講座やセミナーの冒頭で、自分の実績をどこまで話すか。これで迷う方はとても多いです。話さなければ「この人から学んで大丈夫かな」と思われる。でも、話しすぎると自慢に聞こえて、かえって引かれてしまう。
その結果、実績にはほとんど触れずに本題に入るか、反対に、プロフィールに経歴や数字をびっしり並べるか。どちらかに振り切ってしまうことが多いんですよね。
結論から言うと、信頼される人は「私はすごい」とは言っていません。事実を、話の流れの中にさりげなく置き、その事実に証拠を添え、見る人自身に「この人なら大丈夫そうだ」と判断してもらっています。実績の量ではなく、伝え方の順番と置き場所で、受け取られ方は大きく変わります。
この記事では、人が買うと決めるときの心の順番、自慢に聞こえない5つの伝え方、実績がまだ少ない人の考え方、そして信頼を落とす見せ方を解説します。
人は気持ちで決めて、理由をあとから探す
まず、人が何かを買うと決めるときの心の動きを押さえておきます。
多くの場合、人は最初に気持ちで「いいな」「この人から学びたい」と感じます。そのあとで、「なぜこれを選ぶのか」という理由を探して、自分を納得させようとします。気持ちが先で、理由があとです。
ここで売る側がやるべきことは、その「理由」を、正直な事実として用意しておくことです。
| 買う人が自分に言い聞かせる理由 | 用意しておく事実 |
|---|---|
| この人は、実際に結果を出している | 具体的な数字と、その証拠 |
| この人は、感じのいい人だ | 丁寧な言葉づかい、感謝の伝え方 |
| この人の言うことは、筋が通っている | 最初から最後までぶれない主張 |
| 自分と同じような人が、選んでいる | お客様の声、選んだ人の変化 |
つまり、信頼を作るとは、相手をうまく説得することではありません。相手が自分で「選んでよかった」と思えるための材料を、先にそろえておくことです。
「私はすごい」が逆効果になる理由
人は、「これから売り込まれる」と感じた瞬間に、心の中で身構えます。自分の口から「私は実力があります」「たくさんの人を成功させてきました」と言うと、まさにこの身構えを呼び起こしてしまいます。
言っていることが事実でも、同じです。自分で自分を評価する言葉は、相手からは確かめようがありません。確かめようのないことを強く言われるほど、人は疑いたくなります。
だから、評価は相手に任せて、こちらは事実だけを渡す。 これが、自慢に聞こえずに信頼される伝え方の土台です。
自慢に聞こえない5つの伝え方
では、事実をどう渡せばいいのか。私が意識しているのは、次の5つです。
- 数字は、話の流れの中に置く
- 数字には、証拠を添える
- 丁寧さと感謝で、人柄を伝える
- 一本の主張を、切り口を変えてくり返す
- 選んだ人の姿を見せる
1. 数字は、話の流れの中に置く
実績を「自己紹介のコーナー」でまとめて話すと、どうしても自慢に聞こえます。そうではなく、本題の説明の中で、例として自然に出てくるようにします。
たとえば私は、個別相談の進め方を説明するときに、「この順番で面談をしたとき、成約率が92%(25人中23人)になったことがあります。話術を磨いたわけではなく、答える前に聞くという順番を守っただけです」と話します。
聞いている人の関心は、あくまで「面談の順番」にあります。その流れの中で数字が出てくるので、実績を誇っているようには聞こえません。それでいて、「この人の言う順番は、実際に結果が出ているんだな」という印象はしっかり残ります。
もう一つのコツは、数字を丸めないことです。「たくさんの人が」「かなりの成約率で」ではなく、「25人中23人」と具体的に言う。細かい数字ほど、作り話ではない手触りが出ます。
2. 数字には、証拠を添える
具体的な数字を出したら、それが本当であることを示す材料を添えます。お客様の声、お客様との実際のやり取り、管理画面の記録などです。
特に強いのは、お客様本人が自分の言葉で語った声です。私のお客様では、起業初期の女性向けにコンサルをしている上田さんが、コンサルを始めて約1か月で売上ベース約360万円になったことを、インタビューで話してくれています。私が言うより、本人が話す方が何倍も伝わります。
3. 丁寧さと感謝で、人柄を伝える
人は、知識がある人からではなく、「この人から学びたい」と思える人から買います。そのために一番効くのは、特別な技術ではなく、あいさつと感謝を丁寧に伝えることです。
- あいさつを雑にしない。画面の向こうの一人に話しかけるつもりで言う
- 感想や質問をくれた人には、具体的にお礼を言う。「前回、こんな質問をいただきました」と紹介する
- 教える立場だからといって、偉そうな言い方をしない
3つ目は、意外と自分では気づけません。教える側に立つと、無意識に言葉が強くなったり、上から目線になったりしがちです。一度、自分の話を録音して聞き直してみると、驚くほど印象が違うことがあります。
ちなみに、方言やなまりを気にする方もいますが、聞き取りにくくなければ無理に直す必要はありません。かえって親しみやすさにつながることもあります。
4. 一本の主張を、切り口を変えてくり返す
言うことが回によって変わる人は、信頼されません。反対に、どの話をしても同じ一本の主張に戻ってくる人は、「筋が通っている」と感じてもらえます。
一本の主張は、見込み客の多くに共通する悩みに答えるひと言で決めます。私の場合は、「少人数でも、正しい順番で設計すれば売れる」です。これを、集客の話でも、商品づくりの話でも、面談の話でも、切り口を変えてくり返し伝えます。
そして、主張を一方的に言い切るのではなく、ときどき問いかけの形にします。「もし、今の人数のままで売上が作れるとしたら、試してみたくありませんか」。相手が心の中で「それなら試したい」とうなずけば、その小さな同意の積み重ねが、最後の案内を受け入れやすくします。
ただし、これは相手を誘導する技ではありません。相手が本当にそう思えることだけを問いかける。うなずけない人には、無理にうなずかせない。ここを外すと、ただの押し売りになります。
5. 選んだ人の姿を見せる
人は、自分一人で決めることに不安を感じます。「自分と同じような人が、すでに選んでいる」と分かると、その不安が和らぎます。
選んだ人の姿は、2つの面から見せられます。
- 量:どれくらいの人が参加しているか、どれくらいの感想が届いているか
- 質:どんな人が選んでいるか、その人がどう変わったか
始めたばかりで人数が少ないうちは、量ではなく質で見せます。一人のお客様が、どんな状態から、どう変わったのかを具体的に紹介する。数より、その一人の変化の方が、見込み客の心に残ることも多いです。
5つの伝え方を、場面ごとに使い分ける
5つを毎回すべて入れる必要はありません。見込み客との距離によって、効くものが変わります。
| 場面 | 相手の状態 | 特に効く伝え方 |
|---|---|---|
| SNSやブログの発信 | まだあなたを知らない | 1. 話の流れの中の数字、4. 一本の主張 |
| 無料セミナーや動画 | 興味はあるが、様子を見ている | 3. 丁寧さと感謝、5. 選んだ人の姿 |
| 個別面談の前後 | 申し込むかを考えている | 2. 数字の証拠、5. 選んだ人の変化 |
発信の段階で証拠を並べすぎると、まだ関心の薄い人には重たく感じられます。反対に、面談の直前に人柄の話ばかりしても、最後の判断材料が足りません。
相手が今どこにいて、何を確かめたいのか。それに合わせて出す事実を選ぶと、同じ実績でも無理なく届くようになります。面談の場での伝え方は、売り込まずに選ばれるカウンセリングセールスの10ステップで詳しく解説しています。
実績がまだ少ない人は、どうすればいいか
ここまで読んで、「そもそも見せられる実績がない」と感じた方もいると思います。でも、実績がないことと、信頼されないことは同じではありません。
たとえば、次のような事実は、実績が少ない段階でも伝えられます。
- あなた自身が、その悩みをどう乗り越えてきたか
- これまでの仕事で、どんな人を何年くらい支えてきたか
- 今、どんな人と一緒に取り組んでいて、その人がどう変わり始めているか
特に3つ目は、これから実績を作る一番の近道です。少人数でもいいので、まず誰か一人と一緒に取り組み、その過程を正直に見せる。私が少人数で始めるチャレンジ企画を勧めているのも、このためです。考え方は集客3名でも売上は作れますで詳しく書いています。
信頼を落とす4つの見せ方
最後に、やってはいけない見せ方も挙げておきます。どれも、短い間は効いたように見えて、あとで信頼を大きく落とします。
- 数字を盛る:一度でも「話が大きすぎる」と感じられると、ほかの本当の話まで疑われます
- 曖昧な大きい数字を使う:「数千人を指導」「億単位の売上」のような丸めた数字は、確かめようがなく、かえって怪しく見えます
- 借り物の権威に頼る:有名な人と写真を撮った、という程度のつながりを強調すると、「中身がないから飾っている」と受け取られます
- お客様の声を作る:言っていないことを書き足したり、架空の声を載せたりするのは、信頼以前の問題です
信頼は、一つひとつの事実を正直に積み重ねた分だけ育ちます。見せ方の工夫は、その事実を相手に届きやすくするためのもので、事実の代わりにはなりません。信頼を作るための日々の発信については、売り込まずに信頼を作る3つの教育も参考にしてください。
まとめ
- 人は気持ちで決めて、理由をあとから探す。売る側は、その理由を正直な事実として用意しておく
- 「私はすごい」は相手を身構えさせる。評価は相手に任せ、こちらは事実だけを渡す
- 数字は話の流れの中に置き、丸めずに具体的に言い、証拠を添える
- 丁寧さと感謝で人柄を伝え、一本の主張を切り口を変えてくり返す
- 実績が少ないうちは、選んだ一人の変化を具体的に見せる
まずは、あなたが伝えられる事実を3つ書き出し、それぞれを「どの話の流れの中で出すか」を決めてみてください。自己紹介のコーナーから外すだけで、同じ実績の聞こえ方が変わります。


