自分の講座には自信がある。内容も丁寧に作った。それなのに、案内を出しても申し込みが来ない。かといって、ぐいぐい売り込むのは性に合わない。
講師やコーチ、コンサルとして独立した方から、こうした相談をよくいただきます。売れない理由を「自分はセールスが下手だから」と考えて、話し方や決めゼリフを勉強し始める方も多いです。
結論から言うと、売れない原因の多くは、売り方ではなく「出発点」にあります。自分の商品から考え始めると、どれだけ上手に話しても、相手には売り込みに聞こえます。反対に、相手の悩みと成果から考え始めると、同じ商品の案内が「相談への答え」に変わります。
この記事では、「売る人」から「相手の成果に付き合う相談相手」へ立ち位置を変えるための5つの考え方と、自分の発信が相手とズレていないかを確かめる3つの方法を解説します。
売れない原因は、売り方ではなく出発点にある
商品の作り方には、大きく分けて2つの出発点があります。
| 作り手から始める | 顧客から始める | |
|---|---|---|
| 最初に考えること | 自分が教えたいこと、得意なこと | 相手が困っていること、欲しい成果 |
| 案内の中身 | 商品の内容、回数、特徴の説明 | 相手の悩みと、解決したあとの姿 |
| 相手の受け取り方 | 「売りたいんだな」 | 「自分のことを分かってくれている」 |
こだわりが強く、良いものを作ろうとする人ほど、左側に寄りがちです。内容に自信があるからこそ、「この良さを伝えれば分かってもらえる」と考えてしまうんですよね。
ここで起きているのは、熱量の差です。書いている本人は、内容が面白くて気持ちが乗っています。でも、読む側はまだ自分の悩みのことしか考えていません。この温度差が、「なんだか響かない」「押しつけられている感じがする」という印象になります。 話し方の問題ではなく、どこから考え始めたかの問題です。
考え方1:売る人ではなく、成果に付き合う人になる
「売る人」と「成果に付き合う人」の違いは、仕事がどこで終わるかです。売る人の仕事は、申し込みをもらった時点で終わります。成果に付き合う人の仕事は、相手が成果を出して初めて完了します。
この違いを体で理解するために、一つ試してほしい考え方があります。「もし自分の講座が、受講者が成果を出したときにだけ代金をもらう形だったら」と想像してみることです。
そうなると、考えることが大きく変わります。
- 成果が出そうにない人には、最初から申し込んでもらわない方がいい
- 教える内容は、自分が話したいことより、相手が成果に届くために必要なことを優先する
- 申し込みのあとに、どこでつまずくかを先回りしてサポートする
実際に成果報酬で売る必要はありません。ただ、この視点で自分の講座を見直すと、案内の言葉も、教える中身も、売ったあとの関わり方も自然に変わります。申し込みはゴールではなく、成果までの道のりのスタート地点になるのです。
考え方2:相手を「お客様」ではなく「相談者」として見る
目の前の人を「商品を買ってくれるかもしれない人」として見ると、どうしても申し込んでくれるかどうかが気になります。そうではなく、「悩みを抱えていて、解決の手伝いを求めている人」として見てみてください。
そう見ると、やることがはっきりします。まず相手の悩みを聞く。次に、それを解決するのに何が必要かを考える。自分の商品が役に立つなら提案する。役に立たないなら、正直にそう伝える。
「それでは自分が損をするのでは」と感じるかもしれません。でも実際は逆です。自分の商品で成果を出した人は、あなたを信頼します。信頼した人は、次の段階の商品にも申し込んでくれますし、周りの人にも紹介してくれます。
相手を勝たせることは、きれいごとではなく、長く売上を作るための一番確かな仕組みです。 一度きりの取引をくり返すより、成果を出した人とのつながりが積み重なる方が、少人数でも売上が安定します。
考え方3:人は「価格」と「手に入る未来」を比べて決める
人が何かに申し込むとき、頭の中では天秤が動いています。片方には価格、もう片方には「これを手に入れたら、どんな未来になるか」という期待が乗っています。未来の方が重くなったとき、人は申し込みます。
講座やコンサルが売りにくいのは、この未来が見えにくいからです。食べ物なら、食べたあとの満足はすぐに想像できます。でも講座は、受けたあとに自分がどうなるのかを、相手が自分で想像するのが難しいのです。
ここで多くの人がやってしまうのが、中身の説明を増やすことです。動画の本数、サポートの回数、特典の数。どれも大事な情報ですが、これだけでは天秤の「未来」の皿は重くなりません。
未来を重くするのは、相手がその後に手に入れる具体的な場面です。
- 中身の説明:「全8回の動画と、月2回の相談会が付いています」
- 未来の場面:「平日の夜に、明日の発信内容を迷わず決められるようになります」
後者の方が、相手は自分ごととして想像できます。売り込むべきは自分自身でも、商品の中身でもなく、相手が手に入れる未来の場面です。その場面を描くときは、講師の言葉ではなく相手が普段使う言葉で書くのがコツです。この言い換えは、見込み客が普段使う言葉に言い換える方法で詳しく解説しています。
考え方4:他の講師と比べない
売れないと、「他の講座との違いを示さなければ」と考えがちです。比較表を作って、自分の講座の方が回数が多い、サポートが手厚い、と並べてしまう。
ただ、比較を出した瞬間、相手の頭の中には「似たような講座が他にもある」という前提ができます。そうなると、相手が選ぶ基準は、価格や回数といった分かりやすい条件だけになります。その先にあるのは、値下げの競争です。
比べる代わりにやってほしいのは、次の2つです。
- あなたがなぜこのテーマを教えているのか、どんな考え方で教えているのかを伝える
- 相手がまだうまく言葉にできていない願いを、代わりに言葉にする
2つ目は特に大切です。「集客を増やしたい」という表面の悩みの奥に、「家族との時間を削らずに収入を作りたい」という願いがあるかもしれません。そこを言い当てられたとき、相手は「この人は分かってくれている」と感じます。そうなれば、他の講座と比べる必要そのものがなくなります。
たとえば、会社員向けに発信の講座を教える人がいたとします
例で考えてみます。会社勤めをしながら副業を始めたい人に、発信の方法を教えている講師がいたとします。
比較から入ると、案内はこうなります。「他の講座は動画だけですが、この講座は添削付きです。回数も多く、価格も手ごろです」。読んだ人は、他の講座と見比べて、条件の良い方を選ぼうとします。
願いを言葉にすると、案内はこう変わります。「仕事から帰って疲れていても、30分で1本の投稿を書き終えられる。週末は家族と出かけながら、少しずつ副業の土台ができていく。そんな毎日を作るための講座です」。読んだ人は、他の講座ではなく、自分の生活を思い浮かべます。
同じ講座でも、どこから語るかで、相手が比べるものが変わるのです。
考え方5:ズレは3つの方法で確かめる
ここまでの話は分かっても、自分の発信が相手とズレているかどうかは、自分ではなかなか気づけません。そこで、次の3つの方法で確かめます。
| 方法 | やり方 | 分かること |
|---|---|---|
| 1. 時間をおいて読み直す | 書いた案内文や投稿を、翌日以降に読み直す | 書いた直後の熱量が抜けた状態で、独りよがりな部分が見える |
| 2. 第三者に読んでもらう | 対象の読者に近い人に読んでもらい、感想を聞く | 自分では当たり前すぎて気づかない分かりにくさ |
| 3. 反応を最終的な判断にする | 申し込み、返信、質問の数を見る | 相手に届いたかどうかの一番正直な答え |
3つ目がいちばん大事です。売れなかったとき、「分かってくれる人がいなかった」と考えたくなります。でも、反応がなかったのは、あなたに才能がないからでも、相手の見る目がないからでもありません。案内の出発点が、相手とズレていたという合図です。合図が分かれば、直す場所も決まります。
私自身、独立したばかりの頃は、ブログやSNSを続け、無料相談もしていましたが、なかなか成約につながりませんでした。振り返ると、発信していたのは「自分が教えられること」ばかりで、相手が何に困っているかから始めていなかったのです。数字を使った振り返り方は、申込から成約までの9つの数字の見方で解説しています。
チャレンジ企画は「顧客から始める」を形にしたもの
私がチャレンジ企画を勧めているのは、この「顧客から始める」を、そのまま仕組みにできるからです。
3日間の企画では、最初から商品の話はしません。参加者の現状を整理し、課題を一緒に見つけ、小さな成果を体験してもらいます。そのうえで、もっと先に進みたい人だけが個別面談に申し込み、面談ではまず相手の話を聞きます。商品を案内するのは、相手の課題がはっきりしてからです。
この順番なら、売り込みが苦手な人でも無理なく提案できます。私は準備1週間・集客3名のチャレンジ企画で、売上600万円になったことがあります。大勢を集めたわけでも、話術を使ったわけでもありません。相手の課題から始める順番を守っただけです。
無料セミナーとの違いはチャレンジ企画が「聞いて終わり」にならない理由に、全体の流れはチャレンジ企画の完全ガイドにまとめています。
まとめ
- 売れない原因の多くは、売り方ではなく「作り手から始めている」という出発点にある
- 売る人ではなく、相手の成果に付き合う人になる。相手を「相談者」として見る
- 人は価格と「手に入る未来」を比べて決める。中身の説明より、相手の未来の場面を描く
- 他の講師と比べず、自分の考え方と、相手の言葉にならない願いを伝える
- 発信のズレは、時間をおく・第三者に見てもらう・反応を見る、の3つで確かめる
まずは、今出している講座の案内文を1つ選び、「相手の悩み」と「手に入る未来の場面」が書かれているかを確かめてみてください。書かれていなければ、そこが最初に直す場所です。


