個別面談で、相手の悩みをしっかり聞けた。手応えもあった。それなのに、商品の説明を始めたとたんに相手の表情が固くなり、最後は「少し考えます」で終わってしまう。そんな経験はありませんか。
話を聞く段階まではうまくいっているのに、提案に入ったところで空気が変わる。これは、話し方が下手だからでも、商品が悪いからでもありません。多くの場合、聞く段階から提案の段階へ移る「つなぎ目」が抜けているだけです。
結論から言うと、悩みを聞き終えたら、いきなり商品の話を始めずに、短い一言で「解決の話を聞きたいかどうか」を相手に確かめてください。私はこれを「切り替える」と呼んでいます。そして提案に入ったら、商品の機能の順ではなく、相手が話してくれた課題の順に話します。
この記事では、面談の5つのステージのうち、3つ目の「切り替える」と4つ目の「提案する」を扱います。切り替えの一言の組み立て方、「興味はない」と返されたときの戻り方、提案の8つの手順と、プランの見せ方の線引きまでを、順番にお伝えします。
提案を急ぐと断られるのは、相手がまだ「今必要」と言っていないから
切り替えの一言を使ってよいかどうかには、はっきりした目安があります。悩みを深く聞く段階で、相手が次の2つを自分の口で言えたかどうかです。
- 何かを変える必要がある:「このままではよくない」「何とかしたい」と、問題を問題として認めている
- それは今である:「いつか」ではなく「今のうちに」「できればすぐにでも」と、急ぐ理由を自分で語っている
たとえば、整体院を営む50代の方がいたとします。去年腰を痛めて施術を休んだとき、収入が止まってしまった。その経験から「この先も同じ働き方を続けるのは無理だと思う」「できれば、すぐにでも形を変えたい」と話してくれた。この状態なら、2つがそろっています。
2つがそろうと、相手の頭の中ではすでに「では、どうすれば解決できるのか」という問いが動き始めています。切り替えの一言は、その問いに答えてもよいかの許可をもらうためのものです。
まだそろっていなければ、聞く段階に戻る
反対に、相手が「必要だとは思うけれど、急いではいない」という様子なら、提案に進むのはまだ早い合図です。「このまま続いたらどうなりそうですか」「なぜ今、考えようと思われたのですか」といった質問に戻って、もう少し時間を使ってください。
ここで急いで提案に進んでも、最後に「タイミングを考えます」と言われるだけです。悩みを深める質問の順番は、悩みを深める「質問の階段」の作り方で詳しく解説しています。
切り替えの一言は、相手を説得するための言葉ではありません。相手がすでに思っていることを、確かめるための言葉です。
「切り替える」一言は、3つの部品で組み立てる
切り替えの一言は、次の3つの部品でできています。
- 相手が「避けたい」と言ったことを、なくす
- 相手が「手に入れたい」と言ったことを、手に入れる
- 「そういう方法があるとしたら、興味はありますか」と確かめる
形にすると、こうなります。
もし、【相手が避けたいと言ったこと】をせずに、【相手が手に入れたいと言ったこと】が実現できて、それが続いていく。そういう方法があるとしたら、興味はありますか。
【 】は、相手の言葉で埋める
いちばん大事なのは、【 】の中を、あなたの言葉ではなく相手の言葉で埋めることです。
たとえば、副業でコーチングをしている会社員の方が「毎晩2時間もSNSに使っているのに、成果が出ない」と話してくれたとします。それなら、そのまま「毎晩2時間をSNSに使い続けなくても」と言います。「SNS運用の効率化」のように、業界の言葉へ言い換えないでください。
自分が話した言葉が返ってくると、相手は「この人はちゃんと聞いてくれていた」と感じます。そして、その言葉を口にしたときの嫌な気持ちや、思い描いていた理想を、もう一度思い出します。だから、聞く段階で相手の言葉をそのままメモしておくことが大切です。
例文
骨組みは同じで、入る言葉だけが変わります。
あなた:お話を聞いていて思ったのですが。もし、ご自分の体に頼りきりにならずに、今の知識を生かした収入の柱がもう1本できて、週に1日はご家族と過ごせる。そういう形を作れる方法があるとしたら、興味はありますか。
あなた:もし、毎晩2時間をSNSに使い続けなくても、ご自分のコーチングが届く流れができて、お子さんが生まれる前に形が整う。そういう方法があるとしたら、興味はありますか。
相手が「はい」と答えたら、「では、私のプログラムがお役に立てると思うので、その話をさせてください」と言って、提案に移ります。型が決まっているから、相手が変わっても迷わずに言えます。これが、型で面談を進める再現性です。
言い方は、それまでと同じ調子で
この一言を言うときに、急に声を張ったり、改まった口調になったりする人がいます。それまでの会話と同じ速さ、同じ声の大きさで、さらりと聞いてください。ここで力むと、相手は「いよいよ売り込みが始まる」と身構えます。
「興味はない」と返ってきたら、手前に戻る
聞く段階を丁寧に通っていれば、切り替えの一言には多くの方が「はい」と答えます。それでも「うーん、今はあまり」と返ってくることがあります。そのときに大切なのは、慌てて説得しないことです。
「興味はない」と言われたとき、原因はたいてい切り替えの一言ではなく、その手前にあります。私の経験では、次のどれかがほとんどです。
- 逃れたいことがまだはっきりしていない。欲しいものしか聞けていない
- 「今」である理由を、本人が語っていない
- 一言の中に、相手の言葉ではなく売り手の言葉を使ってしまった
- 相手が本当に困っていることとは、違う問題を取り上げてしまった
この場合は、責める調子にならないよう、聞く段階に戻ります。
あなた:そうなんですね。正直に言っていただいてありがとうございます。よければ、もう少しだけ教えていただけますか。今日のお話の中で、一番何とかしたいと感じていることは、どれでしょうか。
相手:うーん……売上というより、続けられるかどうかが不安なんです。
あなた:続けられるかどうか、なんですね。そう感じるようになったのは、いつごろからですか。
本当に気にしていることが見つかれば、もう一度階段を上り直せます。そのうえで、新しく見つかった言葉を使って、切り替えの一言を言い直します。
必要としていない人には、勧めない
手前に戻って丁寧に聞いても、相手が今の状態で本当に困っていない、ということもあります。そのときは提案に進まず、ここで面談を閉じてかまいません。
あなた:お話を聞いていて、今すぐ何かを変える必要はなさそうだと感じました。もし今後、状況が変わって相談したくなったら、いつでも声をかけてください。今日はお時間をいただいて、ありがとうございました。
必要のないまま申し込んだ人は、途中で続かなくなり、お互いにとってよい結果になりません。相手が「今回は見送る」を選べること。売り込まずに売れる面談は、売らない判断もできる面談です。
提案は商品説明ではなく、相手の課題に答えていく時間
相手が「聞きたい」と言ってくれたら、提案に入ります。ここで多くの人が、商品の中身を上から順に説明し始めます。けれども、相手はすでに「今変えたい」と自分で言っています。提案でやることは、その気持ちに道筋を見せ、相手に合う形を一緒に選ぶことです。売り手が熱く語るほど、相手は冷めていきます。
提案は、次の8つの手順で進めます。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 課題をまとめる:ここまでに聞いた課題を短くまとめ、「合っていますか」と確かめる |
| 2 | 解決までの道筋:課題を解決するまでの段階を、順番に見せる |
| 3 | サービスを課題に結びつける:プランの中身を、相手の課題や不安と結びつけて紹介する |
| 4 | 二択で選んでもらう:上の2つのプランを見せ、「どちらが合いそうですか」と聞く |
| 5 | 選んだ理由を聞く:「なぜそちらが合うと思いましたか」と、本人に理由を語ってもらう |
| 6 | 初回の打ち合わせを決める:最初に何から話すかと、日時を決める |
| 7 | 価値があるかを確かめる:望む状態になれたら、この投資に価値があったと感じるかを聞く |
| 8 | 支払い方法を選ぶ:一括か分割かを選んでもらい、最後のステージへ進む |
5番目の「選んだ理由を聞く」が、とても大切です。売り手が「こちらがおすすめです」と言うより、本人が「一人だと、また途中で止まりそうなので」と自分で理由を言うほうが、ずっと強い決め手になります。
途中で「ここまでで、何か確認しておきたいことはありますか」とこまめに聞くことも忘れないでください。相手を置いてきぼりにしたまま進むと、最後に疑問が一度に出てきて、結局は前に戻ることになります。この「途中で確かめる」考え方は、気持ちを何度も確かめる個別面談の進め方で詳しくまとめています。
道筋とサービスは、相手の不安に結びつけて見せる
課題をまとめたら、プランを見せる前に「どういう順番で解決していくのか」を見せます。ゴールまでの段階が見えると、人は「自分にもできそうだ」と感じます。
たとえば、自分の知識を講座にして販売の流れまで作るサポートなら、道筋は次のようになります。
- テーマを決める:自分の経験の中から、誰のどんな悩みを解決する講座にするかを決める
- 中身を組む:講座の章立てと、受講する人が取り組む課題を作る
- 小さく売ってみる:まず少人数に届けて、反応と感想をもらう
- 販売の流れを整える:講座を知ってもらい、面談で提案するまでの流れを作る
- 仕組みにする:同じ流れを繰り返せる形にして、手を動かす時間を減らす
大切なのは、それぞれの段階が、相手の課題のどこを解決するのかを言えることです。「動画づくりで止まっている」のは2の段階、「施術に頼りきりの収入」が解決するのは5の段階、というように結びつけて話します。
サービスは「機能」ではなく「困りごとへの答え」で伝える
プランの中身も、上から読み上げるのではなく、相手が話してくれた不安に結びつけて紹介します。
| 相手が話したこと | 伝え方の例 |
|---|---|
| 一人だと途中で止まってしまう | 以前は動画づくりで止まったとのことでしたが、月2回、進み具合を一緒に確認するので、止まったところからすぐ動き出せます |
| 何を聞けばいいか分からず、手が止まる | 作業中に分からないことが出たら、その場で聞けます。次の打ち合わせまで待たなくて大丈夫です |
| 時間がなく、続けられるか不安 | 講座は録画でも見られるので、お仕事の合間に進められます |
「質問し放題がついています」は商品の説明です。「その場で聞けます」は、相手の困りごとへの答えです。
「問題→原因→解決策」の表を、面談の前に作っておく
提案をその場の思いつきにしないために、面談の前に準備しておきたいものがあります。お客様によく出てくる問題、その原因、あなたの商品での解決策を並べた対応表です。この表が頭に入っていると、相手が課題を話したときに「それなら、最初にこれをやります」とすぐに言えるようになります。表は面談をするたびに書き足していってください。
プランの見せ方と、質問への答え方にも線引きがある
プランを見せるときは、上のプランから2つを見せます。いちばん手厚い形を先に見せると、「ここまでのサポートがあれば、こういうことができる」という基準がはっきりします。その基準があるから、相手は「自分にはここまで必要か」「この部分は自分でできそうか」と考えられます。
下から順に見せると、上のプランが出るたびに「また高くなった」と感じ、何が増えたのかを比べる余裕がなくなります。範囲を絞った手軽なプランは、相手が「予算が合わない」「そこまでのサポートは要らない」と言ったときに紹介します。
上から見せるのは、驚かせたり追い込んだりするためではありません。そのために、次の線は必ず守ってください。
- 「ほかにプランはありますか」と聞かれたら、隠さずに答える
- 分割の金額を伝えるときは、総額と、手数料が別にかかることも必ず伝える
- お金の状況が明らかに厳しいと分かっている相手には、無理のないプランから話す
- 上のプランを選ばせるために、下のプランの中身をわざと悪く言わない
意図が分からない質問には、まず理由を聞く
提案の途中で「途中でお休みすることはできますか」と聞かれたとします。つい「みなさん最後まで続けていますよ」と答えたくなりますが、相手の事情が「秋に引っ越しがあって、その時期だけ手が離せない」だったら、この答えは的外れです。相手はかえって不安になります。
相手:途中でお休みすることはできますか。
あなた:大事なことですね。よければ、なぜそれが気になったのか教えていただけますか。
相手:秋に引っ越しの予定があって、その1か月くらいは時間が取れないと思うんです。
あなた:それなら、その月は個別の打ち合わせを前後にずらして、講座は録画で後から見ていただく形にできます。最初に予定を一緒に組みましょう。
聞き返すのは、答えを避けるためではなく、相手のことを知りたいからです。意図が分かったら正直に答えます。返金や解約の条件のように、はっきり答えるべきことは、ごまかさずに伝えてください。
お客様の話は、実在して許可のあるものだけ
実際にサポートを受けた人が「何に迷い、どう決めたか」の話は、提案の大きな助けになります。ただし、使ってよいのは実在する方の話で、本人の許可をもらったものだけです。成果は盛らないでください。まだお客様の話がない方は、自分自身がどう迷い、どう決めたかを話せば十分です。
面談全体の流れを先に見ておきたい方は、売り込まずに選ばれるカウンセリングセールスの10ステップもあわせて読んでみてください。
まとめ
- 提案に進む目安は、相手が「変える必要がある」と「それは今だ」の両方を自分の言葉で言えたかどうか。そろっていなければ聞く段階に戻る
- 切り替えの一言は「避けたいことをなくす+手に入れたいことを得る+興味はありますか」。【 】は相手の言葉で埋め、それまでと同じ調子で言う
- 「興味はない」は手前の質問を見直す合図。本当に必要ない人には勧めず、見送ってもらう
- 提案は8つの手順で、相手の課題の順に話す。本人に「選んだ理由」を語ってもらう
- プランは上から2つ。総額と手数料は必ず伝え、聞かれたことは隠さない
次の一歩として、あなたの直近の面談を1つ思い出し、相手が口にした「避けたいこと」と「手に入れたいこと」を、その人の言葉のまま書き出してみてください。それが、次の面談で使う切り替えの一言の材料になります。


