「一度、オンラインでセミナーを開いてみよう」。そう決めたとき、多くの方は最初にスライドを開いて、話す中身を書き始めます。伝えたいことはたくさんあるので、スライドはどんどん増えていきます。
ところが当日になると、時間が足りなくなって最後の案内が駆け足になる。顔を出すかどうかで前日まで迷う。終わってみると、参加者は満足してくれたのに、次につながる動きがほとんどない。こういう経験をした方は少なくありません。
結論から言うと、単発のオンラインセミナーがまとまらない原因は、準備の量ではなく「決める順番」です。話す中身は最後に決めるものです。先に目的とゴールを決め、次に形式を決め、時間の配り方を決める。この順番を守るだけで、中身は驚くほど迷わずに作れるようになります。
この記事では、1回で完結する単発のオンラインセミナーを組み立てる5つの手順と、終わったあとの録画の生かし方を解説します。
中身から作ると、なぜまとまらないのか
中身から作り始めると、判断の物差しがないまま話を積み上げることになります。あれも役に立つ、これも伝えたい。その一つひとつは正しいので、削る理由が見つかりません。
その結果、よく起きるのが次の3つです。
- 時間が足りなくなり、一番伝えたかった「次の一歩」の案内が短くなる
- 参加者の頭の中が情報でいっぱいになり、何から手をつければいいか分からなくなる
- 終わったあとに「良い話だった」で止まり、行動につながらない
私自身、独立したばかりの頃は、セミナーやZoomでのライブに苦手意識がありました。当時うまくいかなかった理由をふり返ると、話し方ではなく、何のために開くのかを決めないまま中身を作っていたことが大きかったと思います。
中身は、目的に合わせて選ぶものです。 目的が決まっていれば、「この話は今回の目的に必要か」という物差しで、入れる話と外す話を分けられます。無料セミナーで話しすぎてしまう問題については、無料セミナーで売れない人ほど話しすぎている理由でも詳しく書いています。
手順1:その回の目的とゴールを1つに決める
最初に決めるのは、この1回で何を起こしたいのか、です。単発のセミナーの目的は、大きく分けると次の2つです。
| 目的 | その回で起こしたいこと | ゴールの決め方 |
|---|---|---|
| つながる回 | 参加者に名簿(メルマガやLINE)に入ってもらい、関係を続ける | 登録してくれる人の数を決める |
| 案内する回 | 参加者の中で必要な人に、講座や個別相談を案内する | 申し込みや面談の数を決める |
大事なのは、1回のセミナーで目的を1つに絞ることです。「つながりも作りたいし、講座も案内したい」と欲張ると、どちらの話も中途半端になります。
目的を決めたら、ゴールを数字で決めておきます。何人に登録してもらいたいか、何件の面談を入れたいか。数字は、開催前に自分で決めてください。
ゴールがあると、準備の優先順位がはっきりします。面談を入れたい回なら、面談の日程表を先に用意しておく必要がある。登録してほしい回なら、登録してくれた人に何を渡すかを決めておく必要がある。ゴールを決めることは、気合いを入れるためではなく、準備の抜けを見つけるためです。
もう一つ、ゴールは「今の自分なら届きそう」より少しだけ高めに置くのがおすすめです。低く置くと、それ以上の工夫をしなくなります。反対に、届かなかったとしても、どこが足りなかったのかを具体的にふり返れます。
手順2:顔と画面をどう使うかを決める
次に決めるのが形式です。オンラインセミナーの見せ方は、大きく3つに分かれます。
| 形式 | 良いところ | 気をつけたいところ |
|---|---|---|
| 画面だけ(スライド中心) | 見た目を気にせず取り組める。話の抜けが出にくい | 話し手が見えないので、信頼が伝わりにくい。読み上げになりやすい |
| 顔だけ(カメラに向かって話す) | 目が合う感覚があり、人柄が伝わりやすい | 資料なしで長く話すのは難しい。話が散らかりやすい |
| 顔と画面の組み合わせ | 人柄と分かりやすさの両方を出せる | 切り替えの場面を決めておく必要がある |
私がおすすめするのは、顔と画面を組み合わせる形です。考え方はシンプルで、「人として関わる場面は顔」「中身を伝える場面は画面」と分けます。
- 始まりのあいさつと自己紹介:顔を出す
- 本編の解説と、講座や面談の案内:画面を見せる
- 最後の質問への回答:もう一度、顔を出す
最初と最後に顔が見えると、参加者は「実在する人が、自分のために話してくれている」と感じます。そして真ん中を画面で進めることで、話が散らかるのを防げます。
とくにコーチやコンサルなど、あなた自身の関わり方が商品の価値になる仕事の方は、顔を出す場面を必ず作ってください。画面だけだと、どんなに中身が良くても「この人に相談したい」という気持ちが生まれにくいからです。
手順3:時間の配り方を先に決める
形式が決まったら、時間の配り方を決めます。ここでも、中身より先に「枠」を作るのがポイントです。単発のセミナーは、次の6つの枠で考えると組み立てやすくなります。
- 入り:歓迎の言葉と、今日持ち帰れることを伝える。メモの用意や、通知を切ってもらうお願いもここで
- 自己紹介:なぜ自分がこのテーマを話すのかを、短い体験で伝える。そのあと、はい・いいえで答えられる質問を1つ投げて、チャットに書いてもらう
- 本編:一番長い時間をあてる。手順を番号で示し、聞いた人が今日から動ける形で伝える
- 橋渡し:本編の要点をふり返り、「一人でやると、ここでつまずきやすい」という次の壁を言葉にする
- 案内:目的に合わせて、名簿の登録や講座・面談を案内する
- 質疑応答:質問に答え、迷っている点を解く
枠ごとに時間の割合を先に決め、その時間に収まるように中身を選びます。本編に一番長い時間をあてつつ、案内と質疑応答の時間は最初に確保しておく。ここを後回しにすると、当日の時間が押したときに真っ先に削られてしまいます。
本編は「持ち帰れるもの」を1つ決める
本編を作るときは、参加者が終わったあとに手元に残るものを1つ決めておくと、満足度が大きく変わります。たとえば、その場で一緒に書き込むワークや、今日の手順をまとめた1枚の資料などです。
情報をたくさん渡すより、「この1つは今日できた」という手ごたえを渡す方が、次の案内にも耳を傾けてもらえます。台本の細かい作り方は、セミナー台本の11要素と直し方でまとめています。
橋渡しで、案内が売り込みにならなくなる
本編から案内に移る場面で、急に口調が変わってしまう方は多いです。これを防ぐのが、4つ目の橋渡しです。
本編をふり返ったあと、「今日の手順を一人で進めようとすると、たいてい〇〇のところで止まります」と、参加者がこれからぶつかる壁を先に言葉にします。そのうえで、「その壁を一緒に越えたい方のために、こういう場を用意しています」と案内する。この流れがあると、案内は売り込みではなく、本編の続きとして自然に受け取ってもらえます。
手順4:開始前の準備で、当日の落ち着きを作る
当日の落ち着きは、話す力より準備で決まります。本番の前に、次のことを一度通しで確かめておきます。
| いつ | 確かめること |
|---|---|
| 前日まで | 参加者に送る案内のリンクを、実際に押して開けるか |
| 前日まで | 配信の開始から終了まで、一度テストで動かしてみる |
| 前日まで | スライドを最初から最後まで、声に出して通してみる |
| 当日 | 案内のメッセージが予定どおり届く設定になっているか |
| 当日 | カメラと音声を、本番と同じ場所でもう一度確かめる |
| 当日 | 手元に水を用意し、案内したいリンクをすぐ開ける場所に置く |
スライドを声に出して通すのは、面倒でも一度はやってください。頭の中で読むのと、声に出すのとでは、かかる時間がまったく違います。時間の配り方が現実に合っているかを確かめる、一番確実な方法です。
もう一つおすすめなのが、開始時刻の少し前から入室して、早めに来てくれた人とチャットでやり取りを始めることです。「今日はどちらから参加されていますか」のような、答えやすい質問で十分です。場が温まるだけでなく、自分の緊張もほぐれて、自然な声で本編に入れます。
当日の進行中に反応が薄いと感じたときの見直し方は、反応が薄いときに疑う4つのことで解説しています。
手順5:録画を「次の資産」として残す
単発のセミナーは、終わったら消えてしまうものではありません。録画を残しておけば、同じ中身を何度も役立てることができます。
録画の使い道は、たとえば次のようなものがあります。
- 当日来られなかった登録者に、期間を決めて見てもらう
- 講座や個別相談を申し込んでくれた人に、事前に見ておいてほしい資料として渡す
- 質疑応答の部分だけを切り出して、よくある質問への答えとして使う
- 次に同じテーマで開くときの、ふり返りの材料にする
とくに最後の使い方は大事です。録画を見返すと、話が長くなった場面、参加者の反応が止まった場面、質問が集中した場面がよく分かります。次の回で直すところが、自分の感覚ではなく事実で見つかります。
注意したいのは、録画を「いつでも見られるもの」として置きっぱなしにしないことです。いつでも見られると思うと、人は後回しにします。見てほしい期間をはっきり伝えて、その期間の中で次の一歩を案内する。録画にも、ライブと同じように目的とゴールを持たせてください。
単発のセミナーは、仕組みの入口になる
単発のセミナーを一度組み立てられるようになると、それは1回きりのイベントではなく、仕組みの入口になります。目的・形式・時間の配り方が決まっていれば、テーマを変えても同じ枠で何度でも開けるからです。
私は、1回のセミナーで伝えきれないことを3日間に分けて届ける「チャレンジ企画」という形も使っています。単発のセミナーが「1回で1つの気づきを渡す場」だとすると、チャレンジ企画は「参加者が手を動かしながら、少しずつ変化を体験する場」です。どちらが良いということではなく、目的によって使い分けるものです。
オンラインのセミナーを使って知識を収入に変える全体の流れは、知識をZoomセミナーで収益に変える全技術でもまとめています。
まとめ
- 単発のオンラインセミナーがまとまらない原因は、準備の量ではなく「決める順番」
- 最初に、その回の目的を「つながる回」か「案内する回」の1つに絞り、ゴールを数字で決める
- 形式は、人として関わる場面は顔、中身を伝える場面は画面、と分けて組み合わせる
- 時間の配り方を中身より先に決め、案内と質疑応答の時間を最初に確保する
- 録画は置きっぱなしにせず、期間と目的を決めて次の資産として使う
まずは次に開きたいセミナーについて、「この1回の目的は何か」「ゴールの数字はいくつか」の2つだけを紙に書いてみてください。話す中身は、そのあとで決めれば十分です。


