会員制の値段を決めるとき、多くの方がまず「月額いくらにするか」から考えます。会員制といえば月額、というイメージが強いからですよね。
ところが、月額だけで始めると、こんな悩みが出てきます。入会が多い月と少ない月で売上が大きく変わる。解約が重なった月は、来月の見通しが立たない。値段を上げたいけれど、会員が離れるのが怖くて動けない。
結論から言うと、会員制の値段は「いくらにするか」の前に、「どんな形で払ってもらうか」を選ぶところから考えます。 月額のほかにも、年額、初期費用つき、買い切りなど、いくつかの形があり、それぞれ向いている会員制が違います。そして、どの形を選んでも、値段に納得してもらうには「入会するとどこまで進めるのか」を示すことが欠かせません。
この記事では、課金の形ごとの長所と注意点、初期メンバー価格の考え方、市場による価格の上げやすさの違い、値段の理由の示し方を解説します。無料お試しや少額お試しといった入口の作り方は、会員制の3つの入口と価格の決め方で詳しく書いているので、ここでは課金の形そのものに絞ります。
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月額だけだと、売上の波に振り回されやすい
月額は、会員制で一番よく使われる形です。一度の支払いが小さいので、申し込む側は「まずは1か月だけ」と気軽に入れます。
その一方で、月額には弱いところもあります。会員は毎月、「来月も続けるか」を判断することになります。仕事が忙しくなった、少し中だるみした。そうしたちょっとしたきっかけで、解約が起きやすいのです。
月額だけで売っていると、売上はその月の入会と解約の差で決まります。入会が増えた月は良くても、解約が重なれば一気に減る。この波に合わせて、主催者の気持ちも上下します。売上が減った月は、つい募集や値引きに走りたくなり、会員を支えることに使う時間が削られていきます。
ここで大事なのは、月額が悪いわけではない、ということです。課金の形を一つに決めつけず、会員制の中身や会員の続け方に合わせて組み合わせると、波はかなり穏やかになります。
課金の6つの形と、それぞれの長所と注意点
会員制で使える課金の形は、大きく6つあります。
| 形 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 月額 | 入会しやすい。値段の見直しもしやすい | 毎月、続けるかを判断されるので解約が起きやすい |
| 年額 | 前払いで資金の見通しが立つ。途中で辞める人が減る | 一度に払う額が大きく、入会をためらわれやすい |
| 月額と年額の併用 | 会員が自分に合う払い方を選べる | 年額を選ぶ理由を用意する必要がある |
| 初期費用+月額 | 入会直後にかかる手間や費用をまかなえる | 入会のハードルが上がり、手続きの質問も増える |
| 買い切り | 一度の支払いで済むので売りやすい | ずっと支え続ける約束になりやすい |
| お試しつき | 入会のためらいを減らせる | 続けるつもりのない人も入りやすく、対応が増える |
月額と年額の併用
個人の会員制で、まず検討したいのがこの形です。気軽に試したい人は月額、長く続けると決めている人は年額、と会員が選べます。年額を選んでもらうには、月額より少し割安にする、毎月の支払いの手間がない、といった理由を添えます。
年額には一つ、気をつけたいことがあります。更新のとき、会員は「1年分の額」と「最近の自分の手ごたえ」を比べがちだということです。ここ1か月あまり進んでいないと感じていると、1年分の額が急に重く見えます。年額を続けてもらうには、1年でどれだけ進んだかを会員自身が思い出せる仕組みが必要です。これは後で書く「成長の道筋」が役に立ちます。
また、年額で入った人が途中で辞めたいときにどうするか(返金するか、期間の終わりまで使えるようにするか)は、始める前に決めて、申し込みの前に伝えておきましょう。
初期費用+月額
入会直後に、最初の個別の面談をする、教材や道具を送るなど、新しい会員一人ひとりに手間や費用がかかる場合に合う形です。最初にまとまった額をいただくことで、主催者が初月から無理をせずに済みます。
ただし、入会のハードルは確実に上がります。「すぐ辞めたら初期費用は戻るのか」「一度辞めて戻るときは、また払うのか」といった質問も増えます。そして、初期費用を「一度払ったから辞めにくい」と感じさせる道具として使うのはおすすめしません。会員に続けてもらう理由は、中身と支えで作るものです。
買い切り
一度の支払いでずっと使える形です。売りやすい反面、実際には「講座」に近い売り方になります。会員制は、続けて払ってもらいながら、続けて中身や支えを届ける仕組みだからです。
買い切りで「ずっと質問に答えます」「ずっと新しい中身を足します」と約束すると、会員が増えるほど主催者の負担が積み上がり、その費用をまかなうために新しい人を集め続けることになります。買い切りにするなら、届けるものの範囲をはっきり決め、続けて届けられることだけを約束してください。
初期メンバー価格は「守れる場合だけ」
会員制を始めるとき、「最初に入ってくれた人は、ずっと今の価格のまま」という約束をつけることがあります。これを、ここでは初期メンバー価格と呼びます。
初期メンバー価格には、まだ実績の少ない時期に入ってくれた人への感謝を形にできる、という良さがあります。最初の会員と一緒に会員制を育てていく、という姿勢も伝わります。
ただし、「ずっと」は重い約束です。将来、中身を増やして値段を上げたとき、運営の費用が増えたとき、それでも最初の会員の価格を守り続けられるでしょうか。運営を続けるかぎり守れると言える場合だけ、この約束をつけてください。 守れるか分からないなら、約束しないほうが誠実です。
守り切る自信がないときは、「先行して入った方は、最初の一定期間はこの価格です」のように、期間をはっきり示す方法もあります。どちらにしても、あとから条件を変えないことが前提です。
また、「この価格を手放したくないから辞められない」という気持ちを利用して解約を減らそう、という使い方はおすすめしません。初期メンバー価格は、会員を縛るためではなく、最初に信じてくれた人に応えるためのものです。未完成のうちに最初の会員を募る進め方は、作る前に初期メンバーを募る先行募集の進め方で解説しています。
市場によって、価格の上げやすさは違う
値段の高さは、主催者の努力だけでは決まりません。どんな市場で会員制を開くかによって、上げやすさに違いがあります。
| 上げやすい市場 | 上げにくい市場 |
|---|---|
| 仕事の成果に直結するもの(売上・業務の効率など) | 趣味や楽しみのためのもの |
| 会員の代わりに作業を引き受けるもの | 成果が数字で見えにくいもの(気持ち・考え方・体の内側の変化など) |
仕事の成果に直結する会員制は、会員が「払った分を取り戻せる」と見込みやすいので、高めの値段にも納得してもらいやすくなります。会員の代わりに作業を引き受ける会員制も、会員の時間と手間を大きく減らすので、高めの値段が通りやすい形です。
一方で、趣味の会員制や、成果が数字で見えにくい会員制は、払った分の見返りを感じにくいため、値段を上げにくい傾向があります。
たとえば、刺しゅうの楽しみ方を教える会員制を開く人と、ひとりで店を営む人のために経理の整理を代わりに引き受ける会員制を開く人がいたとします。どちらも丁寧に中身を作っていても、同じ値段の考え方は通用しません。前者は「続けると、どんな作品が作れるようになるか」を具体的に見せることで、後者は「どれだけの手間から解放されるか」を見せることで、値段の理由を伝えることになります。
上げにくい市場だから会員制をやめたほうがいい、ということではありません。上げにくい市場ほど、次に書く「変化を見せる工夫」が大切になる、ということです。
値段の理由は「成長の道筋」で示す
値段に納得してもらえないとき、原因は値段そのものより、「入会すると、自分がどう変わるのか」が見えていないことにあります。
ここで役に立つのが、会員の今の状態からなりたい状態までを段階に分けた「成長の道筋」です。道筋があれば、次のことを具体的に示せます。
- 入会したとき、会員はどの段階から始めるのか
- 続けていくと、どの段階まで進めるのか
- 各段階を越えたとき、会員の毎日の何が変わっているのか
ポイントは、変化を具体的な場面で描くことです。「人生が豊かになります」「理想の自分になれます」のような言葉では、相手は自分の未来を思い浮かべられません。「月の初めに、自分で予算を決められるようになる」「仕上がった作品を人に贈れるようになる」のように、相手がその場面を思い浮かべられる言葉で伝えます。
道筋は、入会のときだけでなく、続けてもらうときにも効きます。成果が数字で見えにくい会員制でも、「入会したときはこの段階だったのが、今はここまで来ている」と見せられれば、会員は払った分の手ごたえを感じられます。年額の更新の前に、それまでの歩みを振り返る機会を作るのも良い方法です。道筋の作り方は、段階・到達点・やることで作る成長の道筋で詳しく書いています。
相場の安さにとらわれない
最後に、値段を決めるときに陥りやすい落とし穴です。それは、「この分野の相場は安いから」と、自分の会員制まで安くしてしまうことです。
安すぎる値段には、見えにくい問題があります。会員が増えても手元に残るお金が少ないので、主催者が会員を支えることに十分な時間をかけられません。すると、主催者自身もどこか「この値段なら、このくらいでいいか」という気持ちになり、中身や支えが薄くなります。安くしたつもりが、会員にとっても良くない結果になるのです。
値段に迷ったら、月額を1日あたりに直して考えてみてください。1日あたりに直すと、会員が受け取っている支えや変化に比べて、その値段が本当に高すぎるのかを冷静に見直せます。
そして、値段は一度決めたら終わりではありません。中身や支えが良くなったら、それに合わせて見直します。いくつかの払い方をどう並べて見せるかは、選ばれるオファー一覧表の作り方が参考になるはずです。長く続けてもらうことで売上が育つ考え方は、LTVがビジネスの土台になる理由で解説しています。LTVは、一人のお客様が付き合いを続けてくれる間に生まれる売上の合計のことです。
まとめ
- 月額だけで売ると、毎月の入会と解約で売上が揺れやすい。課金の形は組み合わせて考える
- 月額・年額・併用・初期費用つき・買い切り・お試しつきには、それぞれ長所と注意点がある。個人の会員制は、まず月額と年額の併用を検討する
- 初期費用や初期メンバー価格を、会員を辞めにくくする道具として使わない。初期メンバー価格は、運営を続けるかぎり守れる場合だけ約束する
- 仕事の成果に直結するもの・代わりに作業を引き受けるものは値段を上げやすく、趣味や成果が見えにくいものは上げにくい
- 値段の理由は、成長の道筋で「どこからどこまで進めるか」を具体的な場面で示す。相場の安さにとらわれない
まずは、あなたの会員制の会員が「どのくらいの期間、続けるつもりで入ってくるのか」を考えてみてください。短く試したい人が多いのか、長く腰を据えたい人が多いのか。その答えが、課金の形を選ぶ一番の手がかりになります。
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