講義の準備を始めると、まずスライドの1枚目を開く。表紙を作り、2枚目に何を書くか考え、3枚目で手が止まる。気づけば1日かけて数枚しか進んでいない。こんな経験はありませんか。
講義スライドづくりで一番時間がかかるのは、デザインではありません。「何を、何枚目に載せるか」を決める作業です。1枚目から順に作ると、この判断を1枚ごとにくり返すことになるので、準備がいつまでも終わりません。
結論から言うと、動画・スライド・図解は、まずAIに「たたき台」を作らせるのが近道です。そのうえで、そのまま使ってよいものと、自分で仕上げるものの線を先に引いておく。この線引きがあれば、講義の準備は大きく短くなります。
この記事では、Gemini Notebook(旧NotebookLM)の動画解説・スライド資料・インフォグラフィックを、講座の教材にするための判断と頼み方を解説します。中身の土台になる学習ガイドの作り方は、学習ガイド・ワークシート・音声解説で教材をそろえる方法で先にまとめています。
動画解説は「そのまま使う」か「たたき台」かを先に決める
動画解説は、ソースの中身をナレーションつきの動画にまとめる機能です。日本語の講座で使うのは、主に次の2つの形式です。
| 形式 | どんな動画か | 講座での使いどころ |
|---|---|---|
| 解説 | ソースの要点を説明する動画 | 各回の予習・復習、補足の動画 |
| ショート動画 | 約60秒の短い動画 | 各回の予告、「この回で作るもの」の紹介 |
映像作品に近い表現の形式もありますが、今は英語のみなので、日本語の講座では使いません。生成には時間がかかることがありますが、裏で進むので、ほかの作業をしながら待てます。
線を引く4つの問い
動画解説をそのまま受講者に渡すか、たたき台にとどめるか。私は次の4つの問いで決めています。1つでも「たたき台」に当てはまれば、本編には使いません。
| 問い | そのまま使ってよい | たたき台にする |
|---|---|---|
| 何に使うか | 予習・復習・予告など、本編を補う動画 | 受講料の中心になる本編の講義 |
| 誰の話が要るか | 資料の要点を整理すれば伝わる回 | 講師の体験・失敗談・考え方を伝える回 |
| 引用で直す所があるか | なし | 1か所でもある(数字・手順の順番・用語) |
| 操作を見せるか | 見せなくてよい回 | 手元の操作を画面で見せる回 |
3つ目がいちばん大事な問いです。 動画の中の1か所だけを差し替えるのは手間がかかります。直す所が見つかったら、その動画は配らず、指示を変えて作り直すか、たたき台に回します。
たとえば、事務職向けのAI時短レッスンを作る人なら、各回の「ショート動画の予告」と「解説の復習動画」はそのまま使えます。一方、自分が事務職として苦労した話と、AIに依頼文を貼る操作を見せる本編は、たたき台にして話す順番の参考にだけ使います。
AIの声で配るときは表示する
動画解説のナレーションは、AIが作った声です。受講者に配るときは「音声はAIで生成しています」と必ず表示してください。動画そのものに文字を足せない場合は、会員サイトのその動画のすぐ上と、説明欄に書きます。表示があって信頼が下がることはありません。後から知られたときのほうが、信頼を失います。
スライド資料は、講義用の形式で作って仕上げる
スライド資料は、ソースからスライドのデッキを作る機能です。講義スライドでいちばん時間のかかる「何を何枚目に載せるか」を、ここで一気に片づけられます。形式は2つあります。
| 詳細なスライド | プレゼンターのスライド | |
|---|---|---|
| 中身 | 全文が入り、単独で読める | 要点だけで、話す人の補助になる |
| 講座での使いどころ | 受講者に配る資料、欠席した人への資料 | 講義で映すスライドのたたき台 |
講義で映すなら「プレゼンターのスライド」を選びます。詳細なスライドを映すと文字が多すぎて、受講者は講師の話より画面を読むことになるからです。
1回分を仕上げるまでの流れ
- 形式を「プレゼンターのスライド」にする
- 指示欄に講座用のカスタム指示の短い版と、「1枚に伝えることは1つ」「手順1つにつき1枚」などの一言を貼って生成する
- 1枚ずつ見て、直したいスライドに修正の指示を出す
- 要らない1枚は削除し、順番を並べ替える
- PowerPointで書き出し、自分のテンプレートで色やロゴをそろえる
- 文字の大きさ・言葉・順番を確かめる
文字の大きさは、作る前に下限を決めておきます。私は、講義動画のスライドは36ピクセル以上、Zoomで映すスライドは24ピクセル以上にしています。見やすいスライドの決まりは、講座スライドを引き算で見やすくする6つの決まりも参考にしてください。
修正の指示は「言い方」と「見た目」に限る
生成したあと、スライドごとに文章やレイアウトの修正を頼めます。ただし、公式ヘルプによると、修正のときはソースを見ません。修正の指示で新しい事実を足させると、ソースにないことが入りやすくなります。
そこで、修正の指示は「見出しを短くして」「箇条書きを3つに減らして」のような言い方と見た目に限ります。最後に「文章の中身は変えず、新しい事実や数字は足さないでください」と添えます。中身を変えたいときは、チャットで確かめてから、指示を変えて作り直します。
自分の声で撮り直すときは、台本をソースから作る
動画解説をたたき台にした回は、自分の声で講義動画を撮り直します。流れは次の5段階です。
- 動画解説とスライド資料を見て、話す順番の見当をつける
- チャットで、ソースから話し言葉の台本の下書きを作らせる(段落ごとに引用つき)
- 自分の体験や、受講者から実際に出た質問を足す
- スライドを台本に合わせて割り直す
- 録音して、つないだ動画を最後まで再生して確かめる
台本の下書きは、スライド資料からではなく、チャットでソースから作らせます。修正したスライドはソースを見ずに作られているので、台本の土台にすると、ソースにない言い方が混ざることがあるからです。
台本の下書きを頼むときは、「私が体験談を入れる場所に【体験談】と書いてください」と指示します。体験談はAIに作らせず、その場所に自分の言葉で書き足します。部品ごとではなく、完成した動画そのもので確かめるのも忘れないでください。
図解は、中身を文字で決めてから図にする
もう1つのたたき台が図解です。Gemini Notebookのインフォグラフィックを使うと、ソースの中身を1枚の図にまとめられます。向き・詳細度・スタイル・言語を選べ、色や強調したい所は指示欄に書いて伝えます。
図解は「各回の終わりに見返す1枚」として作るのがいちばん効きます。講義を全部見直す時間がない受講者も、1枚の図なら何度も見返せるからです。ただし、図は文字よりも間違いに気づきにくい教材です。いきなり図を作らせず、先に中身を文字で決めます。
手順
- チャットで、その回の「1枚に載せる中身」を引用つきで出させる(題名、手順、今日やること)
- 引用を開いて、数字と順番がソースどおりかを確かめる
- 確かめた中身をコピーし、「1枚まとめの中身」という名前のテキストのソースとして追加する
- インフォグラフィックで、そのソースを中心に作るよう指示して生成する
- できた図の文字を、手順2で確かめた中身と1つずつ照らす
手順1〜3がいちばんの要です。 図にしてから間違いを探すより、文字の段階で確かめるほうがずっと速いからです。
置く場所を3つ決めておく
- 各回のページの最後:その回で何をしたかを1枚で確かめられる
- 次の回の最初:前回の1枚を映して、1分で振り返る
- 講座の終わり:全回の1枚を並べて、講座全体の地図として渡す
3つ目の地図は、全回の図の見た目がそろっていてこそ役に立ちます。向き・詳細度・スタイルは、第1回で決めたものを最後まで変えません。
作り直しは1回に1か所、3回で自分の道具へ
1回で思いどおりの図が出ることは、あまりありません。直したい所が見つかったら、指示を変えて作り直します。このとき、変えるのは1回に1か所だけにします。2か所以上を一度に変えると、どの指示が効いたのか分からなくなるからです。
| 直したい所 | 変えるもの |
|---|---|
| 文字が多すぎる | 詳細度を「簡潔」にする。載せる項目の数を指示する |
| 順番が違う | 「手順の番号と順番を変えない」と書く |
| 強調がずれる | 強調する言葉を1つだけ名指しする |
| 雰囲気が合わない | スタイルを変え、全回で同じものにそろえる |
| 言葉が違う | 「ソースの言葉をそのまま使う」と書く |
うまくいった指示は、メモに残しておきます。次の回のまとめでもそのまま使えるからです。
同じ所が3回直らなければ、私はそこで作り直しをやめます。文字で確かめた中身をもとに、PowerPointやCanvaなど慣れた道具で図を組むほうが速いからです。このとき、インフォグラフィックの図は「配置の見本」として使えます。
SNSに使うときは、中身を別に決める
まとめの図は、SNSの投稿にも使いたくなります。ただ、1回分の手順を全部載せた図をSNSに出すと、講座の中身を無料で渡すことになります。SNS用には「この回を受けると何ができるようになるか」を伝える図を、中身から別に決めて作ります。
外に出す前には、図の中の文字を書き取ってチャットに貼り、ソースと照らします。受講者の名前や質問の文面など、外に出してはいけない情報が入っていないかも見ます。他人の資料をソースに入れたノートブックから作った図の扱いは、教材の検品と権利の記事で確かめてください。
まとめ
- 講義の準備が終わらないのは、「何を何枚目に載せるか」を1枚ずつ決めているから。動画・スライド・図解はたたき台をAIに作らせる
- 動画解説は4つの問いで線を引く。予習・復習・予告はそのまま使い、講師の体験や操作を見せる本編はたたき台にする。AIの声には表示を付ける
- スライド資料は講義用の形式で作り、修正は言い方と見た目に限る。撮り直す台本はチャットでソースから作り、体験談は自分で書く
- 図解は中身を文字で決めて確かめてから図にする。作り直しは1回に1か所、3回直らなければ自分の道具で組む
次の一歩として、まず1回分だけ、プレゼンターのスライドでたたき台を作ってみてください。白紙から作るときとの時間の違いが、すぐに分かるはずです。


