毎日やることに追われて、気づけば一日が終わっている。いろいろなことに手をつけているのに、本当に大事なことはなかなか進まない。そんな感覚を持っている方は多いのではないでしょうか。
情報があふれている今は、何かをするときに「〜しながら」になりがちです。スマホを見ながら食事をする。メールを気にしながら資料を作る。動画を流しながら考えごとをする。集中するのが苦手だという相談をいただくこともよくあります。
結論から言うと、質の高い時間の使い方に必要なのは、新しいテクニックを足すことではありません。「〜しながら」と、やらなくていいことを捨てて、目の前の一つに集中することです。
この記事では、なぜ「ながら」が時間の質を下げるのか、どうすれば一つのことに集中できるのか、そして1日の中で本当に大事なことを1つだけ残す手順をお伝えします。
「〜しながら」が、時間の質を下げている
二つのことを同時にしていると、効率よく時間を使っているように感じます。でも実際には、どちらにも意識が半分ずつしか向いていません。
食事をしながらスマホを見ていると、何を食べたのかあまり覚えていない。資料を作りながらメールの通知を気にしていると、何度も手が止まり、考えていたことを思い出すところからやり直しになる。そんな経験はありませんか。
「ながら」の時間は、量としては長くても、中身が薄くなりやすいのです。大事なのは時間の長さではなく、その時間にどれだけ深く取り組めたかです。
集中するのが苦手だと感じている方ほど、考え方の訓練や難しい仕事術より先に、一つのことだけに取り組む習慣を身につけるのがおすすめです。目の前の一つに集中して、ほかのことへの意識を手放すだけで、不要な情報は自然と目に入らなくなります。
複数の作業を同時に抱えることで集中力が奪われる仕組みは、「一点集中」の法則で詳しく解説しています。
食事のときは食事だけ:一つのことだけに取り組む
一つのことに集中する生き方の分かりやすいお手本が、禅の修行僧たちの日常です。
- 食事のときは、食事だけをする
- 掃除のときは、掃除だけをする
- 座禅のときは、座禅だけをする
やるべきこと以外は一切やらず、そのとき一つのことだけを行う。そうすることで考えはシンプルになり、無駄がなくなって、一日の時間の使い方が変わっていきます。
これは修行僧だけの話ではありません。仕事でも、「今はこの資料だけを作る」「今はこのお客様の話だけを聞く」と決めて取り組むと、同じ時間でも仕上がりが変わります。何をするかより、「今はこれ以外をしない」と決めることが、時間の質を上げる出発点です。
本当に必要な作業は、1日に1〜2個
毎日忙しく、あれもこれもやらなければと考えている方は多いです。でも、本当に必要なことは、思っているよりずっと限られています。
私は、必要な作業は1日に1〜2個もすれば十分だと考えています。その程度であれば、多くの場合は1〜2時間で終わります。
もちろん、それだけで一気に大きな結果が出るわけではありません。ただ、楽をするために頭を使い、工夫を重ねることで大きな結果は出せます。そしてそれは、毎日の小さな積み重ねで届くものです。
1日に10個の作業を中途半端に進めるより、本当に大事な1〜2個を、毎日確実に終わらせる。その積み重ねのほうが、ずっと遠くまで進めます。
本当に大事なことだけに絞って成果を出す考え方は、エッセンシャル思考でも紹介しています。
成果が出ないのは、足りないからではなく「無駄」が多いから
成果が出ないと、「自分には何が足りないのだろう」と考えがちです。新しいノウハウを学んだり、新しい道具を試したりして、何かを足そうとします。
でも、多くの場合、足りないのではありません。無駄が多すぎるのです。
「ほかに何をすれば、うまくいきますか」と考える前に、まずは今やっている無駄なことを捨ててみてください。物、情報、考えごと、環境、人間関係。いろいろな「しがらみ」が、知らないうちにあなたの時間と気力を奪っています。
身の回りを見ると、頭の中の状態が分かることがあります。
- 物が散らかった部屋
- 必要なファイルがすぐに見つからないパソコン
- 中身がいっぱいのカバンや財布
これらは、あなたがだらしないということではありません。頭の中に情報が多すぎて、整理が追いついていないというサインです。逆に、考えが整理されてくると、身の回りや持ち物、動きも自然と整っていきます。
いらないものを捨てることは、特別な才能がなくても、今日から始められます。
最重要の1つを残す、4つの手順
では、何を捨てて、何を残せばいいのでしょうか。私がおすすめするのは、次の4つの手順です。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1. 書き出す | 今日やろうとしていることを、全部紙に書き出す |
| 2. 1つに丸をつける | その中で、今日やらなければ一番困るものに1つだけ丸をつける |
| 3. 残りを分ける | 残りを「明日以降でいい」「人に頼める」「やらなくていい」に分ける |
| 4. 一点集中の時間を作る | 丸をつけた1つを、通知を切って、それだけに取り組む時間を先に確保する |
手順3で迷ったときは、「これをやらなかったら、1週間後に何が困るか」と自分に聞いてみてください。すぐに答えが出ないものは、今日やらなくていいものです。また、「なんとなく毎日やっている」だけの作業も、一度やめてみる候補になります。やめてみて本当に困ったら、そのときに戻せば大丈夫です。
手順4では、丸をつけた1つを、一日の予定の中で一番頭が働く時間に置きます。空いた時間にやろうとすると、ほかの作業に押し出されてしまうからです。先に場所を取ってから、残りの時間でほかのことをする順番にします。
本当に必要な最重要項目を1つだけ残し、ほかを全部手放すと考えると、最初はかなりの違和感があります。「これもやらないと」「あれも気になる」と、手放すことに不安を感じるかもしれません。
でも、簡単なことからでも始めてみると、意外とできることに気づくはずです。手放したことで困ることは、思っていたより少ないものです。
よくある失敗
時間の使い方を変えようとした方がつまずきやすい点も挙げておきます。
| よくある失敗 | どう直すか |
|---|---|
| 新しい時間術やアプリを次々に試す | 足す前に、今やっていることを減らす |
| 最重要を3つも4つも選んでしまう | 1日1つに絞る。終わったら次を選ぶ |
| 集中する時間にスマホを手元に置いている | 通知を切り、手の届かない場所に置く |
| いきなり全部を変えようとして続かない | まずは食事の時間など、1つの場面から始める |
特に多いのが、スマホに時間を奪われているケースです。触るつもりがなくても、手元にあるだけで意識がそちらに向いてしまいます。スマホとの付き合い方は、スマホ依存から脱却して時間を取り戻す7つの習慣でまとめています。
色々なことを同時に進めて時間を効率よく使う方法もありますが、それはとても高度なことです。まずは、目の前のもっとも重要なこと以外はすべてやめて、一点に集中する習慣から身につけてください。
まとめ
- 「〜しながら」は時間の量を増やしても、中身を薄くしてしまう
- 禅の修行僧のように、そのとき一つのことだけに取り組む習慣を持つ
- 本当に必要な作業は1日に1〜2個。それを毎日確実に終わらせる積み重ねが大切
- 成果が出ないのは、足りないからではなく無駄が多いから。足す前に捨てる
- 今日の最重要を1つだけ残し、それに集中する時間を先に確保する
まずは今日の食事を、テレビを消し、スマホの電源も切って、食べることだけに集中してみてください。それだけでも、これまでとは違う気づきを得られる瞬間があるはずです。



