講座を作ると決めた。中身にも自信がある。それなのに、教材づくりに入ったとたんに手が止まってしまう。そんな方は多いです。
セミナーで話した録音がある。昔作ったスライドもある。ブログや配布資料もある。それでも講座の教材を作ろうとすると、なぜか毎回、白紙の画面に向かってゼロから書き始めてしまうのですよね。
結論から言うと、教材づくりで一番時間を取っているのは、新しいことを考える作業ではありません。すでに手元にある資料を探し、読み返し、並べ替え、形を変える作業です。私はこれを「整理し直す」作業と呼んでいます。
ここをAIに任せ、人は「何を教えるか」「どの順で教えるか」「できたものを確かめる」に時間を使う。これが、講座の教材を早く、しかもちゃんと作るための正しい順番です。
この記事では、Gemini Notebook(旧NotebookLM)を使って教材づくりの大半を「整理し直す」作業に変える考え方と、最初に作っておく講座用のノートブックの設計を解説します。
教材づくりの時間は、どこに消えているのか
講座の教材を作っているとき、時間はどこに消えているでしょうか。机に向かっている時間を分けてみると、新しいことを考えている時間は意外なほど短いはずです。
教材づくりの時間は、だいたい次の5つに分かれます。
- 探す:あの話はどのセミナーで話したか、どのスライドに書いたかを探す
- 読み返す:録音を聞き直し、ブログや原稿を読み直して、使える部分を拾う
- 並べ替える・書き直す:話した順ではなく教える順に並べ、受講生向けの言葉に直す
- 形を変える:同じ中身を、テキスト・音声・スライド・テストと、形ごとに作り直す
- 決める・確かめる:何をどの順で教えるかを決め、できたものに間違いがないかを見る
1から4までは、どれも手元の資料を整理し直す作業です。私の感覚では、教材づくりの8割はここに使われています。5番目だけが、講師にしかできない仕事です。
足りないのは知識ではなく、整理し直す時間
たとえば、事務職の経験を活かして、副業で「事務職向けのAI時短レッスン」を始めた人がいたとします。全4回の個別レッスンで、使える時間は週に8時間ほどです。
この人の手元には、60分の無料セミナーの録音とスライド、自分で書いた電子書籍の原稿、モニター受講生から集めた質問のメモがあります。材料は全4回分、十分にそろっています。
それでも、録音を聞き直してメモを取り、回ごとに分け、テキストとスライドとテストに作り分けようとすると、週8時間ではとても足りません。止まっている原因は知識ではなく、整理し直す時間なのです。
「整理し直す」作業がAIに向いている理由
探す・読み返す・並べ替える・形を変える。この4つには共通点があります。材料はすでにあり、やることは「材料の中から拾って、別の形に並べる」ことだという点です。
正解の材料が手元にあるので、資料を読ませて形を変えさせるAIに任せやすいのです。逆に、材料のないところから「講座の教材を書いて」と頼むと、それらしい一般論で埋められてしまいます。
Gemini Notebookを使う3つの理由
教材づくりに使えるAIはほかにもあります。それでも私が講座の教材にGemini Notebookをすすめるのは、次の3つの理由からです。
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 入れた資料に基づいて答える | 答えは、ノートブックに入れた資料(ソース)に基づく。講師が話したこと・書いたことが土台になる |
| 答えの出どころを示す | チャットの答えには引用の番号が付き、どの資料のどこから来たかをたどれる |
| 同じ資料から形の違う教材を作れる | 音声解説・動画解説・スライド資料・図解・クイズなどを、同じソースから作れる |
特に大事なのは1つ目です。受講生がお金を払うのは、講師の経験と判断のしかたに対してです。資料に基づいて答える作りは、その講師らしさを教材に残しやすくなります。
資料を探す時間も減ります。「議事録の話は、どの資料のどこにあるか」とチャットで聞けば、引用付きで答えが返ってきます。録音を頭から聞き直す必要がなくなります。
それでも間違いは入る
ただし、資料に基づくからといって、間違いがなくなるわけではありません。公式のヘルプにも、AIが作るので誤りが入ることがあると書かれています。
だから、生成された教材は引用元の資料で1つずつ確かめてから配ります。この「確かめる」作業の具体的なやり方は、教材の検品と権利の記事でまとめています。
任せていいことと、人がやる3つのこと
Gemini Notebookに任せてよいのは、整理し直す作業です。一方で、講師にしかできないことが3つあります。私はこれを「人がやる3つ」と呼んでいます。
- 何を教えるかを決める:資料の中のどれを講座に入れ、どれを外すか。受講生の悩みに合わせて選ぶのは講師です
- どの順で教えるかを決める:受講生がつまずかない順番は、教えた経験のある人にしか分かりません
- できたものを確かめる:生成された教材に、間違いや資料にない話が混ざっていないかを確かめてから配ります
| 任せてよいこと | 人がやること | |
|---|---|---|
| 中身 | 資料の要点の抜き出し、回ごとの振り分け、目次の案 | 何をどの順で教えるかの最終決定 |
| 形 | テキスト・音声・スライド・図解・テストのたたき台 | 講師の経験談や失敗談を足すこと |
| 品質 | 確かめるべき箇所の洗い出し | 正しいかどうか、配るかどうかの判断 |
たとえば、AIに全4回の目次を作らせると、それらしい案は出てきます。しかし、第1回で「今の作業時間を測る」を先にやる理由は、受講生がつまずいた場面を見てきた講師にしか説明できません。
経験談と失敗談は、人が足す
もう1つ、人が足すものがあります。講師自身の経験談と失敗談です。資料に書いていない経験は、AIには書けません。
逆に言えば、経験談を資料に書いておけば、教材にも入りやすくなります。業務のメモに「うまくいかなかったこと」を書き残しておく。それだけで、あとから作る教材の説得力が変わります。
AIに任せる場所と人が担う場所の分け方は、AIライティングの1:8:1の法則とも同じ考え方です。
「1講座=1ノートブック」で器を作る
考え方が決まったら、最初に作るのは教材ではなく、教材を作るための器です。講座1本につき、ノートブックを1つ作ります。私はこれを「1講座=1ノートブック」と呼んでいます。
複数の講座や、講座と関係のない資料を同じノートブックに混ぜないのがポイントです。分ける理由は3つあります。
- 答えがぼやけない:別の講座の資料が混ざると、レベルや言葉づかいの違う話が教材に入り込む
- 確かめやすい:引用で出どころを確かめるとき、見るべき資料がすぐ分かる
- そのまま配りやすい:あとで受講生に共有するとき、関係のない資料を抜き出す手間がない
ノートブックの名前は「講座_講座名」の形にそろえます。先ほどの例なら「講座_事務職向けAI時短レッスン」です。ほかのノートブックと並んでも、講座のものだとすぐ分かります。
消す前に残しておく
ノートブックは、削除すると今のところ復元する方法がありません。作り直したいときも、まず名前に「旧」を付けて残し、新しいノートブックで問題がないと分かってから消してください。
なお、Geminiアプリのノートブックとも同期しますが、音声解説やスライド資料などの生成はGemini Notebook側で行います。講座用のノートブックは、Gemini Notebookで作って管理するのが確実です。
ソースを「講座用」に整える4つの決まり
器ができたら、資料(ソース)を入れます。ただし、入れる前にひと手間かけて講座用に整えます。整えないまま入れると、生成された教材の中で、どの話が第何回のものかが混ざってしまうからです。
整える決まりは4つです。
- 1回分ずつに分ける:回ごとに分けられる資料は、1回分を1つのソースにする
- 分けられないものには見出しを付ける:セミナーや電子書籍のように講座全体にかかわる資料は、話の切れ目に「この部分は第2回」と見出しを入れる
- ソースの名前に番号を付ける:名前は「番号_回_中身」の形にする。00は講座全体、01〜04は第1〜4回
- 古いもの・重なるもの・個人の情報を外す:古い版や同じ内容の資料は入れない。受講生の名前や会社名は、入れる前に消すか「Aさん」に置き換える
これからも書き足す業務メモなどは、Googleドキュメントで作ってドライブから入れておくと便利です。元のファイルを直せば、ソースにも反映されます。
ソースを入れ終えたら、チャットで「このノートブックのソースを、講座の回ごとに整理して表にしてください。どの回にも入らない話題は分けてください」と聞いてみてください。回の振り分けに抜けや重なりがないかを、最初に確かめられます。
具体的な素材の入れ方と、そこから講座の骨組みを作らせる手順は、手元の素材をソースにして骨組みを作らせる手順で解説しています。
講座用のカスタム指示で、口調とレベルをそろえる
最後に、答え方の方針を先に決めておきます。ノートブックには「カスタム指示」という、答え方を先に決めておく場所があります。ここに講座のための指示を書いておくと、どの教材の下書きも同じ口調・同じレベルでそろいます。
決めるのは3つだけです。
| 決めること | 書き方の例 |
|---|---|
| 講師の口調 | です・ます調、1文は短め、専門用語には一言の説明をつける |
| 受講生のレベル | 「AIのチャットを開いたことがない事務職の方」のように、行動で書く |
| 使わない言葉 | 「簡単です」「誰でもできます」、説明なしの英語の略語など |
ここに「ソースにないことは書かない。なければ『ソースに記載がありません』と答える」を足せば、最初は十分です。あれもこれもと書き足すと、どれが効いているのか分からなくなります。
生成のたびに、短い版も貼る
カスタム指示が、音声解説やスライド資料などの生成にどこまで効くかは、公式のヘルプに書かれていません。そこで私は、生成するたびに指示欄にも1〜3行の短い版を貼るようにしています。
短い版は、たとえば「AIのチャットを開いたことがない事務職の方向け。講師の口調で、です・ます調。ソースにないことは入れない」といった形です。教材ごとに「第2回だけを扱う」「予習用」といった一言を後ろに足して使い回します。
指示は一度で完成させなくてかまいません。教材を作っていて同じ直しを2回頼んだら、それをカスタム指示に移す。これが指示の仕組み化です。
最初に1つだけ聞いて確かめる
指示を入れたら、教材を作る前に1つだけ質問してみます。たとえば「第2回で受講生に伝えることを3つに絞り、それぞれどのソースに書かれているかも示してください」と聞きます。
口調やレベルがそろっているか。引用が付いているか。引用のない答えがあれば、それは資料にない一般論かもしれません。ここで一度確かめておくと、あとから作る教材の手戻りが大きく減ります。
まとめ
- 教材づくりの時間の大半は、探す・読み返す・並べ替える・形を変えるという「整理し直す」作業。ここをGemini Notebook(旧NotebookLM)に任せる
- Gemini Notebookは入れた資料に基づいて答え、引用で出どころを示す。それでも誤りは入るので、確かめてから配る
- 人がやる3つは、何を教えるかを決める・どの順で教えるかを決める・できたものを確かめる
- 講座ごとにノートブックを1つ作り、ソースを回ごとに整え、カスタム指示で口調とレベルを先に決める
次の一歩として、まずは手元にある講座の資料を全部書き出してみてください。録音、スライド、原稿、メモ。思っている以上に、講座1本分の材料がすでにそろっているはずです。


