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反論に言い返す人ほど、成約は遠のきます|申し込みを止める5つの迷いと、一緒に解く方法

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面談の終盤、相手が「やってみたい気持ちはあるんですけど……」と言いよどむ。ここで、つい「でも、ここで決めないと変わりませんよ」と返してしまう。言っている中身は正しいはずなのに、相手の表情はどんどん固くなっていく。

営業の本には「反論処理」という言葉がよく出てきます。お客様の断り文句に、うまく切り返す方法です。けれども、実際に切り返すと、相手は心の扉を閉めます。

結論から言うと、お客様の迷いは、言い負かすものではなく、一緒に解くものです。そして迷いの種類は、ほとんどの場合5つしかありません。迷いを一つ残らず出してもらい、相手と同じ側に座って一つずつ眺めていけば、最後には「やりたい」という気持ちだけが残ります。迷いが解けないと分かったら、それも一つの答えです。

この記事では、申し込みを止める5つの迷い、迷いを扱う順番、迷いをはっきりさせる質問、そして反論せずに一緒に解くための言葉の選び方をお伝えします。

言い返した瞬間、あなたは相手の「敵」になる

相手が「やりたいけど、金額が高くて決められない」と言ったとします。そこで「確かに高いですよね。でも、ここで決めないと何も変わりませんよ」と返したら、どうなるでしょうか。

相手の耳に残るのは「でも」のあとの言葉です。「私の気持ちは分かってもらえなかった」「説得されようとしている」と感じた瞬間、相手は自分の気持ちを守るために、さらに迷いを強く言い始めます。

この状態は、売り手とお客様がテーブルをはさんで向かい合い、迷いをぶつけ合っている形です。お客様が迷いを出し、売り手が打ち返す。打ち返すほど、お客様は守りを固めます。

私が目指しているのは、売り手とお客様が同じ側に座り、テーブルの向こうに置いた「迷い」を一緒に眺める形です。

  • 向かい合う形:売り手 対 お客様。迷いをめぐって言い合いになる
  • 同じ側に座る形:売り手とお客様 対 迷い。どうすれば解けるかを一緒に考える

面談の終盤ほど、人は無意識に向かい合ってしまいます。「ここまで来たのに断られたくない」という気持ちが、言葉を硬くするからです。だからこそ、気持ちに頼らず、言葉の型で同じ側に座る必要があります。

申し込みを止める迷いは、5つしかない

私がこれまでの面談で聞いてきた迷いを振り返ると、次の5つに分けられます。並びは、私の経験上よく出てくる順です。

迷い よく出る言葉
お金 「予算的に厳しい」「思っていたより高い」
時間 「今は仕事が忙しい」「来年から始めたい」
家族への相談 「夫に相談しないと決められない」「親に聞いてみたい」
自分にできるか 「ほかの人はできても、私には無理かもしれない」「やり切れる自信がない」
ほかとの比較 「ほかのサービスも見てから決めたい」「今日は内容を知りたかっただけ」

まれに、この5つに入らない迷いもあります。業界の事情や家の方針のように、こちらではどうにもできない理由です。そういう場合は深追いせず、相手の事情を尊重して面談を終えます。無理に解こうとすると、お互いに消耗するだけです。

一人が抱える迷いは、多くても3つほど

私の経験上の目安ですが、一人のお客様が口にする迷いは、1つから3つほどです。迷いは互いにつながっていて、いちばん重い1つがほどけると、残りは本人の中で自然に軽くなっていきます。

たとえば、お金の迷いが解けた方が、自分から「時間は、まあ作ればいいので」と言い出すことがあります。だから、全部を同じ重さで扱うより、いちばん重い1つを見つけることが大切です。

迷いはすぐに答えず、全部並べてもらってから扱う

迷いを扱うときに、いちばん多い失敗があります。最初に出てきた迷いに、すぐ答えてしまうことです。

「金額が気になって」と言われた瞬間に、分割払いの説明を始めたとします。相手はひととおり聞いたあと、「それと、パソコンが苦手なので、自分にできるか不安で」と2つ目を出します。それにも答えると、今度は「家族にも話しておきたい」と3つ目が出てきます。売り手は追いかけ続ける形になり、相手は「次から次へと説得されている」と感じます。

そこで、迷いが1つ出たら、すぐには答えず「ほかにもありますか」と聞いて、全部出してもらいます。

相手:気持ちはあるんですが、金額が気になっていて。
あなた:金額が気になるんですね。ほかに気になっていることはありますか?
相手:あとは、パソコンが苦手なので、自分にできるかどうか。
あなた:ご自分にできるか、ですね。ほかには?
相手:家族にも一度話しておきたいです。
あなた:ご家族へのご相談ですね。ほかにはありますか?
相手:いえ、それくらいです。
あなた:整理すると、金額のこと、ご自分にできるかどうか、ご家族へのご相談、この3つですね。仮にこの3つが解消できたとしたら、始めたいというお気持ちはありますか?
相手:はい、それならやりたいです。
あなた:では、この3つをどうすれば解消できるか、一緒に考えさせていただけますか?

最後の2つの問いに、それぞれ役割があります。「この3つが解消できたら」で、迷いがこれで全部かを確かめます。「一緒に考えさせていただけますか」で、迷いを扱う許可をもらいます。

解く前に許可をもらうと、同じ話でも聞こえ方が変わる

許可をもらわずに解き始めると、どんなに丁寧に話しても、相手からは「一方的に説得されている」ように見えます。許可をもらってから解けば、同じ話が「一緒に考えてもらっている」に変わります。

もし「いえ、解消できてもやらないと思います」と返ってきたら、まだ出ていない迷いがあるか、そもそも必要としていないかのどちらかです。そのときは解き始めず、話を聞くところに戻ります。必要としていないと分かったら、「今回は見送る」という答えをそのまま受け取ってください。

迷いを扱うときの4つの姿勢

  1. まず聞く:答えを考えながら聞かない
  2. 評価しない:「お金がない」は、「この金額を払う価値が、まだはっきりしていない」という意味かもしれない、と受け取る
  3. 話がそれたら、やさしく戻す:仕事や家族への不満が始まったら、受け止めたうえで「その中で、今日いちばん気になっているのはどこでしょう」と本題に戻す
  4. 1つも残さない:迷いが1つでも残っていると、手続きの直前に手が止まる

「この人は本気じゃないな」と心の中で決めつけた瞬間、それは声や表情に出ます。迷いは、相手が真剣に考えている証拠だと受け止めてください。

ぼんやりした迷いをはっきりさせる4つの質問

「ほかにもありますか」と聞いても、「なんとなく不安で」としか言えない方もいます。そんなときは、次の4つの質問を使います。

  1. どうしてそう感じたのですか:迷いの中身をはっきりさせる質問。同じ「難しそう」でも、人によって理由はまったく違います
  2. よければ、もう少し詳しく教えていただけますか:一歩深く聞く質問。答えを急がせず、相手のペースで話してもらいます
  3. そう感じるのは自然なことだと思います。ちなみに、何がきっかけでそう思われたのですか:共感を挟んでから理由を聞く質問。いきなり「なぜ」と聞くと、責められているように聞こえることがあるからです
  4. 私なら、何とアドバイスすると思いますか:迷っている相手に、自分で答えを考えてもらう質問

たとえば、料理教室を主宰している方が「なんとなく、私には難しそうな気がして」と言ったとします。「どのあたりが難しそうだと感じましたか」と聞くと、「講座の中身は作れると思うけれど、オンラインで売るところがよく分からない」と返ってくる。さらに聞くと、「SNSもほとんどやっていないし、申し込みのページを作ったこともない」と分かる。

最初は「なんとなく難しそう」だった迷いが、「オンラインで売る部分の経験がない」というはっきりした迷いに変わりました。ここまで分かれば、プログラムのどの部分がその不安に答えるのかを、具体的に伝えられます。

「私なら何とアドバイスすると思いますか」の使いどころ

終盤、迷っている相手から「やったほうがいいですかね」と聞かれることがあります。ここで「やったほうがいいです」と答えると、相手は「売り手だからそう言うよね」と受け取り、かえって気持ちが引きます。

そこで、答えの代わりに「私なら、何とアドバイスすると思いますか」と問いで返します。すると相手は「やったほうがいい、と言うと思います。このまま続けても、たぶん1年後も同じだから」と、自分で理由を口にします。人は、他人に言われた理由より、自分の口から出た理由のほうを信じやすいものです。

ただし、この質問は迷いが全部出て、一つずつ一緒に考えたあとに使います。相手が「やめたほうがいいと言うと思います」と答えたら、その理由を真剣に聞いてください。そこに、まだ出ていない迷いがあります。答えを誘導するための質問ではなく、相手が自分の考えを整理するための質問です。

「でも」を消して、同じ側に座る言葉を選ぶ

同じ側に座るための、いちばん具体的な方法があります。逆の意味をつなぐ言葉を使わないことです。「でも」「しかし」「だって」「だけど」は、その前に言ったことを打ち消します。「確かに高いですよね。でも」と言うと、前半の共感が丸ごと取り消されます。

場面 使わない言葉 代わりに使う言葉
受け止める 確かに高いですよね。でも…… 高いと感じられたんですね
つなぐ しかし、ほかの方は…… その上で、一つお聞きしてもいいですか
返す だって、最初にやりたいって…… 最初に、やりたいとおっしゃっていましたよね
提案する だけど、このままだと…… どうすれば始められるか、一緒に考えてみませんか

「その上で」は、相手の気持ちを打ち消さずに、次の話に進める便利な言葉です。

やっかいなのは、逆の意味の言葉は口ぐせになっていて、自分では気づけない点です。面談を録音して「でも」が何回出たかを数える、身近な人に指摘してもらう、普段の会話から「その上で」に置き換える。普段使わなくなれば、面談でも自然に出なくなります。

相手の言葉を確かめるのは、追い込むためではない

迷いを解く途中で、相手が面談の中盤に語った言葉をもう一度確かめることがあります。「最初に、この先も同じ働き方は無理だと思う、とおっしゃっていましたよね。その気持ちは今も変わりありませんか」。本来の気持ちに立ち返ってもらうための確認です。

ここには大事な線引きがあります。「あなたはこう言いましたよね。だから申し込むべきです」と、言ったことを盾にして追い込むためではありません。気持ちが変わったと言われたら、何が変わったのかを聞きます。そこに新しい迷いがあります。

そして、この一言は、力まず、それまでと同じ調子で言ってください。語気が強くなったり身を乗り出したりすると、相手は圧を感じて黙ってしまいます。

練習:自分の「高い買い物」の迷いを書き出す

5つの迷いを、知識ではなく実感として身につける練習があります。紙とペンを用意して、次の手順でやってみてください。

  1. これまでで、いちばん高かった買い物か、いちばん迷った買い物を1つ思い出す(家、車、習い事、講座、引っ越しなど)
  2. 買う前に迷ったことを、思いつくだけ書き出す
  3. 書き出した迷いを、お金・時間・家族への相談・自分にできるか・ほかとの比較の5つに振り分ける
  4. 最後に何が決め手になって買ったのか、または買わなかったのかを書く

やってみると、ほとんどの迷いが5つのどれかに入ることに気づくはずです。そして決め手は、売り手の説得の上手さではなく、自分の中の迷いが一つずつ消えていったことだった、と思い出す方が多いと思います。

4つ目の「決め手」が、とても大切です。自分が迷いを越えたときに何が必要だったかが分かると、お客様に何が必要なのかも見えてきます。

迷いは面談の中だけでなく、販売ページの段階でも先回りして減らせます。そちらは最後の迷いを消す5つの材料で解説しています。

まとめ

  • 迷いに言い返すと、相手の敵になる。売り手とお客様が同じ側に座り、迷いを一緒に眺める
  • 申し込みを止める迷いは、お金・時間・家族への相談・自分にできるか・ほかとの比較の5つにほぼ収まる
  • 迷いはすぐに答えず、「ほかにもありますか」で全部出してもらい、許可をもらってから扱う。解けないと分かったら「見送る」を尊重する
  • ぼんやりした迷いは4つの質問ではっきりさせる。「でも」「しかし」は「その上で」に置き換える
  • 相手の言葉を確かめるのは、本来の気持ちを思い出してもらうため。追い込むためではない

迷いが出そろったら、次は種類に合った返し方でほどいていきます。具体的な返し方は最後の迷いをほどく6つの返し方と、決める場面の作り方で解説しています。まずは今日、自分の「高い買い物」の迷いを1つ書き出すところから始めてみてください。