昔からよく知っている40代の起業家の話です。
彼は地方を拠点に仕事をしていますが、全国各地にクライアントを持つコンサルタントで、打ち合わせやセミナーで東京に行く機会がとても多いです。
大きな仕事の打ち合わせなどの際には、2~3泊したり、月に2~3回は地元と東京を往復しています。
移動の手段は基本的に飛行機で、打ち合わせの時間帯によっては前後の1日は宿泊することになります。
「打ち合わせの度に上京するのは大変ですよね? 東京に住んだらいいんじゃないですか?」
と私が聞くと、
「そうなんです。住みたいと思ってます。東京のほうがお客さんやビジネスパートナーとも
気軽に打ち合わせができるし、人脈も圧倒的に作りやすいと思います。最先端の情報が聞けるセミナーにもすぐに参加できるし、若い頃から東京には憧れもあるんですよね。でも、家賃が高いし、妻も物価が高いのが嫌だと反対するので悩んでしまって、結局地方のままなんですよね」
と笑いながら答えてくれました。
「????」
失礼なのですが・・・
彼はとてつもなく大きな勘違いをしていますね。
家賃が高い、物価が高い・・・
高いお金を払うのがもったいないので、できるだけお金がかからない方法を選びたい。
その気持ちは十分に分かります。
しかし、地方と東京の生活費の差は、高級住宅街や人気の地域に住もうとしなければ、月に10万円くらいの差です。
彼は上京の度に交通費と宿泊費がかかっているので、少ない月でも5万円くらいの出費が余計にかかっています。
彼が地方に住んでいることによる金銭的メリットは多く見積もっても月に5万円もないということです。
(年間でも60万円未満)
彼のコンサルティングは1件成約すると30~50万円で、契約内容によっては100万円以上の金額になります。
(月に1~2件は成約)
彼が東京で生活することを選択した場合に、今よりも多くかかる生活費の金額は、年間でたった1~2件の成約が増えれば、チャラになるということです。
しかも、彼が東京に住んだ場合の生活を想像すると、クライアントやビジネスパートナーとの
打ち合わせや交流の機会を増やしたり、セミナーなどでノウハウを学ぶ機会を増やしていけば、少なくとも年間で数件は成約を増やせるはずです。
つまり、彼は東京に拠点を移すことで、少なく見積もっても収入を100万円以上増やすことができるのに、家賃や物価の高さを理由にして地方に住み続けることで、本来得られたはずのお金を失っています。
言い換えると、こんな感じです。
「彼は憧れる東京での生活と、移動や宿泊の不便さを我慢して、年間60万円ほどの生活費の節約をしているつもりでいるが、年間数百万円の金額が彼の銀行口座に入らずに消えていく状況を選択している」
彼の奥さんは建設会社で事務の仕事をしていて、パート勤務で月に5~10万円くらいの収入があるそうです。
彼としては、奥さんに仕事を辞めてもらい、家事や自分の仕事のサポートをしてもらいたいそうです。
それにより、彼は今よりもっと仕事に集中できるようになり、今よりも多くの成約を見込めるようになると考えています。
しかし、奥さんは仕事を辞めたくないらしく・・・
外で働きたい女性はたくさんいるので、本人が働きたければ、働けばいいと思いますが、奥さんは別に今の仕事が好きではなく、わがままな社長に振り回されながらの仕事はただただ辛いストレスでしかないそうです。
奥さんが働いている理由は、漠然とした将来に対する不安や、人は働くことで給料を手にするべきだという価値感によるものだそうです。
このように、奥さんは毎日朝から昼過ぎまで働きに出かけ、夫は家事や奥さんのストレス発散に意識や時間を取られ、できる仕事の量(=売り上げ)が減っていきます。
今回のケースでは、夫の時給がとても高いので、
「奥さんが毎日我慢して辛い職場に行き、心身ともにダメージを受けながら一生懸命働いて、
月に数万円~数十万円のお金を捨てていく」
という状態になっています。
お金を減らしたくないのに、お金が減る選択をする。
これは「機会費用」に対する意識がとても低いために起こります。
機会費用を見過ごすと大きな損をする
機会費用とは、ある行動を選択することで失われる、他の選択肢を選んでいたら得られたであろう利益のことです。
家賃や物価などの出費や、月々固定で入ってくる給料などは、数字できちんと表されるので、目に見えて分かりやすいものです。
いくら節約できたのか、どれくらいお金が増えたのかなど、とても分かりやすく見ることができます。
しかし、機会費用は、実際にその選択肢を選んでいないので、明確な成果が目に見えて分からずに、損をしていても気が付かないことが多いのです。
(銀行口座の通帳残高や家計簿には現れないので)
このように、目に見える60万円を節約しようとして、年収を100万円以上も減らしてしまうとか、月に5万円をもらうために、月に30万円以上の収入を減らすなどの
「お金を増やすつもりでお金を捨てる」
ということが起こります。
これはサラリーマンンなどが、将来的に起業する場合にも当てはまります。
例えば、「将来は自分のビジネスで成功して月収100万円稼ぐ!」と決意したにもかかわらず、日々の仕事やバイトを優先してしまい、なかなか作業が進まない人とか・・・
必死にお金を節約して無料サービスや格安サービスばかりを探し回った結果、何ヶ月もビジネスで遠回りするとか・・・
結果的に成功が遅れることによって、仕事やバイトで稼いだ金額や節約した金額を圧倒的に上回る金銭的損失をしていることについては、気付いてすらいない人はとても多いです。
これは目先の生活費が足りない場合は、バイトするとか、節約することはある程度は必要になるので、必ずしも間違った行動ではありません。
しかし、貯金がそれなりにあって、少しくらいの金額で今すぐ生活が破綻するというわけでもない場合は、ビジネスに一定期間は集中して、必要なものには投資して、成功までの期間を数ヶ月でも短縮したほうが、結果として大きなお金を損しないで済むということは覚えておいてください。
大きな収入を見込めるビジネスでは、成果を出す時期が遅くなった分だけ物凄く大きな金額を損してしまうことになります。
目先の分かりやすいお金の節約に飛びつくことよりも、機会費用というものをきちんと理解して検討すれば、より良い判断ができるようになるので、習慣化することをお勧めします。
P.S.1
コンサル生の中には大学時代にネットビジネスで起業して今では一度も就職することなく毎月海外旅行を楽しんでいる社会人一年目のニートがいます。
(自動収益の仕組みを一緒に作ったので、毎月50万円以上は働かずに入ります)
彼がまだ私のコンサルを受け始める前のことですが、東京でのセミナーに参加するための移動で大分から東京へ深夜の高速バスを利用していました。
まず大分から福岡まで高速バスで移動して、乗り換えをして福岡から東京まで行きます。
片道12時間以上かけてバスに揺られて移動して、セミナーを受け、宿泊が必要なときは、一晩1,000円くらいの格安のネットカフェに宿泊していたそうです。
バスでもネットカフェでも熟睡することができず、セミナー中に居眠りすることもあったようです。
私のコンサルを受け始めてからも、東京でのセミナーに参加する際には同じ交通手段を選んでいました。
ちなみに大分-東京での飛行機はLCC(格安航空)を利用すれば、往復2~3万円で行けます。
宿泊が伴いますが、1泊5,000円~1万円くらいでも泊まれるところはあるので、合計額は5万円以下です。
高速バスは往復で約3万円。
その差額は2万円程度です。
当時の彼はセミナーで30万円の商品を販売していましたが、セミナーにかかる時間は約2時間です。
スカイプでのオンラインセミナーを開催していたので、ネット環境さえあれば宿泊先のホテルでも可能です。
飛行機を使って移動を早く終わらせて、快適なホテルでスカイプを使って、2時間くらいのオンラインセミナーを行い、30万円を売り上げることも可能なはずです。
高速バスの中の12時間ではできないことだとしても、2万円ほど追加で払い、快適な移動と宿泊をしつつ売り上げを増やす方法はいくらでもありました。
たった2万円の交通費・宿泊費をケチって、30万円の売り上げを手にするチャンスを放棄する。
典型的な機会費用に対する意識の欠落です。
彼にこのことを説明した結果、すぐに移動手段の変更を取り入れてくれました。
結果として、ホテルでスカイプセミナーを行い、初回に30万円の商品を成約できてしっかりと売り上げを出すことができました。
(成約率70%越えのセミナーテンプレートの威力です)
彼はそれ以来何かを選択しなければならないときには、この経験から機会損失を意識するようになり、当時150万円の投資によって、毎月50万円以上の自動収益を手に入れるという選択もできました。
ただ単に節約することを考えていたら、絶対に今の生活はなかったはずです。
P.S.2
億を稼ぐ起業家の方の話です。
・近距離の移動でも基本的にタクシーを使う
・新幹線は基本的にグリーン車
・食事はすべて外食
・部屋の掃除は代行業者に依頼
・買い物では値段を気にして安いものを探さず即決する
収入が一定のラインを超えると、目先のお金を節約するよりも、時間や体力を節約したほうが、結果的にお金が増える状態になると言います。
時給2,000円の人が、自炊に1時間かけることで、働く時間がその分減ってしまうと、自炊することで500円を節約できたとしても、収入が2,000円減るので、1,500円の損失です。
1日働いたら1万円の収入になる人が、1,000円の交通費を節約するために余計な体力を消耗すると、翌日に疲れが残って仕事効率が半分になった場合には、節約できたお金(1,000円)-減ってしまう収入(5,000円)で、4,000円の損失です。
収入が大きくなるほど、時間や体力を失うことによって失われるお金がとんでもない金額になるということです。
その起業家の方も最初からこのような思考だったわけではありません。
もともと貧乏だったので、出費にかなり敏感で機会費用についての意識も希薄だったそうです。
稼ぎ出してからもそうだったらしいのですが、あるとき機会費用についての考え方を学び、いかに自分が無駄の多い行動をしていたか自覚したそうです。
お金をケチって時間や体力を余分に消耗することは、結果的に苦痛を増やし、幸福度を減らすだけでなく、お金までも減らしているのだと気付いたということです。
500円を節約するために5,000円の収入を減らす、1万円を節約するために10万円の収入を減らすなど、非合理な選択を無数にしていたそうです。
典型的な「節約しているつもりでお金を捨てる人」だったと言っています。
機会費用の考え方を学んでからは、できる限りそれを考慮した合理的な選択をするようにしているそうです。
私もまだまだ機会費用については、できていない部分が多いです。
しかし、目先のお金を節約したり、増やそうとする前に、出来るだけその結果で失われるものについて考えて、比較検討するように心がけています。
まだまだ出来ていないことも多いですが、これまでの選択の中で、この思考を取り入れたことで、成功のスピードを加速させられたのは間違いありません。
あなたも「節約しているつもりでお金を捨てる人」になっていないか?
選択が必要な場面で考えてみてください。