ビジネスの本を読んだり、セミナーや講座で学んだりしているのに、なかなか成果につながらない。学んだときは「なるほど」と思ったのに、数日たつと何を学んだのか思い出せない。そんな経験がある方は多いと思います。
どんなに良いノウハウを知っていても、実践しなければ成果にはつながりません。当たり前のことですが、学んだ内容をすぐに実践に移す人は、実はとても少ないです。
こういうとき、「自分はやる気が足りない」「意志が弱い」と考えてしまいがちです。でも、原因はやる気ではありません。人は、学んだことをとても早く忘れる生き物だからです。
結論から言うと、学んだことを成果につなげるには、忘れる前提で、学んだ直後に小さく実践する仕組みを作ることが大切です。この記事では、忘却曲線という考え方をもとに、学習したらすぐに実践する習慣の作り方をお伝えします。
人は学んだことを、驚くほど早く忘れる
人が学んだことを忘れていく様子を表したものに、「忘却曲線」があります。よく知られているのは、心理学者のヘルマン・エビングハウスによるものです。
エビングハウスは、意味を持たない短い音のつながりを自分で覚え、時間がたつとそれがどれくらい失われていくのかを調べました。覚え直すのにかかる手間を測ったところ、次のような傾向が分かりました。
| 時間がたつと | 分かったこと |
|---|---|
| 覚えてすぐ(1時間ほど) | 忘れる量がいちばん多い |
| 1日後 | 覚えたことの多くが失われ、覚え直しに手間がかかる |
| 1日より後 | 忘れていく速さはゆるやかになる |
この実験で測ったのは、「一度覚えたものを、もう一度覚え直すときに、どれくらい手間が省けたか」です。時間がたつほど省ける手間は小さくなり、最初に覚えたときとあまり変わらない手間がかかるようになっていきます。つまり、学んだ直後に使わないまま時間がたつと、あとで使おうとしたときに、ほとんど一から学び直すことになるのです。
ここから分かるのは、忘れる量は、学んだ直後から1日のあいだがいちばん大きいということです。
学んだことをすぐに使わずに後回しにすると、内容を忘れるだけでなく、「これを実践しよう」と思っていたこと自体も忘れてしまいます。学んだときは理解したつもりでも、1日たつと記憶はあいまいになっているのです。
実践できないのは、意志ではなく仕組みの問題
学んだことを実践できないと、自分の意志の弱さを責めたくなります。でも、忘れるのは人として自然なことです。どんなに真剣に学んでも、時間がたてば忘れます。
そう考えると、見直すべきは意志ではなく、学び方の仕組みです。
| よくある学び方 | 見直した学び方 |
|---|---|
| 学んだら「そのうちやろう」と置いておく | 学んだその日のうちに、小さく一度やってみる |
| 一度にたくさんのノウハウを集める | 一つ学んだら、一つ試す |
| 実践するかどうかを、その日の気分で決める | 実践する時間を、学ぶ前から予定に入れておく |
たとえば、講座を受けた日の夜に30分だけ、学んだことを自分のビジネスに当てはめて書き出す時間を取っておく。それだけでも、学んだことが実践に変わりやすくなります。
私自身、独立したばかりのころは、何を発信すればいいのか分からないまま、ブログやSNSを続けていました。当時いちばん欲しかったのは、「これをこの順番でやればいい」という手順でした。学んだことが成果につながらないときは、知識の量より、「何から、どの順番で試すか」が決まっていないことが多いのです。
学んだらすぐに実践する5つのステップ
では、具体的にどうすればいいのか。学んだ内容を実践につなげるための手順は、次の5つです。
- 学ぶ前に、実践する時間を予定に入れる:学んだ当日か翌日に、実践のための時間を先に確保しておく
- 学んだら、一つだけ選ぶ:たくさん学んでも、まず試すのは一つに絞る
- 自分のビジネスに当てはめて書き出す:学んだことを、自分の商品やお客様に置き換えて言葉にする
- 小さく一度やってみる:完璧でなくていいので、その日のうちに形にする(文章を1本書く、1人に声をかける、など)
- やってみて分かったことを書き残す:うまくいったこと、つまずいたことをメモしておき、次に学ぶときの手がかりにする
ポイントは4つ目の「小さく」です。学んだことを完璧に実践しようとすると、準備に時間がかかり、そのあいだに忘れてしまいます。最初の一回は小さくていいので、とにかく学んだ直後に手を動かすことを優先してください。
学んだことを外に出す(アウトプットする)ことが、いちばんの学びになるという考え方は、「情報発信」という最強学習法でも詳しくお伝えしています。
習慣にしてしまえば、続けるのは楽になる
学んだらすぐに実践することは、最初は意識しないとできません。でも、何度か繰り返して習慣になってしまえば、それほど頑張らなくても続けられるようになります。
習慣にするためのコツは、次のとおりです。
- 実践する時間と場所を、毎回同じにする
- 実践したら、カレンダーや手帳に印をつけて、続いていることが目で見えるようにする
- できなかった日があっても、翌日に再開すればいいと決めておく
特に3つ目は大事です。一度できなかっただけで「やっぱり自分には続かない」とやめてしまう方は多いのですが、途切れること自体はよくあることです。途切れたら、また始めればいいだけです。
もう一つ、習慣にしやすくする工夫として、学ぶ前に「これを学んだら、何に使うのか」を一行で決めておく方法があります。たとえば「この講座で学んだことを、来週のメルマガ1通に使う」と決めておけば、学んでいる最中から、使える部分を探しながら聞くようになります。使い道が決まっている学びは、忘れにくく、実践にもつながりやすくなります。
これは、人に教える立場になったときにも役に立つ考え方です。講座やセミナーで参加者に行動してもらいたいときも、「頑張ってください」と励ますより、学んだ直後に手を動かすワークや宿題を用意しておくほうが、ずっと行動につながります。この考え方はワークと宿題で人を動かすHOW設計で解説しています。
学びを実践につなげるときによくある失敗
最後に、学んだことを実践につなげようとするときによくある失敗をまとめておきます。
| よくある失敗 | どう直すか |
|---|---|
| 学んだことを全部やろうとして、何も始められない | 一つだけ選んで、先に試す |
| 次の講座や本に進み、前に学んだことを試さないまま | 一つ試してから、次を学ぶ |
| 実践を完璧にしようとして、準備で止まる | 最初の一回は小さく、その日のうちに形にする |
| 続かないのを自分の意志のせいにする | 時間と場所を決めて、仕組みで続ける |
| やってみた結果を記録していない | 分かったことを書き残し、次に生かす |
学ぶことそのものは、とても良いことです。ただ、学ぶ量を増やすほど、試していないことも増えていきます。学ぶ量より、試した数を増やすことを意識してみてください。学び方の土台の考え方は、成功者が絶対に守る「学習プロセスの原理原則」でもまとめています。
まとめ
- 人は学んだことを早く忘れ、忘れる量は学んだ直後から1日のあいだがいちばん大きい
- 実践できないのは意志の問題ではなく、学び方の仕組みの問題
- 学ぶ前に実践の時間を予定に入れ、学んだら一つだけ選んで、その日のうちに小さく試す
- 実践の時間と場所を決めて習慣にし、途切れても再開すればいい
- 学ぶ量より、試した数を増やす
まずは、最近学んだことの中から一つだけ選び、今日中に10分だけ、それを自分のビジネスに当てはめて書き出してみてください。


