講座の動画は丁寧に作った。受講者からも「分かりやすかったです」「なるほどと思いました」と感想が届く。それなのに、しばらくして様子を聞いてみると、実際に何かをやってみた人はほとんどいない。
分かりやすいと言ってもらえているのに、成果が出ない。講座を作った方にとっては、もどかしい状態ですよね。
結論から言うと、受講者が動かないのは、説明が足りないからではありません。レッスンが「見て理解する」ところで終わっていて、「やってみる」ための仕掛けが入っていないからです。 人は教わっただけでは身につきません。教わったことを実際にやってみて、はじめて自分のものになります。
この記事では、自分のペースで学ぶ講座の1レッスンを組み立てる7つの決まりと、レッスンごとに置く4種類の課題、そして早めに小さな成果を渡す工夫を解説します。
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この記事の続きとして、お客様の「今」と「理想」から約束を決め、章立て・台本・教材までをAIと作る手順をまとめました。
「なるほど」で終わるレッスンが成果につながらない理由
自分のペースで学ぶ講座には、決まった時間も、隣で声をかけてくれる人もいません。続けるかどうかは、すべて受講者に任されています。
この形の講座で、受講者が止まる理由は大きく3つあります。
- 見終わった直後は分かった気になるが、何をすればいいかが決まっていない
- 情報が多すぎて、どこが大事なのか分からなくなる
- 何本か見ても自分が前に進んだ実感がなく、続ける理由が薄れていく
どれも、受講者の意欲の問題ではありません。レッスンの組み立て方の問題です。見る・分かる・やってみる・できた、という流れが1本のレッスンの中に入っていれば、受講者は自然と次に進めます。
その流れを作るのが、次の7つの決まりです。
1レッスンを組み立てる7つの決まり
まず、7つの決まりを一覧にしておきます。
| # | 決まり | 受講者にとっての意味 |
|---|---|---|
| 1 | 何を学ぶか分かる名前をつける | 見る前に、何が手に入るのかが分かる |
| 2 | 考え方に覚えやすい呼び名をつける | あとで思い出し、使いやすくなる |
| 3 | 辞書のように詰め込まない | 大事なところが埋もれない |
| 4 | 手を引くように順を追う | 次に何をすればいいかで迷わない |
| 5 | 毎回課題を出す | 見て終わりにならず、やってみる場面ができる |
| 6 | なぜここにいるのかを伝える | 途中で続ける理由を思い出せる |
| 7 | 早めに成果を見せる | 「自分にもできる」と感じて勢いがつく |
1〜4は、迷わず、飽きずに見てもらうための決まりです。5は、見たことを行動に変えるための決まり。6と7は、最後まで続けてもらうための決まりです。順に見ていきます。
決まり1:何を学ぶか分かる名前をつける
レッスンの名前は、詩的な言い回しより、何が分かるのかが一目で伝わるものにします。「第3回 お金の流れ」より「第3回 毎月なんとなく出ていくお金を見つける」のほうが、受講者は見る前から目的を持てます。
決まり2:考え方に覚えやすい呼び名をつける
講座の中で何度も使う考え方には、短い呼び名をつけておきます。呼び名があると、受講者は途中でつまずいたときに「ここであの考え方を使えばいいんだ」と思い出しやすくなります。講座全体の名前づけまで考えるのは別の話なので、ここではレッスンの中で使う言葉を短くそろえる、くらいで十分です。
決まり3:辞書のように詰め込まない
知っていることを全部入れたくなりますが、情報を詰め込んだレッスンは、辞書と同じで最後まで読まれません。1本のレッスンで伝えることは1つに絞り、説明のあとには具体的な例やたとえ話を添えます。あなた自身の体験を話してもいいですし、「たとえば、こういう人がいたとします」と作った例でもかまいません。受講者が場面を思い浮かべられると、理解がぐっと深まります。
決まり4:手を引くように順を追う
情報を渡して「あとは考えてください」では、初めての分野を学ぶ人は動けません。今どこにいて、次に何をするのかを、一歩ずつ示します。手順を番号つきで見せる、各レッスンの最後に「次のレッスンでやること」を一言添える、といった小さな工夫で十分です。
動画そのものを最後まで見てもらう工夫は、動画が途中で離脱される理由と7つの原則も参考になるはずです。
決まり5:毎回課題を出す(4種類の課題)
7つの中で、成果にいちばん直結するのが5つ目の「毎回課題を出す」です。理想は、すべてのレッスンに、受講者がやってみることを1つ置くことです。
課題には、大きく4つの種類があります。家計の見直しを教える講座を作っている人がいたとして、それぞれの例を挙げてみます。
| 種類 | やること | 例 |
|---|---|---|
| 問いに答える | 質問に答えを書き出す | 毎月なんとなく出ていくお金を3つ書き出す |
| 手を動かす | 決められた作業を実際にやる | 先月の明細を1枚用意し、毎月必ず出ていく支出に印をつける |
| 読んでメモを取る | 見本や資料を読み、気づいたことを書く | 見本の家計表を見て、自分の家計と違う点をメモする |
| 仲間とやりとりする | 受講者どうしの場に書き込み、反応し合う | 受講者の交流の場に「今週見直した支出」を1つ投稿する |
4種類を全部使う必要はありません。レッスンの内容に合うものを1つ選べば十分です。考え方を教えるレッスンなら「問いに答える」、操作や作業を教えるレッスンなら「手を動かす」が合いやすいです。
課題は「思っているよりはっきり」伝える
課題を出すときに気をつけたいのは、伝え方です。「支出を見直してみましょう」のようなぼんやりした課題では、受講者は何から始めればいいか分からず止まってしまいます。
- 何を使うのか(明細を1枚)
- 何をするのか(毎月必ず出ていく支出に印をつける)
- どこまでやれば終わりか(印をつけ終わったら完了)
この3つが分かるように、作る側が思っている以上にはっきり伝えてください。終わりが分かる課題は、ぐっと取りかかりやすくなります。
課題を重くしすぎない
課題を毎回出すと決めると、今度は一つひとつを重くしすぎてしまう方がいます。毎回のレッスンに長い記述や何時間もかかる作業を求めると、受講者は課題がたまっていくことに疲れ、レッスンそのものを開かなくなります。
目安は、レッスンを見終えたその場で取りかかれる大きさです。大きな作業が必要なときは、1つのレッスンで全部をやらせず、「今日は明細を用意するところまで」「次は印をつけるところまで」と、何回かに分けて刻みます。一つ終えるたびに小さな達成感があり、それが次のレッスンを開く力になります。
課題を出したあと、受講者の提出物にどう返すかも大事です。返し方は次の一歩に進めるフィードバックの5つのポイントで解説しています。
決まり6・7:理由を思い出してもらい、早めに成果を見せる
残りの2つは、最後まで続けてもらうための決まりです。
決まり6:なぜここにいるのかを伝える
受講者は、講座を始めた日の気持ちを、だんだん忘れていきます。忘れると、続ける理由が薄れ、ちょっとした忙しさで止まってしまいます。
そこで、講座の最初と、難しい章に入る前に、「この講座で何を手に入れたくて始めたのか」を思い出してもらう場面を入れます。難しいレッスンの前には、「ここは少し大変ですが、越えると〇〇ができるようになります」と先に伝えておくと、受講者は身構えずに進めます。
決まり7:早めに成果を見せる
7つ目は、講座の早い段階で、受講者に「できた」という手ごたえを渡すことです。
そのために、最初の課題はあえて簡単にします。家計の講座なら、最初の課題は「先月の明細を1枚用意するだけ」でもかまいません。誰でもできることから始めると、ほぼ全員が最初の課題を終えられます。失敗からではなく、小さな成功から講座を始めることが、続ける勢いになります。
「簡単すぎて意味がないのでは」と思うかもしれません。けれど、最初の課題の目的は、何かを身につけることではなく、「この講座は自分にもできる」と感じてもらうことです。本格的な課題は、その勢いがついてから出せば十分です。
同じ内容を、書き込める教材で別の形でも渡す
7つの決まりに加えて、もう一つ効果のある工夫があります。動画で伝えた内容を、書き込める教材で別の形でも渡すことです。
同じ内容でも、動画で見るのと、紙に書き込みながら考えるのとでは、受け取り方が変わります。動画では「分かったつもり」だったことが、書き込もうとした瞬間に「あれ、ここはどうするんだっけ」と気づける。これが、書き込める教材の良さです。
書き込める教材は、立派なデザインでなくてかまいません。作るときは、次の2つの形を使い分けます。
- 考え方を教えるレッスン:穴埋めの欄や、問いに答える欄を用意し、受講者に自分の言葉で書いてもらう
- 作業を教えるレッスン:やることを番号つきで並べ、終わったら印をつけられるようにする
どちらも、動画の中で出した課題を、もう一度手元で確かめられるようにするためのものです。新しい内容を足す必要はありません。
書きやすい教材の作り方や、提出してもらう工夫は、書きやすいワークシートと提出率を上げる7つの工夫で詳しく書いています。講座全体の章立てを、受講者がぶつかる壁から決める方法は、同じシリーズの「今の姿」と「なりたい姿」の間にある壁から章立てする5つの手順をあわせて読んでみてください。
まとめ
- 受講者が動かないのは説明不足ではなく、レッスンが「見て理解する」で終わっているから
- 1レッスンは7つの決まり(分かる名前・覚えやすい呼び名・詰め込まない・順を追う・毎回課題・理由を伝える・早めの成果)で組み立てる
- 課題は4種類(問いに答える・手を動かす・読んでメモを取る・仲間とやりとりする)から、内容に合うものを1つ選ぶ
- 課題は「何を使い、何をし、どこで終わりか」がはっきり分かるように伝える。最初の課題はあえて簡単にする
- 動画の内容を、書き込める教材で別の形でも渡す
まずは、いま作っている講座の最初の3つのレッスンに、それぞれ1つずつ課題を足してみてください。そして1つ目の課題だけは、誰でも数分で終わるくらい簡単なものにしてみてください。
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