ビジネスの勉強をしていると、「まずはコンセプトを決めましょう」という言葉によく出会います。でも、コンセプトと言われても、何を決めればいいのか、キャッチコピーとは何が違うのか、よく分からない。そんな方は多いです。
分からないまま進めると、商品の説明ばかりが丁寧になっていきます。中身は良いのに、なぜか選ばれない。発信するたびに言っていることが少しずつ変わる。そういう状態になりやすいのです。
結論から言うと、コンセプトとは「商品やサービスの全体をつらぬく、骨格となる考え方」です。何を作るか、いくらにするか、誰に届けるか、どう伝えるか。そのすべてを決める土台になります。
言葉の意味さえつかめれば、コンセプトは決して難しいものではありません。この記事では、コンセプトの意味を身近な例でつかみ、コンセプトが果たす3つの役割と、個人ビジネスで考えるときの入り口をお伝えします。
コンセプトとは「全体をつらぬく骨格」
コンセプトを辞書的に言うと、「作られた作品や商品の全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点」です。
少しかたい言い方なので、言いかえてみます。あなたがこれからビジネスで生み出す商品やサービス、発信する記事や動画。それらすべてに共通している考え方が、コンセプトです。
家にたとえると、コンセプトは柱や梁にあたります。壁紙や家具は後からいくらでも変えられますが、骨組みが決まっていないと、家そのものが建ちません。ビジネスも同じで、コンセプトが決まっていないと、商品の中身や発信の内容がばらばらになってしまいます。
身近な商品で見るコンセプトの例
コンセプトは、身近な商品の中にたくさんあります。
| 商品・サービス | コンセプト |
|---|---|
| 牛丼チェーン | 早い・安い・うまい |
| 掃除機 | 吸引力が落ちない |
| 部屋の芳香剤 | 置くだけで消臭 |
| トイレの洗浄剤 | 入れるだけできれいに洗浄 |
どれも、その商品を一言で表しています。広告のキャッチコピーとして使われているものも多いですが、大事なのは、言葉そのものより、その言葉が商品のすべてに影響していることです。
たとえば、芳香剤の「置くだけで消臭」なら、買った人がやることは「置く」だけです。スプレーのように何度も吹きかける必要はありません。この一言で、使い方も、形も、売り場での見せ方も決まってきます。
コンセプトが果たす3つの役割
役割1:商品の中身を決める
牛丼チェーンの「早い・安い・うまい」で考えてみます。このコンセプトなら、明らかに高級路線ではありません。
- どうすれば、注文から短い時間で出せるか
- どうすれば、材料費をおさえて手ごろな値段にできるか
- その限られた条件の中で、どうすればおいしくできるか
こうしたことを考え抜いて、商品が作られています。メニューも、お店の作りも、働く人の動き方も、すべてがこのコンセプトに沿って形づくられているわけです。
コンセプトは、飾りの言葉ではなく、商品の中身を決める判断の基準です。 迷ったときに「コンセプトに合っているか」で決められるので、判断がぶれなくなります。
役割2:お客様に一言で伝わる
コンセプトがはっきりしている商品は、お客様が一言で説明できます。「あそこは早くて安い」「置くだけでいい」。人に勧めるときも、この一言で伝わります。
逆に、コンセプトがはっきりしていない商品は、説明がどんどん長くなります。良いところをたくさん並べても、お客様の記憶には残りません。商品の説明をいくら丁寧にしても選ばれないのは、この状態です。
役割3:発信と商品がつながる
個人でビジネスをする場合、コンセプトは商品だけでなく、ブログやSNS、メルマガなどの発信にも関わってきます。
コンセプトが決まっていれば、発信のテーマも自然に決まります。記事を読んだ人が、そのまま商品に興味を持つ流れができます。反対に、コンセプトがないまま発信すると、読まれても商品にはつながりません。なぜコンセプトがこれほど大事なのかは、なぜコンセプトが重要なのかで詳しく解説しています。
コンセプトとキャッチコピーの違い
よく混同されるのが、コンセプトとキャッチコピーです。
| コンセプト | キャッチコピー | |
|---|---|---|
| 何か | 商品全体の骨格となる考え方 | コンセプトをお客様に伝えるための言葉 |
| 誰のためのものか | まず作り手が判断に使う | お客様の目を留めるために使う |
| 変わるか | 基本的には変えない | 媒体や時期に合わせて変えてよい |
身近な例では、コンセプトとキャッチコピーがほとんど同じ言葉になっていることも多いです。ただ、順番としては、先にコンセプトがあって、それを伝えるためにキャッチコピーを作ります。キャッチコピーから考え始めると、言葉は立派でも、中身が伴わない商品になりやすいので気をつけてください。
個人ビジネスのコンセプトを考える入り口
では、あなたのビジネスのコンセプトはどう考えればいいのでしょうか。大きな会社のような一言を、最初からひねり出す必要はありません。まずは次の問いに答えるところから始めます。
- 誰が(あなたは何者で、なぜそれを提供できるのか)
- 誰を(どんな悩みを持つ人を対象にするのか)
- なぜ(なぜその人を助けたいのか)
- どのようにして(どんな方法で解決するのか)
- どれほど(どこまでの変化を届けるのか)
この5つの答えを並べてみると、あなたのビジネスの骨格が見えてきます。それを短い言葉にまとめたものが、コンセプトになります。
たとえば、会社員として長く経理の仕事をしてきた人が、個人で教えるビジネスを始めたいとします。「お金の相談に乗ります」だけでは、誰の、どんな悩みに、どう応えるのかが伝わりません。「確定申告が不安な、ひとりで仕事を始めたばかりの人に」「帳簿のつけ方を、毎月の決まった手順にして」「自分で申告まで終えられるように」と5つの問いで具体的にしていくと、商品の中身も、発信のテーマも、自然に決まってきます。
5つの問いの考え方と進め方は、コンセプトの作り方から順番に解説しています。答えがそろったら、コンセプトを決定するで一つの言葉にまとめていきます。
よくある勘違い
コンセプトを考えるときに、つまずきやすいところもまとめておきます。
| よくある勘違い | どう考えればいいか |
|---|---|
| かっこいい言葉を考えることだと思う | 言葉より先に、判断の基準として使えるかを見る |
| 全員に好かれるコンセプトにしようとする | 誰に向けたものかを絞るほど、伝わりやすくなる |
| 一度決めたら二度と変えられないと思う | 骨格は大切にしつつ、実際の反応を見て磨いていく |
| 自分だけで一から考えようとする | うまくいっている商品のコンセプトを参考にする |
特に2つ目は、多くの方が迷うところです。誰にでも当てはまる言葉は、誰の心にも残りません。「この人のための商品だ」と感じてもらえるように、届けたい相手を絞ってください。
まとめ
- コンセプトとは、商品やサービスの全体をつらぬく、骨格となる考え方
- 身近な商品は、一言のコンセプトで中身・使い方・見せ方まで決まっている
- コンセプトの役割は、商品の中身を決める、一言で伝わる、発信と商品をつなげるの3つ
- キャッチコピーは、コンセプトをお客様に伝えるための言葉で、順番はコンセプトが先
- 個人ビジネスでは「誰が・誰を・なぜ・どのようにして・どれほど」の5つの問いから考える
まずは、身の回りにある好きな商品を一つ選び、そのコンセプトを一言で書き出してみてください。その一言が、商品のどこに表れているかを探してみると、コンセプトの意味が体でつかめます。


