言い換える顧客情報の整理でも解説しています。
お客様との関わり方を決める
手紙を書くと、「この未来にたどり着くまで、お客様のそばで何をすればいいか」が見えてきます。途中でつまずきそうな場面が分かれば、そこでサポートを用意できます。購入後のお客様との関わり方は、購入者をあなたの「熱狂的なファン」に変える方法で解説しています。
想像の手紙と、本物のお客様の声は分けて使う
ここで、一つ大事な線引きがあります。自分で想像して書いた感謝の手紙は、あくまで設計のための下書きです。「お客様の声」として、ウェブサイトや案内文に載せてはいけません。実際にはいないお客様の声を載せることになり、読む人をだますことになるからです。
販売の場で使えるのは、実際のお客様からいただいた、本物の声だけです。載せるときは、必ず本人の了承を得てください。
そして、実際にお客様ができたら、想像で書いた手紙と、本物の声を比べてみてください。
| 比べること | 分かること |
|---|---|
| 想像どおりだった未来 | 商品の強み。発信でもっと伝えていい |
| 想像になかった未来 | 自分では気づいていなかった価値 |
| 想像したのに出てこなかった未来 | 商品の中身か、伝え方を見直す場所 |
本物の声を集める方法は、購入者アンケート術で解説しています。
よくある失敗
| よくある失敗 | どう直すか |
|---|---|
| 商品の感想文になってしまう | 「そのおかげで、何ができるようになったか」まで書く |
| 誰にでも当てはまる言葉になる | 場面と気持ちを具体的に書く |
| 想像の手紙を「お客様の声」として載せる | 下書きとしてだけ使い、載せるのは本物の声だけにする |
| 書いて満足し、商品を見直さない | 手紙の未来に今の中身でたどり着けるかを確かめる |
まとめ
- お客様が買っているのは商品ではなく、商品を通して手に入る未来
- 未来のお客様から届く「感謝の手紙」を先に書くと、その未来がお客様の言葉で見えてくる
- 使う前と後を想像し、感想ではなく手に入れた未来と気持ちを書く
- 書いた手紙は、商品の中身・発信の言葉・お客様との関わり方の見直しに使う
- 想像の手紙は設計のための下書き。販売の場で使うのは、了承を得た本物の声だけ
まずは、あなたの商品を使い終えた一人のお客様を思い浮かべて、「〇〇さん、ありがとうございました」から始まる手紙を、便せん1枚分だけ書いてみてください。


