「あの人はうまくいっているのに、どうして自分は」と、周りと比べて落ち込んでしまうことはありませんか。SNSを開けば、楽しそうに働いている人や、次々と成果を出している人が目に入ります。そのたびに、自分だけが取り残されているような気持ちになる。
こうした悩みを持っている方は、とても多いです。まじめな人ほど、うまくいっている人のやり方をそのまま自分に当てはめようとして、しっくりこないまま疲れてしまいます。
結論から言うと、人と比べて落ち込むのは、あなたに才能がないからではありません。人はそれぞれ、喜びを感じる場面に自分なりの決まったパターンを持っていて、そのパターンが人によって違うからです。私はこれを「ヒューマンソースコード」と呼んでいます。
この記事では、ヒューマンソースコードとは何か、過去の体験から自分のパターンを言葉にする3つのステップ、そしてそれを働き方や商品の形に活かす方法をお伝えします。
人はそれぞれ、違う「ソースコード」で動いている
ソースコードとは、パソコンのソフトを動かしている設計図のことです。同じパソコンに見えても、中に入っているソフトが違えば、得意な処理も、動き方も違います。
人も同じです。私たちは普段意識していないだけで、「こういう場面で嬉しくなる」「こういうときにやる気が出る」という、自分なりのパターンを持っています。
たとえば、嬉しい、楽しいと感じる瞬間を思い出してみてください。
- 友達と旅行に行ったとき
- 仕事で目標を達成したとき
- 趣味に没頭しているとき
- 誰かに「ありがとう」と言われたとき
人によって、思い浮かぶ場面はまったく違うはずです。そして、自分の思い出をいくつも並べてみると、その中には共通するパターンがあることに気づきます。これが、あなたのヒューマンソースコードです。
比べて落ち込むのは、違う設計図を比べているから
周りの人と自分を比べて落ち込むのは、違うソフトが入ったパソコン同士を比べているようなものです。得意な処理が違えば、うまく動く場面も違って当然です。
たとえば、大勢の前で話すことに喜びを感じる人と、一人ひとりとじっくり話すことに喜びを感じる人がいます。前者のやり方を後者がそのまま真似すると、成果が出る前に疲れてしまいます。それは能力の差ではなく、設計図の違いです。
他人をうらやむ前に、まず自分の設計図を知る。それが、あなたらしく力を出せるようになるための出発点です。
自分の設計図が分かると、次のような変化が起きやすくなります。
- 本当にやりたいことと、やらなくていいことの区別がつく
- 人と比べる回数が減り、自分のペースで進めるようになる
- 仕事の選び方や、人との付き合い方を、自分の基準で決められるようになる
自分のソースコードを解読する3つのステップ
では、どうすれば自分のパターンを言葉にできるのでしょうか。ノートとペンを用意して、次の3つのステップで進めてみてください。
ステップ1:嬉しかったこと・楽しかったこと・誇らしかったことを書き出す
まずは記憶をたどり、心が動いた瞬間を思い出して書き出します。
- 初めて自転車に乗れた日
- 試験に合格したとき
- 誰かに頼られて、力になれたとき
どんなに小さなことでも構いません。頭で「これは大事な体験か」と考えすぎず、思い出して気持ちが明るくなる場面を、思いつくまま書き出すのがポイントです。10個から20個くらい出てくると、次のステップが進めやすくなります。
ステップ2:それぞれの体験で感じた気持ちを言葉にする
次に、書き出した体験ごとに、そのときどんな気持ちだったかを言葉にします。
たとえば「初めて自転車に乗れた日」なら、次のような気持ちが出てくるかもしれません。
- 達成感:あきらめずに練習して、できるようになった
- 解放感:自分の力で風を切って走れた
- 自信:やればできるという気持ちがわいた
1つの体験から、いくつもの気持ちが出てくることは珍しくありません。「嬉しい」「楽しい」だけで止めずに、「誇らしい」「ありがたい」「心が温かい」「わくわくする」など、できるだけ細かく言葉にしてみてください。
ステップ3:気持ちに優先順位をつける
最後に、ステップ2で出てきた気持ちを並べ、「自分にとって、どれがより大切か」の順番をつけます。
たとえば「達成感」「認められること」「人とのつながり」の中で、どれが一番大切でしょうか。これは良い・悪いを決める作業ではありません。あなたの設計図が、どんな要素でできているかを確かめる作業です。
何度も出てくる気持ちや、順番をつけるときに迷わず上に来る気持ちが、あなたのヒューマンソースコードの中心です。
例:「つながり」が中心にある人
ここで、元になった対談で自分のパターンを分析したHさんの例を紹介します。
Hさんが嬉しかった体験を並べてみると、次のような場面が多く出てきました。
- 誰かに誘われたとき
- 個別に声をかけられたとき
- 尊敬している人にお願いされたとき
- 相談されたとき
共通していたのは「つながり」でした。さらに深掘りしていくと、「お互いにとって特別な存在だと感じられたときに、一番強くつながりを感じる」という決まりが見えてきました。大人数より少人数、表面的な付き合いより深い関係を大切にする傾向も、この決まりに沿っていました。
このように、自分の中心にある要素が分かると、なぜある場面では元気が出て、別の場面では疲れるのかが説明できるようになります。
価値観を、働き方や商品の形に活かす
自分のソースコードが分かったら、それを働き方や、自分で作る商品の形に活かします。
たとえば、Hさんのように「つながり」が中心にある人なら、次のような形が合いやすいと考えられます。
| ソースコードの中心 | 合いやすい形の例 |
|---|---|
| つながり | 少人数の講座、個別の伴走、双方向で話せるグループ |
| 達成感 | 期限と目標がはっきりした短期の企画、成果を一緒に確かめるサポート |
| 新しい発見 | 新しい情報を調べて届ける発信、学びを整理して教える講座 |
大勢のお客様と浅く関わる形より、少人数と深く関わる形のほうが心地よい人もいます。そういう人が、無理に大人数を集める方法を真似すると、成果が出る前に疲れてしまいます。少人数から売上を作る考え方は、集客3名でも売上は作れますで解説しています。
また、自分の喜びのパターンは、商品の材料にもなります。どんな体験に心が動いてきたかを振り返ることは、あなたの経験や知識を棚卸しすることでもあるからです。棚卸しの進め方は経験と知識を商品の材料に変える棚卸し7項目で解説しています。
仕事だけではありません。「つながり」が中心の人が、仕事に時間をかけすぎて家族や友人との時間を減らしてしまったら、本末転倒です。誰と時間を過ごすか、どんな仕事にやりがいを感じるか、休みの日をどう過ごすか。こうした選択も、自分のソースコードを基準にすると、迷いが少なくなります。
よくあるつまずき
最後に、自己理解の作業でつまずきやすいところをまとめておきます。
| よくあるつまずき | どう直すか |
|---|---|
| 「大きな成功体験」しか書こうとしない | 小さな嬉しかったことも書く。日常の場面ほどパターンが見えやすい |
| 気持ちを「嬉しい」「楽しい」だけで止めてしまう | 「なぜ嬉しかったのか」をもう一度自分に聞いてみる |
| 出てきた価値観を「こうあるべき」で書き換えてしまう | 良い悪いを判断せず、出てきたまま受け止める |
| 分かったことを、働き方に活かさないまま終わる | 今の仕事の中で、中心の要素を増やせる場面を1つ選ぶ |
一度で完璧な答えを出す必要はありません。思い出す体験が増えるたびに、設計図はよりはっきりしてきます。自分では変えられない他人との比較から目を離し、自分が変えられることに集中する考え方は、「関心の輪」と「影響の輪」の法則も参考になります。
まとめ
- 人は、喜びを感じる場面に自分なりの決まったパターン(ヒューマンソースコード)を持っている
- 人と比べて落ち込むのは、才能の差ではなく、違う設計図同士を比べているから
- 「嬉しかった体験を書き出す→気持ちを言葉にする→優先順位をつける」の3ステップで解読する
- 分かった価値観は、働き方や商品の形(少人数・個別・短期など)を選ぶ基準にする
まずは今日、嬉しかったことを10個、ノートに書き出してみてください。並べて眺めるだけでも、あなたが何に心を動かされてきたのか、共通する言葉が見えてくるはずです。


