叶えたいことがある。そのためにやるべきことも、なんとなく分かっている。それなのに、なかなか手がつけられない。「いつか起業したい」「ブログを書いて発信したい」「体を引き締めたい」と思いながら、気づけば何か月もたっている。そんな経験は誰にでもあると思います。
こういうとき、多くの方が「自分はやる気が足りない」「意志が弱い」と自分を責めてしまいます。でも、行動できない原因は、やる気や意志の強さではないことがほとんどです。
結論から言うと、人が動けないのは、「いつ、何を、どうやるのか」が頭の中で具体的な場面になっていないからです。場面が決まっていないと、いざその時が来ても何から始めればいいか分からず、後回しになってしまいます。
この記事では、やりたいことを「すでに経験したことのように」具体的な場面として思い描いておく方法を、「未来の記憶」と呼んでお伝えします。作り方の3ステップと、具体例、うまくいかないときの見直し方までをまとめました。
やる気だけに頼ると、行動は続かない
「よし、明日から頑張ろう」。そう決めた瞬間は、誰でも前向きな気持ちになっています。ところが、いざ次の日になると、次のような声が頭に浮かびます。
- 「今日は疲れたから、明日でいいか」
- 「まとまった時間がないから、週末にしよう」
- 「本当に自分にできるのかな」
そして、結局その日も何もしないまま終わる。これを繰り返すうちに、「自分はダメだ」と感じてしまう方も多いです。
でも、これは性格の問題ではありません。やる気や気分は、その日の体調や出来事でいくらでも上下します。上下するものに行動を任せていれば、行動も上下するのは自然なことです。
動けるかどうかを、やる気に決めさせないこと。 これが、行動を続けるための出発点です。ではどうすればいいのかというと、やる気がそれほど高くない日でも、迷わずに始められる状態を先に作っておくことです。
動けない本当の原因は「具体的な行動計画」がないこと
多くの人は、目標は立てても、そのための具体的な行動までは決めていません。
たとえば、「いつか起業したい」という目標を立てたとします。でも、「いつまでに」「どんなことを仕事にして」「最初の1週間で何をするのか」が決まっていなければ、何から始めればいいのか分かりません。分からないことは、人は後回しにします。
つまり、行動できないのはやる気がないからではなく、次にやることが一つに決まっていないからです。
ここで役に立つのが「未来の記憶」です。
「未来の記憶」とは何か
私たちは、過去の経験をもとに行動を決めています。一度行ったことがある場所には迷わず行けますし、何度もやったことのある作業は、深く考えなくても手が動きます。反対に、初めての場所や初めての作業には、どうしても腰が重くなります。
「未来の記憶」とは、これからやる行動を、まるで一度経験したかのように、細かい場面まで先に思い描いておくことです。いつ、どこで、何を使って、どんな順番でやるのか。それを先に頭の中で一度たどっておくと、実際にその時が来たときに「知っている道」を歩くように始められます。
大げさな技術ではありません。旅行の前に、地図を見ながら当日の道順を確かめておくのに近いものです。
「未来の記憶」の作り方3ステップ
未来の記憶は、紙とペンがあれば作れます。次の3つのステップで進めます。
| ステップ | やること | 書き出すもの |
|---|---|---|
| 1. 目標と期限を決める | 何を、いつまでに達成するのか | 目標1行・期限の日付 |
| 2. 行動を細かく書き出す | 目標までにやることを、小さな作業に分ける | 作業のリスト |
| 3. 場面を思い描く | 最初の作業をやっている自分を、五感で思い描く | 日時・場所・使うもの |
ステップ1:目標と期限を決める
まずは、目標と期限をはっきりさせます。「いつか起業したい」ではなく、「〇年〇月までに、〇〇を教える講座を始める」のように、何を、いつまでにやるのかを書きます。
書くのは頭の中ではなく、紙の上です。紙に書くと、目標があいまいなところがはっきりします。「〇〇を教える」の部分が書けなければ、そこが最初に考えることだと分かります。
ステップ2:目標までの行動を、細かく書き出す
次に、目標までにやることを、できるだけ細かく書き出します。たとえば「ブログで発信を始める」という目標なら、次のようになります。
- ブログで扱うテーマを決める
- ブログを書く場所を決めて、開設する
- 見た目を最低限整える
- 読んでほしい人が検索しそうな言葉を調べる
- 1本目の記事の見出しを3つ書く
- 1本目の記事を書く
- 公開して、SNSで知らせる
ここでのコツは、1つの作業を「30分以内に終わる大きさ」まで分けることです。「ブログを始める」のままだと大きすぎて手がつけられませんが、「テーマを3つ書き出す」なら今日の夜にでもできます。そして、それぞれの作業に「いつやるか」の日付を書き入れます。
ステップ3:最初の作業を、五感で思い描く
最後に、書き出した作業のうち、最初の1つをやっている場面を、できるだけ細かく思い描きます。
たとえば「明日の朝、ブログのテーマを3つ書き出す」なら、次のように五感で思い描きます。
- 見えるもの:いつもの机、開いたノート、窓からの光
- 聞こえるもの:朝の静かな部屋、コーヒーを入れる音
- 手の感触:ペンを持つ感触、ノートをめくる感触
- 香り・味:入れたてのコーヒーの香り、最初のひと口
ここまで細かく思い描いておくと、明日の朝、机に座ったときに「昨日思い描いたとおりに始めればいい」と感じられます。これが、未来の記憶の役割です。
具体例:「セミナーで話す」を未来の記憶にする
もう少し大きな目標でも考えてみます。「3か月後に、初めてオンラインのセミナーで話す」という目標があるとします。
ステップ2で書き出すと、「話す内容の見出しを決める」「スライドを作る」「一度通しで話して録画する」「募集の文章を書く」などの作業が並びます。
そしてステップ3では、最初の作業だけでなく、当日の場面も思い描いてみます。画面に映る参加者の顔、自分の声、スライドを切り替える手の動き、話し終えたあとに飲む水の冷たさ。当日の流れを一度頭の中でたどっておくと、準備の段階で「当日のために、今これをやっておこう」と、やるべきことが見えやすくなります。
講座やセミナーで参加者に行動してもらう側に立つときも、考え方は同じです。人が動けるのは、やることが小さく、はっきりしているときです。参加者が動ける宿題やワークの作り方は、ワークと宿題で人を動かすHOW設計で解説しています。
未来の記憶がうまくいかないときの見直し方
未来の記憶を作っても、動けない日はあります。そのときは、自分を責めるのではなく、次の4つを見直してください。
| うまくいかない理由 | 見直し方 |
|---|---|
| 作業が大きすぎる | 30分以内に終わる大きさまで分け直す |
| いつやるかが決まっていない | 日付と時間帯を書き入れる |
| 場面がぼんやりしている | 場所・使うもの・最初の一手まで思い描く |
| 目標そのものに気持ちが向いていない | なぜその目標を叶えたいのかを書き直す |
特に多いのは、1つ目と2つ目です。「やる気が出ない」と感じたときほど、作業を小さくし、やる時間を決めると動き出せることがよくあります。
最後の「目標に気持ちが向いていない」場合は、目標の立て方から見直すタイミングかもしれません。目標の決め方は、理想のライフスタイルを実現する目標設定術でまとめています。
また、始めたばかりの頃の気持ちは、時間とともに薄れていくものです。薄れることを前提に、先に仕組みを作っておく考え方は、6ヶ月後のあなた自身に期待するで解説しています。
まずは小さな目標から始める
未来の記憶を作るのが初めての方は、いきなり大きな目標から始めなくてかまいません。「毎朝、決まった時間に起きる」「1日1ページ本を読む」のような、小さな目標で練習してみてください。
小さな目標で「思い描いたとおりに動けた」という経験を重ねると、少しずつ大きな目標にも使えるようになります。
まとめ
- 行動できない原因は、やる気や意志の強さではなく、次にやることが具体的に決まっていないこと
- 「未来の記憶」とは、これからやる行動を、経験したことのように細かい場面まで先に思い描いておくこと
- 作り方は、目標と期限を決める→行動を30分以内の作業に分ける→最初の作業を五感で思い描く、の3ステップ
- 動けない日は、自分を責めずに、作業の大きさ・日時・場面の細かさ・目標そのものを見直す
- 最初は小さな目標で練習する
まずは紙を1枚用意して、叶えたいことを1行と期限の日付を書いてみてください。そして、その下に「明日やる30分の作業」を1つだけ書き、その場面を思い描いてから眠りましょう。


