AIで教材を作れるようになって、準備の時間は大きく減った。音声もスライドもクイズも、資料を入れればそれらしいものが出てくる。だから、出てきたものをそのまま受講者に配っている。そんな方もいるかもしれません。
ここで一度、手を止めてください。Gemini Notebook(旧NotebookLM)の公式ヘルプには、どの生成物についても「AIが作るので誤りが入ることがある」と書かれています。資料に基づいて答える仕組みでも、間違いはゼロになりません。
結論から言うと、AIで作った教材は、配る前に「検品」してください。検品とは、全部を読み直すことではありません。教材の中の主張を1つずつ取り出し、引用元の資料と見比べることです。あわせて、他人の資料と受講者の情報をどう扱うかも、先に決めておきます。
この記事では、配る前の検品の手順、よくある間違いの4つの型、生成した教材の権利について公式に書かれていること・いないこと、受講者の情報の扱い、そして同じ作り方を社内研修に使うときの注意を解説します。
検品は「全部読み直す」ではなく「1文ずつ見比べる」
検品の手順は、学習ガイドでもスライドでもクイズでも同じです。私は次の5段階で進めています。
- 教材の中の主張を、1文ずつの箇条書きに取り出す(手順・数字・名前・条件を含む文を優先)
- その1文が、ソースのどこに書かれているかをチャットで聞く
- 引用を開き、ソースの原文と見比べる
- ○・△・×で判定する(○ソースにそのまま書いてある/△ソースにあるが条件が足りない/×ソースにない、またはソースと違う)
- 判定と直したことを、検品表に残す
1つ目の取り出しは、AIに手伝わせられます。教材の文章をチャットに貼り、「確かめるべき主張を1文ずつ番号付きで取り出し、根拠のソースがあれば名前を、なければ『根拠なし』と書いてください。教材の文は言い換えないでください」と頼みます。
「根拠なし」と出た文が、最初に見る場所です。ただし、根拠のソース名が出た文も安心はできません。AIの「根拠あり」は、確かめる順番を決める目安です。 引用を開いて、原文が本当にその内容かを自分の目で確かめます。
検品表を残しておく
| 主張(教材の文) | 判定 | 引用したソース | 直したこと |
|---|---|---|---|
| 議事録は会議後10分でまとめる | ○ | 電子書籍の原稿(第3回の章) | なし |
| 録音は10分以内にAIに渡すと精度が上がる | × | なし | 削除 |
| 社名は置き換えてから貼る | △ | セミナーのスライド | 「社名と個人名は」に直す |
表を残しておくと、ソースを足して教材を作り直したときに、前に確かめた場所を見直すだけで済みます。スライド資料をスライドごとに修正した場合は、修正のときにソースを見ていないので、もう一度この手順で確かめます。
よくある間違いの4つの型
教材を検品していて見つかる間違いは、ほとんどが次の4つの型のどれかです。型を知っておくと、どこを見ればよいかが先に分かります。
| 型 | 例 | 見つけ方 |
|---|---|---|
| ソースにないことを足す | ソースにない「無料のAIでも議事録が自動で作れる」が入っている | 「根拠なし」の文を全部開く |
| 数字や固有名詞の取り違え | 「会議後10分」が「会議後5分」に。第2回の手順が第3回として説明されている | 数字・回の番号・道具の名前を原文と照らす |
| 大事な条件が抜ける | 「置き換えてから貼る」の「置き換えてから」が抜け、そのまま貼る手順に読める | 「〜のときだけ」「〜してから」をソースで探し、教材に残っているかを見る |
| 言い過ぎ | 「時間を測って確かめる」が「誰でも残業がゼロになる」になっている | 「必ず」「誰でも」「ゼロ」「すべて」を探す |
1と2は、引用を見れば見つかります。見落としやすいのは3と4です。どちらも、ソースにある言葉を使っているので、引用を開くと一見正しく見えるからです。
とくに3の「条件が抜ける」は、受講者の損につながります。 たとえば、会社のメールを材料にする講座で「名前を置き換えてから貼る」が抜けると、お客様の名前をそのままAIに貼る手順を教えることになります。
4の「言い過ぎ」は、講師の信用につながります。成果を約束する言い方は、販売ページと同じく教材にも入れません。チャットで「ソースより強く言い切っている文と、成果を約束するように読める言い方を探し、弱めた言い方の案を表で出してください。まだ直さないでください」と聞くと、まとめて見つけられます。
AIの回答を確かめずに公開する危うさは、生成AIをビジネスで使うときに守りたい5つの注意点でも書いています。
生成した教材の権利:書かれていること、いないこと
「Gemini Notebookで作った音声やスライドを、有料の講座で使ってよいか」。講座づくりの相談で、よく受ける質問です。最初にお断りしておくと、私は法律の専門家ではありません。ここでは、公式に書かれていることと、書かれていないことを分けて整理します。
公式に書かれていること
- Googleは、ユーザーが生成したオリジナルのコンテンツの所有権を主張しない
- 共有する権利のないコンテンツは共有しないこと。著作権の侵害を繰り返すと、アカウント停止の対象になる
- 適用される規約は、個人のアカウントと仕事用・学校用のアカウントで違う
公式に書かれていないこと
生成物を商用に使ってよいか、販売してよいかを直接書いた公式の記述は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。だから私は、「商用利用できます」とも「できません」とも言いません。有料の講座で使う前に、自分のアカウントに適用される規約を読み、迷ったら専門家に確認してください。
目に見える透かしを消せるかどうかは、プランによって違います。ただ、透かしを消せるかどうかと、商用に使ってよいかどうかは、別の話です。
私が講座で守っている線
- ソースは自分の資料にする(自分のセミナー・自分の原稿・自分の業務メモ)
- 配る前に必ず検品する。本編の講義には、自分の言葉と経験を足してから配る
- AIで作ったことを隠さない。音声や動画には「音声はAIで生成しています」と表示する
- 買った本から作った生成物は配らない
他人の資料を入れるときの注意
講座で特に気をつけたいのは、ノートブックを受講者に共有したときです。閲覧者として共有された人は、ソースを読めます。つまり、他人の教材や本をソースに入れたノートブックを配ると、その中身を受講者に渡すのと同じことになりかねません。
さらに、生成された音声やスライドに、他人の文章の表現がそのまま入り込むこともあります。一般に、他人の文章を自分の教材に載せるには、引用のルールを守るか、権利者の許可を取る必要があるとされます。
| 素材 | 考え方 |
|---|---|
| 自分のセミナー・原稿・ブログ | 講座のソースの中心にする |
| 他人の本・教材・記事 | 自分の学び用のノートブックにとどめ、配るノートブックには入れない |
| 共著・会社の資料 | 共著者や会社の決まりを先に確かめる |
| 受講者の質問・感想 | 個人が分からない形にし、教材に使う了承を取る |
購入した電子書籍をソースにできる機能もありますが、共有した相手も同じ本を買っていないと、その本については使えません。受講者に配るノートブックには向かない、と考えてください。迷ったら、配る前にチャットで「自分が書いた資料ではなく、ほかの人の資料に由来する部分をすべて挙げてください」と聞いて洗い出します。判断するのは講師です。
受講者の情報は、ノートブックに入れない
講座を続けると、受講者の名前・メールアドレス・質問・ワークの書き込みが手元に集まります。受講者が誰か分かる情報は、ノートブックに入れません。
- 受講者の名簿(名前・メールアドレス・申込の情報)
- 受講者が提出したワークや職場の資料(使うなら、了承を取り、名前や社名を置き換えた形にする)
- 個別レッスンの録音(本人の発言や職場の話がそのまま入っている)
個人名を外した質問メモでも、受講者に配るノートブックには入れません。本人が読めば、自分の質問だと分かるからです。受講者の声を教材の改善に使うときは、名前・社名・メールアドレスを外してから入れ、「どの回の話か/つまずいた場所/教材をどう直すか」の形にまとめさせます。
もう1つ、個人のアカウントでは、高評価・低評価などのフィードバックを送ると、関連する内容が収集され、人が確認することがあると公式に書かれています。受講者の情報に近い資料を扱うノートブックでは、私はフィードバックを送らないようにしています。
個人情報をどんな目的で使い、どう管理するかは、法律に関わります。具体的な決まりは、公的機関の案内や専門家に確かめてください。また、削除したノートブックは今のところ復元できません。元の資料は、ノートブックの外に必ず残しておきます。
社内研修に使うときに確かめること
同じ作り方は、会社の新人研修や社内マニュアルにも使えます。やることは、NotebookLMで教材づくりの8割を整理し直す作業にする方法で書いた「1講座=1ノートブック」と同じです。新人研修を1つのノートブックにまとめ、ソースを研修用に整えてから入れます。
研修ならではの注意が2つあります。1つは、古い版を残さないことです。古い手順書と新しい手順書が両方ソースに残っていると、古いほうに寄った答えが返ることがあり、読む人は気づけません。規程を改めたら古い版のソースを外す、と担当者の仕事として決めておきます。
もう1つは、資料どうしの食い違いを先に見つけることです。骨組みを作らせるときに「ソースどうしで内容が食い違う場所は『要確認』として書き出してください」と添えると、手順書と先輩のメモで手順が違う所が見つかります。どちらが正しいかは、担当の部署に確かめてから決めます。
会社で使う前に確かめる6つのこと
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 生成AIの社内規程 | 使ってよいか、どの情報まで入れてよいかは会社が決める |
| 使うアカウント | 個人のアカウントと仕事用のアカウントでは、規約とデータの扱いが違う |
| 外部共有の設定 | 仕事用のアカウントでは、管理者の設定で社外と共有できないことがある |
| 一般公開 | アカウントの種類によっては、公開の共有が使えない |
| フィードバック | アカウントの種類によって、送った内容の扱いが違う |
| 使える機能と上限 | 契約によって違う。管理者と一緒に公式の最新情報を確かめる |
答えを持っているのは、多くの場合、情報システム部門か、生成AIの社内規程を担当する部署です。会社の資料を個人のアカウントで扱うかどうかは、会社が決めることです。担当者が「便利だから」で決めないでください。社内マニュアルを質問窓口にするときの共有の決まりは、確認テストと質問窓口になるノートブックの配り方と同じ考え方で進められます。
まとめ
- AIで作った教材は、資料に基づいていても誤りが入る。主張を1文ずつ取り出し、引用元と見比べて○・△・×で判定し、検品表に残す
- 間違いの型は4つ。ソースにないことを足す・数字や固有名詞の取り違え・大事な条件が抜ける・言い過ぎ。見落としやすいのは後ろの2つ
- 生成物の所有権は主張しないと公式にあるが、商用利用の可否は書かれていない。迷ったら規約を読み、専門家に確認する
- 他人の資料は配るノートブックに入れず、受講者が誰か分かる情報はノートブックに入れない。社内研修では、社内規程とアカウントを先に確かめる
次の一歩として、今配っている教材を1つ選び、主張を1文ずつ取り出してみてください。検品は教材を疑うことではなく、受講者を守ることです。

