講座を作るとき、多くの方は教材を完璧にしようとします。説明に漏れがないように動画を撮り直し、資料を何度も書き直す。受講者に成果を出してほしいからこそ、作り込みたくなりますよね。
ところが、そうやって作り込んだ講座でも、受講者の成果にはばらつきが出ます。同じ教材を見ているのに、すぐに結果を出す人もいれば、途中で止まってしまう人もいる。「これ以上、何を足せばいいのか」と悩んでいる方も多いと思います。
結論から言うと、教材をどれだけ作り込んでも、必ず抜け落ちるものがあります。それは、教える側が当たり前すぎて言葉にしていない「コツ」です。そして、そのコツを見つける一番の手がかりは、受講者からの質問です。質問を拾い、教材に戻したり個別のサポートで答えたりしながら、講座を育てていく。これが、教材を完璧にするより確かな方法です。
この記事では、教材から抜け落ちるものの正体、質問が教えてくれること、質問から講座を育てる4つの手順、そして質問が来ない講座で起きていることを解説します。
教材から、必ず抜け落ちるものがある
あなたが教えていることは、あなた自身が何度も試して、つまずいて、身につけてきたことのはずです。その過程で、あなたの中にはたくさんの判断の基準が積み上がっています。
問題は、その基準の多くが、あなたにとって当たり前になっていることです。「ここはこうするものだ」と体が覚えているので、教材を作るときにわざわざ説明しようと思いません。たとえば、次のようなものです。
- 手順の前提:その手順に入る前に、すでにできていてほしいこと
- 判断の理由:なぜそのやり方を選ぶのか、なぜその順番なのか
- 経験から来る見極め:うまくいっているかどうかを、どこを見て判断するか
こうした言葉になっていないコツは、教材を何度見返しても、作った本人には見えません。作り手に見えないすき間は、作り手がいくら見直しても埋まらないんです。
質問は、教材の「すき間」を教えてくれる
では、そのすき間はどうやって見つければいいのか。答えは、受講者の質問の中にあります。
受講者から「なぜここで、このやり方をするんですか」と聞かれたとき、あなたは答えようとして、初めて自分の判断の理由を言葉にします。「言われてみれば、ここにはこういう理由があった」と気づく瞬間です。これが、教材から抜け落ちていたコツが言葉になる瞬間です。
つまり、質問は「教材が足りない」という指摘ではなく、「ここにまだ言葉になっていないコツがある」という道しるべです。質問が多い場所ほど、講座を良くできる余地が大きい場所だと言えます。
質問に答えることで、受講者の理解は深まり、あなた自身のノウハウもより言葉になっていきます。受講者のためにしていることが、そのまま講座の改善につながるんです。
教材で届くのは一般論、質問で届くのは「その人の場合」
質問には、もう一つ大切な役割があります。それは、一人ひとりの状況の違いを埋めることです。
教材は、多くの人に向けて作るものです。そのため、どうしても「一般的にはこうです」という説明になります。ところが、受講者の状況は一人ひとり違います。仕事の忙しさ、使える時間、今いる段階、目指しているところ。同じ手順でも、人によって最適な進め方は変わります。
受講者がつまずくのは、多くの場合、一般論を自分の状況に当てはめるところです。「教材の説明は分かった。でも、自分の場合はどうすればいいのか」。この問いには、教材だけでは答えられません。
教材で全体像と手順を学んでもらい、自分の場合の進め方は質問で答える。この組み合わせにすると、教材を作り込みすぎなくても、受講者は成果に近づきます。教材を完璧にしようとするより、質問を受けられる形を用意する方が、受講者にとって役に立つことが多いんです。
質問から講座を育てる4つの手順
では、具体的にどう進めればいいのか。私は次の4つの手順で考えています。
- 質問しやすい場を用意する:質問を送る場所と、送っていい内容を最初に伝える
- 質問をそのままの言葉で記録する:受講者が使った言葉ごと、質問と答えを書き留めておく
- くり返し出る質問は、教材に戻す:補足の文章や短い動画、よくある質問として講座に足す
- 答えが人によって違う質問は、個別のサポートで答える:状況を聞いたうえで、その人に合う進め方を返す
3と4を分けて考えるのがポイントです。記録した質問を見返すと、次のように振り分けられます。
| 質問の種類 | 例 | 行き先 |
|---|---|---|
| 多くの人が同じところでつまずく質問 | この手順の前に、何を準備しておけばいいですか | 教材に補足として足す |
| 判断の理由を聞く質問 | なぜこの順番なんですか | 教材の説明に理由を書き足す |
| その人の状況によって答えが変わる質問 | 平日に時間が取れない私は、どこから始めればいいですか | 個別のサポートで答える |
くり返し出る質問を教材に戻していくと、次に受講する人は同じところでつまずかなくなります。そのぶん、個別のサポートでは、その人にしか答えられない質問に時間を使えるようになります。
記録は、受講者の言葉のままで残す
2つ目の手順で記録するときは、質問を自分の言葉に言い換えずに、受講者が書いた言葉のまま残してください。
受講者の言葉には、つまずいている人がどう感じているかがそのまま表れています。「窓の向きが違う」「夜しか時間がない」といった言葉は、作り手の頭からはなかなか出てきません。教材に補足を足すときも、この言葉を見出しに使うと、同じところでつまずいた次の受講者がすぐに見つけられます。
記録は、表計算の道具やメモ帳で十分です。質問の日付、質問の言葉、返した答え、そして「教材に戻す」「個別に答える」の振り分けだけを書いておきます。数か月続けると、どこに質問が集まっているかが一目で分かるようになり、次に講座を手直しするときの優先順位が自然に決まります。
質問の場の「呼び名」で、期待をそろえる
1つ目の手順で気をつけたいのが、質問の場の呼び名です。「個別指導」と呼ぶと、受講者は講師がつきっきりで見てくれると期待します。「質問の広場」「仲間と学ぶ場」と呼ぶと、受講者同士で教え合う場だと受け取られます。
どちらが正しいということはありません。大切なのは、実際にあなたが提供できる関わり方と、呼び名から受ける印象をそろえることです。期待と中身がずれていると、どれだけ丁寧に答えても不満が残ります。反対に、呼び名で期待をそろえておけば、同じ関わり方でも満足してもらえます。
たとえば、写真の撮り方を教える人がいたとします
例で考えてみます。スマホで商品写真を撮りたい個人事業主に向けて、撮り方の講座を開いている人がいたとします。
記録した質問を見返すと、「窓の近くで撮れと言われたけれど、うちの窓は北向きです」「夜しか撮る時間がありません」という質問がくり返し出ていました。講師にとって、光の向きや時間帯で撮り方を変えるのは当たり前のことで、教材では触れていなかったんです。
そこで、光の条件ごとの撮り方を短い補足として教材に足しました。一方で、「自分の商品は反射する素材で、どうしても映り込みが出る」といった質問は、商品によって答えが変わるので、写真を送ってもらって個別に答える形にしました。こうして、講座は受講者の質問によって少しずつ育っていきます。
質問が来ない講座で起きていること
「質問を拾えと言われても、そもそも質問が来ない」という方もいると思います。質問が来ないのは、受講者がつまずいていないからとは限りません。多くの場合、次のどれかが起きています。
- 何を聞いていいのか分からない:質問していい範囲が伝わっておらず、「こんなことを聞いていいのか」と遠慮している
- 何が分からないのか分からない:つまずいていることに、自分でも気づけていない
- 聞く場所が重い:質問するには改まった文章を書かなければいけない雰囲気になっている
対策はシンプルです。最初に「どんな小さなことでも送ってください」と伝え、質問の例をいくつか見せておきます。宿題やワークを出して、手を動かしてもらうのも効果があります。手を動かすと、分からないところが自然に見えてくるからです。受講者が止まらずに次へ進めるように返す方法は、次の一歩に進めるフィードバックの考え方でも解説しています。
チャレンジ企画でも、質問が次の中身になる
私がチャレンジ企画を開くときも、この考え方を大切にしています。
3日間の中では、オープンチャットやLINEで参加者から質問が届きます。そこでくり返し出てくる質問は、次に開くときのワークや説明に足していきます。一方で「自分の場合はどうすればいいか」という質問は、個別相談で一緒に整理します。
私が個別相談の成約率92%(25人中23人)になったことがあるのも、話術のおかげではありません。質問の裏にある一人ひとりの状況を聞き、その人に合う進め方を一緒に考えたからです。質問を大切に扱うことは、講座の改善にも、次のお客様との信頼にもつながります。質問が届きやすい場の作り方は、オープンチャットの運営でも詳しく書いています。
まとめ
- 教材をどれだけ作り込んでも、作り手に当たり前すぎる「言葉になっていないコツ」は抜け落ちる
- 受講者の質問は、そのコツがある場所を教えてくれる道しるべ
- 教材で届くのは一般論。「その人の場合」は質問に答えることで届く
- 質問を記録し、くり返し出るものは教材に戻し、人によって答えが違うものは個別のサポートで答える
- 質問が来ないときは、聞いていい範囲と例を見せ、手を動かしてもらう
まずは、これまでに受講者から届いた質問を思い出せるだけ書き出し、「教材に戻すもの」と「個別に答えるもの」に分けてみてください。教材に戻すものの一つ目が、あなたの講座を育てる最初の一手になります。


