朝から夜までパソコンに向かっている。休みの日も何かしら仕事をしている。それなのに、振り返ってみると、ビジネスが大きく前に進んだ実感がない。そんな状態に心当たりはありませんか。
真面目で働き者の人ほど、この状態に陥りやすいです。頼まれたことは引き受け、面白そうな話があれば参加し、できることは全部自分でやろうとする。一つひとつは良いことなのに、全体としては成果が出ない。
結論から言うと、忙しいのに成果が出ないのは、頑張りが足りないからではなく、やることが多すぎるからです。成果を出すには、やることを増やすより、「やらないこと」を決めるほうが近道になります。
この記事では、私が働き方を変えるきっかけになった書籍『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』の考え方と、手を広げすぎる3つの思い込み、そして個人ビジネスで「やらないこと」を決める4つの手順をお伝えします。
忙しいのに前に進まない、ある起業家の1年
私の知り合いに、とても真面目な働き者の起業家がいます。休みはほとんど取らず、早朝から深夜までパソコンに向かい、長い連休でも仕事をしない日がないくらい働いています。
彼は働くことが好きで、今の忙しさも苦痛ではないそうです。面白そうなビジネスや、大きく稼げそうな話を見つけると、どんどん情報を集めて参加し、ほとんどの作業を自分でやろうとします。
ところが、彼が振り返ったある1年は、こんな様子でした。
- 数か月かけて作った商品が、価格の競争に巻き込まれて、思ったほどの収益にならなかった
- 知り合いと半年かけて進めたプロジェクトが、方向性の違いで解散した
- 扱っていた商品が急に販売終了になり、その対応とお客様へのフォローに追われた
- 別のビジネスでは、運営会社の規約の変更や開発の遅れ、倒産で、思うように進まなかった
- 友人に頼まれた、お金にならない手伝いにも時間を取られた
毎日忙しく働いていたのに、ビジネスとしてはほとんど進んでいない1年でした。
彼にビジネスの才能がないわけではありません。過去には、しっかりと収入を伸ばしていた時期もあります。ただ、手を広げすぎて、自分が処理できる量をとっくに超えてしまい、すべてが中途半端になっていたのです。
私が「全部自分でやろうとして、新しいことにも手を出しすぎじゃない?」と言うと、彼は「わかってるんだけどね」と答えます。そして、いつの間にかまた、頼まれた仕事やその場限りの仕事を引き受けている。そんな彼に紹介したのが、この本でした。
エッセンシャル思考とは「より少なく、しかしより良く」
『エッセンシャル思考』は、私自身も人から紹介されて読んだ本です。ビジネスで大きな成果を出しながら、ゆとりのある毎日を送るために、とても大切な考え方が書かれています。
この本の考え方を一言でまとめると、「より少なく、しかしより良く」です。最小の労力で、最大の成果を出すための考え方と言いかえることもできます。
多くの人は、目の前のものごとのほとんどを「大事だ」と考えます。エッセンシャル思考では逆に、ほとんどのものごとは「なくてもいい」と考えます。本当に大事なものはごく少ない。だからこそ、その少ない大事なものを見極めて、それ以外をきっぱり手放す。こうすることで、限られた時間と力を一番大きな成果につながる場所に集められる、という考え方です。
私はこの考え方を学んでから、働き方を変えました。そして、それからは大きな成果も出せるようになり、時間の余裕も手にすることができました。だからこそ、この考え方は本当に大切だと感じています。
手を広げすぎる3つの思い込み
いつも忙しいのに成果が出ない人は、たくさんの作業を抱えながら、次の3つの思い込みを持っていることが多いです。本の内容をもとに、私なりの言葉で整理すると、こうなります。
| 思い込み | 置きかえる考え方 |
|---|---|
| 「やらなければいけない」 | やるかどうかは、自分で決める |
| 「どれも大事だ」 | 本当に大事なものは、ごく少ない |
| 「全部できる」 | できることは多くても、全部はやらない |
「やらなければいけない」と感じている仕事の多くは、実は自分で引き受けると決めた仕事です。自分で優先順位を決めないと、他の人の頼みごとや目先の用事に、時間を使われてしまいます。
また、何かを選ぶことは、別の何かを選ばないことでもあります。この「あちらを取れば、こちらが取れない」という関係からは、目をそらしても逃げられません。だから、選ぶ力を自分の手の中に持ち続けることが大切になります。
個人ビジネスで「やらないこと」を決める4つの手順
考え方が分かっても、実際に手放すのは簡単ではありません。個人ビジネスで「やらないこと」を決めるときは、次の4つの手順で進めてみてください。
手順1:抱えている仕事をすべて書き出す
まずは、今抱えている仕事、進めているプロジェクト、引き受けている頼まれごとを、すべて紙に書き出します。頭の中だけで考えていると、量の多さに気づけません。書き出すと、「こんなに抱えていたのか」と驚く方が多いです。
手順2:一番大きな成果につながる1つに印をつける
書き出したものの中から、「これが進めば、ビジネスが一番大きく前に進む」というものに1つだけ印をつけます。2つでも3つでもなく、1つです。迷ったら、「今の自分の売上の仕組みを育てるのはどれか」で考えます。
手順3:「迷うなら、やらない」で残りを仕分ける
残りの仕事を、「続ける」「人に任せる」「やめる」の3つに分けます。このとき、「絶対にやるべきだ」と言い切れないものは、やらない側に入れます。エッセンシャル思考では、はっきり「イエス」と言えないものは「ノー」と考えます。
手順4:集中せざるをえない状況を先に作る
最後に、印をつけた1つに集中できる状況を作ります。意志の力だけで集中しようとしても、新しい頼まれごとが来れば、また手を広げてしまいます。
- 午前中の決まった時間は、その1つの作業だけをすると決めてカレンダーに入れる
- 新しい誘いへの断り方を、先に言葉として決めておく
- 新しい話を引き受ける前に、今の仕事を1つやめると決めておく
集中するための方法は、「一点集中」の法則でも詳しく解説しています。
手放す候補になりやすい仕事
知り合いの起業家の1年を振り返ると、手放す候補になりやすい仕事には、共通点があります。自分の仕事を仕分けるときの参考にしてください。
- お金にも将来にもつながらない頼まれごと:断りにくいけれど、ずっと続くと本業の時間を削る
- その場限りの小さな収入の仕事:目の前の収入にはなるが、仕組みとして積み上がらない
- 他の会社の都合に大きく左右されるビジネス:規約の変更や販売終了で、努力がいっぺんに止まることがある
- 全部自分でやっている作業:自分でなくてもできる作業は、人に任せる候補になる
仕分けに迷ったときは、「この仕事を今日初めて頼まれたとしたら、引き受けるだろうか」と自分に聞いてみてください。すでに始めてしまった仕事は、それまでにかけた時間がもったいなくて、やめにくくなります。でも、初めて頼まれたつもりで考えると、続ける理由が本当にあるのかが見えやすくなります。
手放すものを決めると、最初は少し不安になるかもしれません。でも、そのぶん空いた時間と力が、一番大事な1つに集まります。ほかにも、必要ないものばかりに手を出さない考え方や、質の高い時間の使い方も参考にしてみてください。
まとめ
- 忙しいのに成果が出ないのは、頑張りが足りないからではなく、やることが多すぎるから
- エッセンシャル思考の中心は「より少なく、しかしより良く」。本当に大事なものはごく少ない
- 「やらなければ」「どれも大事」「全部できる」の3つの思い込みを、自分で選ぶ考え方に置きかえる
- 「全部書き出す→1つに印をつける→迷うならやらない→集中せざるをえない状況を作る」の4つの手順で、やらないことを決める
まずは今日、抱えている仕事をすべて紙に書き出して、一番大きな成果につながる1つに印をつけてみてください。残りをどうするかは、それから考えれば大丈夫です。


