会員制の中で、取り組みが止まってしまう会員がいる。主催者として何とかしたくて、「一緒に頑張りましょう」「少しずつでも続けてください」と声をかける。でも、励ましの言葉を送るほど、かえって反応が薄くなっていく。そんな経験はありませんか。
止まっている会員は、やる気がないわけではありません。入会したときは、変わりたいと思っていたはずです。それでも手が止まるのは、続けたくなる「仕組み」が会員制の中にないからです。
結論から言うと、会員に続けてもらうには、励ましの言葉より「進んでいる実感」と「一緒に進む仲間」を仕組みとして用意する方が効果があります。進み具合が目に見え、節目でお祝いされ、困ったときに助けてくれる人がいる。この状態を作れば、主催者が背中を押し続けなくても、会員は自分から続けてくれます。
この記事では、ゲーミフィケーションの考え方、進み具合を見える化する4つの仕掛け、仲間どうしで支え合う仕組み、仲間の場の育て方を順番に解説します。入会直後の迎え方については、退会を減らす最初の30日の設計にまとめています。
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励ましの言葉では、会員は続かない
なぜ励ましでは続かないのか。理由は2つあります。
1つ目は、励ましは「やる気」に頼る方法だからです。やる気は、その日の体調や忙しさで簡単に上下します。言葉で一時的に気持ちが上がっても、仕事が立て込んだ週には手が止まります。やる気が下がったときにも続けられる仕組みがなければ、同じことのくり返しになります。
2つ目は、止まっている人にとって「頑張って」は、責められているように聞こえやすいからです。本人も、進めなければいけないことは分かっています。そこに「頑張りましょう」と言われると、「頑張れていない自分」を突きつけられた気持ちになり、会員制のページを開くのがますますおっくうになります。
そもそも、買ったものを最後まで使い切る人は多くありません。教材を買ったまま開いていない、という経験は誰にでもあると思います。だから主催者が考えるべきなのは、「どう励ますか」ではなく「どうすれば自然と続く形になるか」です。
ゲーミフィケーションは「進んでいる実感」を作る仕掛け
そこで役に立つのが、ゲーミフィケーションという考え方です。ゲーミフィケーションとは、ゲームを楽しくしている仕掛けを、ゲーム以外の場面、たとえば学びや習慣づくりに取り入れることです。
ゲームが続くのは、次にやることがはっきりしていて、進んだ分だけ目に見える変化があり、達成すると誰かに認められるからです。この3つは、そのまま会員制にも当てはめられます。
- 次にやることがはっきりしている → 成長の道筋と、段階ごとのやることを示す
- 進んだ分だけ変化が見える → 記録をつけ、できるようになったことを本人に見せる
- 達成すると認められる → 節目でお祝いし、仲間の前で名前を挙げる
成長の道筋がまだない場合は、先に段階・到達点・やることで作る成長の道筋を作ってください。道筋がないままポイントやお祝いだけを足しても、何に向かって進んでいるのかが分からず、仕掛けが空回りします。
前提は、中身が役に立つこと
ひとつ大事な前提があります。ゲーミフィケーションは、役に立たない中身を無理に続けさせるための道具ではありません。面白いゲームがさらに夢中になれるように仕掛けがあるのと同じで、役に立つ中身を、もっと受け取ってもらうために使うものです。
また、ポイントや順位そのものが目的にならないように注意してください。順位表を作ると、上位の人は盛り上がりますが、後ろの人は「自分には無理だ」と感じて離れてしまうことがあります。比べる相手は、ほかの会員ではなく「入会したときの自分」にする方が、誰にとっても続けやすくなります。
進み具合を見える化する4つの仕掛け
具体的には、次の4つの仕掛けから始めるのがおすすめです。
| 仕掛け | やること | 会員が感じること |
|---|---|---|
| 進み具合の記録 | チェック表や記入欄で、終えたことに印をつけてもらう | ここまで進んだ |
| 節目のお祝い | 段階をひとつ終えたら、主催者や仲間が祝う | 認めてもらえた |
| 取り組む約束 | 最初に「最後まで取り組む」と自分で書いてもらう | 自分で決めたからやる |
| 達成の報告 | 節目ごとに、できたことを交流の場で共有してもらう | 仲間に見てもらえた |
進み具合の記録
いちばん手軽なのが、チェック表です。段階ごとのやることを一覧にして、終えたら印をつけてもらいます。空欄が埋まっていくのは、それだけで気持ちのいいものです。
ポイントは、最初のほうのやることを細かく分けておくことです。始めたばかりの人ほど手が止まりやすいので、小さな「できた」をいくつも重ねてもらい、勢いをつけてもらいます。
節目のお祝い
段階をひとつ終えた人には、主催者から一言お祝いを伝えます。オンラインの集まりの中で、節目を越えた人の名前を読み上げるのもいい方法です。社会的な立場のある大人でも、人前で認められるとうれしいものです。
お祝いの対象は、成果だけでなくてかまいません。集まりによく参加してくれる人、ほかの会員の質問に答えてくれた人など、場を支えてくれている行動も認めましょう。認められた行動は、ほかの会員にも広がっていきます。
取り組む約束
入会した最初に、「この会で最後まで取り組みます」と自分の言葉で書いてもらう方法もあります。人は、自分で決めて書いたことは守ろうとするものです。
ただし、これは本人が自分のために書くものです。守れなかった人を責める材料に使ってはいけません。止まった人には、約束を持ち出すのではなく、「どこで止まっていますか」と聞くところから始めてください。
達成の報告
節目を越えたら、交流の場で報告してもらいます。文章でも写真でもかまいません。仲間から「おめでとう」と返ってくる経験は、次の段階へ進む力になります。報告は、まだそこまで進んでいない会員にとっても「自分も次はあそこまで」という目印になります。
報告を募集の案内などで紹介したい場合は、必ず本人の了承をとってからにしてください。会員の場は、安心して報告できる場所であることが何より大切です。
仲間どうしで支え合う仕組み
進み具合が見えるようになったら、次は「一緒に進む人」を作ります。会員は、中身を求めて入会しますが、長く続ける理由は人とのつながりであることが多いからです。居心地のいい場所には自然と足が向きますし、足が向けば取り組む量も増えます。
相棒制度を作る
ひとりで取り組むより、相方がいる方がさぼりにくくなります。会員どうしでふたり組や少人数の組を作り、お互いの進み具合を報告し合ってもらう方法です。主催者が組み合わせを決めてもいいですし、交流の場で会員自身に相手を探してもらってもかまいません。
遅れている人を、仲間が助ける
相棒制度の本当の目的は、進みが遅れている人に、確実に手を差し伸べることです。主催者ひとりでは、全員の様子に目を配るのは難しい。でも、仲間どうしで気にかけ合う形があれば、主催者の目が届かないところで困っている人にも声が届きます。
ほかにも、新しく入った人に声をかける「迎え役」を古くからいる会員にお願いしたり、住んでいる地域や仕事が近い人どうしの小さなグループを作ったりする方法もあります。大きな場の中に小さな居場所があると、人は離れにくくなります。
主催者が全部を回さない
会員どうしの支え合いが生まれると、主催者の役割は「全部に答える人」から「場を整える人」に変わります。少人数で会員制を続けるうえで、これはとても大きな変化です。主催者がいなくても回る部分が増えるほど、会員制は仕組みとして安定します。
仲間の場を育てる3つの習慣
とはいえ、交流の場を作っただけでは、会話は生まれません。誰も投稿していない場所に、最初のひと言を書くのは勇気がいるからです。静かな場はさらに静かになる、という悪い流れを断つために、次の3つを習慣にしましょう。
1. 話しかけやすい投稿のきっかけを置く
「今週取り組んでいることは何ですか」「いまいちばん困っていることは何ですか」のように、誰でも答えやすい問いかけを投稿します。仕事や学びの話だけでなく、最近うれしかったこと、好きな食べ物のような気軽な話題も混ぜると、返事のハードルが下がります。ノウハウを流すだけの場より、会員どうしが言葉を交わせる場の方が、つながりは深まります。
2. 定期的な投稿でリズムを作る
「月曜は今週の目標、金曜はできたことの報告」のように、曜日ごとに決まった投稿を置くと、会員は場に顔を出す習慣がつきます。毎日たくさん投稿する必要はありません。決まったリズムで続けることの方が大切です。参加者に投稿を促す工夫は、参加率と宿題提出率を上げる17の投稿の考え方も応用できます。
3. アンケートで声を聞き、反映する
月に一度など、会員が抱えている悩みや、取り上げてほしいテーマをアンケートで聞きます。選択肢を並べるだけでなく、自由に書き足せる欄を必ず作ってください。
そして、集まった声を次の月の中身や集まりに反映し、「皆さんの声から、今月はこのテーマにしました」と伝えます。自分の声が形になったと感じた会員は、その場を「自分たちの場所」だと思えるようになります。アンケートの結果を翌月に共有すると、結果を楽しみに待ってもらえる効果もあります。
場のルールは最初に決めておく
あわせて、交流の場のルールを最初に書いて、いつでも見える場所に置いておきましょう。誰かを否定しない、勝手に自分の商品を宣伝しない、質問はひとつずつ、など。ルールは主催者の価値観を表すものでもあります。最初は少なめにして、場の様子を見ながら足していくくらいでちょうどいいです。
まずは1つ入れて、会員の反応を見る
ここまでいくつもの仕掛けを紹介しましたが、全部を一度に入れる必要はありません。むしろ、一度にたくさん入れると、主催者も会員も疲れてしまいます。1つ入れて、会員の反応を見て、うまくいったら次を足す。この順番で進めてください。
たとえば、家計の整え方を教える人がいたとします
例を出してみます。家計の見直し方を月額の会員制で教えている人がいたとします。入会した人の多くが、最初の数週間は熱心なのに、2か月目に入ると交流の場に顔を出さなくなるのが悩みでした。
この人は、まず「進み具合の記録」だけを入れることにします。家計の見直しを段階に分け、段階ごとのやることを一覧にしたチェック表を配りました。そして毎週金曜に「今週印がついた項目を1つ教えてください」と投稿するようにします。
しばらくすると、報告する人と、それに返事をする人が少しずつ増えていきます。そこで次に、段階を終えた人を月末の集まりで紹介する「節目のお祝い」を足しました。さらに、なかなか進まない人がいることに気づいたので、同じ段階にいる会員どうしの小さな組を作ります。
新しい教材は増やしていません。増やしたのは、進み具合が見える仕組みと、仲間と顔を合わせる機会だけです。それでも会員は、「ここに来ると自分が進んでいるのが分かる」と感じられるようになります。
1つ入れたら、記録を出す人の数、交流の場での反応、集まりへの参加などを見て、効いているかを確かめましょう。仕掛けの考え方は、ワークと宿題で人を動かすHOW設計とも共通しています。
まとめ
- 励ましはやる気に頼る方法で、止まっている人には責められているように聞こえやすい
- ゲーミフィケーションは、次にやること・進んだ分の変化・認められる場を作る考え方。中身が役に立つことが前提
- 進み具合を見せる仕掛けは、記録・節目のお祝い・取り組む約束・達成の報告の4つ
- 相棒制度や迎え役で、遅れている人に仲間の手が届く形を作る
- 仲間の場は、話しかけやすいきっかけ・定期的な投稿・アンケートの反映で育てる
まずは、あなたの会員制の段階ごとのやることを一覧にして、チェック表を1枚作ってみてください。それを会員に配り、1か月後の反応を見るところから始めましょう。
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