講座やセッションの価格を、そろそろ上げたい。でも、上げたらお客様が来なくなるのではないか。今のお客様にも申し訳ない気がする。そう考えて、何年も同じ価格のままになっている方は少なくありません。
その一方で、毎日のように問い合わせやセッションの対応に追われ、新しい講座を作る時間も、自分の生活の時間も取れていない。売上は人数に比例して増えるけれど、そのぶん忙しさも増えていく。こういう状態の方も多いです。
結論から言うと、少人数で売る個人にとって、安さで勝負するほど苦しくなります。お客様は安さだけで選んでいるわけではありません。価格を上げる前に、価値の伝え方とサービスの形を整えれば、値上げは「お客様を失うこと」ではなく、「合うお客様と深く付き合うこと」になります。
この記事では、安売りが個人を苦しくする理由、値上げの前に整える5つのこと、人のサポートの付け方、そして値上げの進め方を解説します。
安くしても、申し込みは思ったほど増えない
「価格を上げたら売れなくなる」という不安は、とても自然なものです。でも、自分がお客様になったときのことを思い出してみてください。
仕事で毎日使う道具を買うとき、一番安いという理由だけで、聞いたこともないものを選ぶでしょうか。多くの人は、少し高くても、確かに役に立つもの、信頼できるものを選ぶはずです。自分の大事な悩みを解決するためのものなら、なおさらです。
講座も同じです。お客様が探しているのは、安い講座ではなく、自分の悩みを確かに解決してくれる講座です。価格が安すぎると、かえって「本当に大丈夫だろうか」と不安にさせることもあります。
申し込みが来ない原因の多くは、価格ではなく、価値が伝わっていないことです。 価値が伝わっていない講座は、安くしても申し込まれません。反対に、価値が伝わっている講座は、価格を上げても選ばれます。
個人の一番の元手は「時間」
安く売ることが個人を苦しくする理由は、もう一つあります。それは、個人が持っている一番の元手が「時間」だということです。
講座を作り、発信をし、問い合わせに答え、セッションをする。一人で仕事をしていると、それだけで一日が終わってしまいます。この状態で安い価格のまま売上を増やそうとすると、お客様の数を増やすしかありません。お客様が増えれば、対応の時間も増えます。売上は増えても、時間はどんどん足りなくなっていきます。
これでは、会社員のときより忙しくなっただけで、時間を切り売りする働き方から抜け出せていません。
時間に余裕を作るための道は、大きく2つです。
- 同じ売上を、少ない時間で作れるように仕組みを整える
- 価格を上げて、少ない人数のお客様と深く付き合う
この2つは、どちらか一方ではなく、両方を進めるものです。そして、価格を上げると、多くの場合、手のかかるやり取りが減っていきます。価値を分かったうえで申し込んでくれる人が増えるからです。
私がチャレンジ企画で、準備1週間・集客3名で売上600万円という結果になったことがあるのも、人数ではなく、来てくれた人に深く届けることに力を集中したからだと考えています。
値上げの前に整える5つのこと
では、いきなり価格だけを上げればいいかというと、そうではありません。値上げの前に、次の5つを整えます。
| 整えること | 中身 | 整っていないと |
|---|---|---|
| 1. 価値を言葉にする | 受けると何が変わるのかを、お客様の言葉で書く | 高くなった理由が伝わらない |
| 2. 関わり方を決める | 教材に加えて、あなたが直接関わる部分を決める | 教材だけの価格に見える |
| 3. メニューに書く | 含むサポートと含まないサポートを、すべて書き出す | 書いていないサポートまで求められる |
| 4. 上の選択肢を置く | いちばん手厚い形の選択肢も用意しておく | 選ぶ幅がなく、比べてもらえない |
| 5. 合う人・合わない人を書く | 誰に向いていて、誰に向いていないかを伝える | 合わない人が申し込んで、双方が苦しくなる |
1つ目の「価値を言葉にする」は、すべての土台です。講座の中身ではなく、受けたあとにお客様がどうなるのかを書きます。お客様からの声や、よく受ける相談の言葉を使うと、伝わりやすくなります。
3つ目の「メニューに書く」も大事です。メニューに書いていないサポートは、お客様にとって「無料で付いてくるもの」に見えます。メールでの質問、個別の添削、追加の相談。こうしたものを価格の中に含めるのか、別料金にするのかを、先にはっきりさせておきます。
4つ目の「上の選択肢を置く」について、少し補足します。いちばん手厚い選択肢をメニューに置いておくと、それを必要とする人が一定数います。載せていない選択肢は、選ばれることがありません。そして、上の選択肢があることで、真ん中の選択肢の価値も伝わりやすくなります。選択肢の見せ方は、選ばれるオファー一覧表の作り方で詳しく解説しています。
人のサポートは、全員に付けない
2つ目の「関わり方を決める」には、大事な注意点があります。
動画や資料の教材は、一度作れば何人にでも届けられます。そこに、あなたが直接関わるサポートを加えると、お客様は「自分のための特別な手助け」を受け取れます。この個別の関わりが、価格を上げる一番の理由になります。
ただし、人のサポートは、すべてのお客様に付けてはいけません。あなたの時間には限りがあるからです。安い商品を買った人にまで個別のセッションを付けていたら、時間がいくらあっても足りません。
人のサポートは、次のように付ける場所を決めます。
- 入口の安い商品:教材だけ。質問はよくある質問のページで答える
- 真ん中の商品:教材に加えて、決まった期間のメール質問や、少人数での相談会
- 上の商品:個別のセッションや、進み具合の確認まで含める
最初から大きなサポートを付ける必要はありません。まずは今の講座に、期間を区切った質問の受付や、少人数での相談会を足すところから始めると、無理なく価値を上げられます。サポートの深さで商品を分ける考え方は、高額商品を設計する9つの項目でも解説しています。
たとえば、単発のセッションだけを売っているコーチがいたとします
イメージしやすいように、例を出してみます。1回ごとのセッションだけを、手ごろな価格で売っているコーチがいたとします。お客様は毎回申し込んでくれますが、そのたびに日程の調整があり、前回の話を思い出すところから始まります。コーチは毎日のように予定を組み直し、新しいことを考える時間が取れません。
このコーチが、5つを整えたとします。まず、お客様がセッションを重ねたあとにどう変わったかを、よく聞く言葉で書き出します。次に、単発のセッションとは別に、決まった期間で同じゴールを目指す形を用意します。期間中は、決まった回数のセッションに加えて、次のセッションまでの間のメール質問も受け付けます。含むものと含まないものは、案内にすべて書いておきます。
こうすると、価格は単発のときより上がりますが、お客様は「その期間で何が変わるか」で判断できるようになります。コーチにとっても、日程の調整や毎回の説明が減り、一人ひとりの変化に集中できます。単発のセッションを残しておけば、まず試したい人の入口にもなります。
値上げが怖いときに確かめる3つの問い
5つを整えても、実際に価格を変えるのは怖いものです。そのときは、次の3つを自分に問いかけてみてください。
- 今の価格のまま、お客様が倍に増えたら、自分の時間は足りるか
- 今のお客様は、価格ではなく、何に価値を感じて申し込んでくれたのか
- 価格を上げたときに離れる人は、本当に自分が一番力になれる人か
1つ目の問いに「足りない」と答えるなら、今の価格のままでは、事業を大きくするほど苦しくなります。2つ目の問いの答えは、そのまま値上げの理由として伝えられる言葉になります。3つ目の問いは、値上げを「お客様を失うこと」ではなく、「力になれる人を選ぶこと」として見直すためのものです。
値上げの怖さは、多くの場合、先が見えないことから生まれます。問いに答えて、自分の状況を言葉にすると、怖さの中身が具体的になります。具体的になれば、打つ手も見えてきます。
値上げの進め方
5つを整えたら、いよいよ価格を変えます。私は、次の順番で進めることをすすめています。
- 新しい募集から変える:すでに申し込んでくれているお客様の条件は変えない
- 値上げの理由を伝える:何が加わったのか、何が変わったのかを、具体的に書く
- 前もって知らせる:いつから価格が変わるのかを、少し前から伝えておく
- 反応を数字で見る:申し込みの数だけでなく、問い合わせの内容や、面談での反応も見る
- 必要なら伝え方を直す:申し込みが減ったときは、価格を戻す前に、価値の伝え方を見直す
5つ目が大事です。値上げのあとに申し込みが減ると、すぐに価格を戻したくなります。でも、多くの場合、原因は価格そのものではなく、新しい価格に見合う価値が伝わっていないことです。価格を戻す前に、案内文や面談での説明を見直してください。開催後の数字の見方は、申込から成約までの9つの数字の見方で書いています。
値上げでよくある3つの失敗
- 価格だけを上げて、中身も伝え方も変えない:お客様からは、ただ高くなっただけに見える
- 既存のお客様にも、いきなり新しい価格を求める:信頼を失いやすい。今のお客様の条件は守る
- 値上げを申し訳なさそうに伝える:売り手が自信を持てない価格には、お客様も納得しにくい
まとめ
- お客様は安さだけで選んでいない。申し込みが来ない原因の多くは、価値が伝わっていないこと
- 個人の一番の元手は時間。安いまま人数で売上を作ると、忙しさだけが増えていく
- 値上げの前に、価値の言葉・人の関わり・メニュー・上の選択肢・合う人と合わない人の5つを整える
- 人のサポートは全員に付けず、真ん中と上の商品に付ける
- 値上げは新しい募集から。申し込みが減ったら、価格を戻す前に伝え方を見直す
まずは、今の講座で提供しているサポートを、小さなものまですべて書き出してみてください。書き出したものが、メニューに書くべき中身であり、値上げの理由の材料になります。


