新しいAIが発表されるたびに、「今度はこちらが一番らしい」という情報が流れてきます。気になって登録してみる。少し使ってみる。また別のAIが話題になる。気づけば、いくつものサービスに登録したまま、どれも使いこなせていない。
そんな「AIツール迷子」になっている方は、とても多いです。情報を追いかけるだけで疲れてしまい、肝心の仕事が前に進まない。
結論から言うと、AIツール迷子を終わらせるために必要なのは、「一番すごいAI」を見つけることではありません。用途ごとに役割を決めて使い分けること、そしてどのAIを使っても変わらない心構えを持つことです。
この記事では、AIの性能が上がっても指示の技術が必要な理由、用途ごとに役割で選ぶ考え方、そしてAIを使うときに破ってはいけない3つの心構えをお伝えします。
AIの性能が上がっても、指示の技術はなくならない
「AIがどんどん賢くなっているなら、簡単な指示でも分かってくれるようになるのでは?」
そう感じる方もいると思います。とても良い疑問です。でも、私の答えは「いいえ」です。AIがどれだけ進化しても、人がAIに指示を出す技術は必要であり続けます。
理由を分かりやすくするために、私がよく使うたとえ話があります。AIは「とても優秀だけれど、あなたの会社については何も知らない、入社1日目の新人」だ、というものです。
この新人は、文章を書く力も、論理的に考える力も、とても高い。でも、あなたのことは何一つ知りません。
- あなたがどんな思いで仕事をしているのか
- あなたの商品が、どんなお客様の、どんな悩みを解決するのか
- あなたがどんな語り口で、お客様に信頼されてきたのか
この新人に「うちの広告コピーを書いておいて」と丸投げしたら、どうなるでしょうか。世の中一般の文章をもとにした、「それっぽい」けれど誰の心にも刺さらない文章が返ってきます。大きな会社の広告のような、当たり障りのない言葉が並ぶはずです。
AIに「手本」と「背景」を渡すのは、人の仕事
AIがありきたりな文章を書いてしまうのは、あなたのビジネスに合わせて学んだわけではないからです。インターネット上の膨大な文章をもとにしているので、放っておくと「平均的な文章」に寄っていきます。
だからこそ、上司である私たちの仕事が必要になります。
「世間一般の文章は、うちでは使わない。うちのお客様には、過去に反応が良かったこのメルマガを手本にして、こういう語り口で書いてほしい」
このように、はっきりした指示と手本を渡す。これがプロンプト(AIへの指示文)です。
AIの性能が上がれば、手本を読み取る力は上がっていきます。でも、手本そのものを用意して渡す作業は、人にしかできません。プロンプトの基本は、期待通りの答えを引き出すプロンプトの基礎で詳しく解説しています。
AIツールは「一番」ではなく「役割」で選ぶ
では、どのAIを使えばいいのでしょうか。私がおすすめしているのは、「一番のAIを1つ選ぶ」のではなく、「用途ごとに役割を決める」考え方です。
AIのサービスは、得意なことがそれぞれ違います。そして、その得意・不得意は更新のたびに入れ替わります。だから、「どれが一番か」の情報を追いかけ続けると、いつまでも迷子のままです。
先に自分の仕事を分けて、それぞれに担当を決めておくと、迷いがぐっと減ります。
| 用途 | AIに任せたいこと | 選ぶときに見ること |
|---|---|---|
| 売るための文章 | セールスコピー、メルマガ、ブログの下書き | 柔らかく分かりやすい日本語か、指示した語り口を守れるか |
| 論理的な長文 | 解説記事、電子書籍、手順書 | 長い文章でも筋が通っているか、途中で話がぶれないか |
| 画像 | アイキャッチ、バナーの案 | 日本語の文字をきれいに入れられるか |
| 文字起こし | 音声や動画を文章にする | 聞き取りの正確さ、長い音声を扱えるか |
私自身も、文章・長文・画像・文字起こしと、用途ごとに使うAIを分けています。どのサービスがどの用途に向いているかという比較は、AIチャットボットの比較で当時の結論を書いていますが、仕様や料金は変わっていくので、使う前に今の情報を確かめてください。
新しいAIが出てきたときも、「今の担当より、この用途でうまくできるか」だけを試せば十分です。全部を乗り換える必要はありません。
AIを使うときに破ってはいけない3つの心構え
どのAIを使うかより大切なのが、使う人の心構えです。これは、ツールが入れ替わっても変わりません。
心構え1:「AIが書いた」ではなく「自分の責任」で公開する
AIが作った文章でも、ブログに投稿したり、メルマガで配信したり、広告に使ったりすれば、それはあなたの名前で世の中に出ます。
内容に間違いがあったり、誰かを傷つけたりしたとき、「それはAIが書いたもので」という言い訳は通用しません。公開すると決めたのは、あなたです。この前提を持っておくことが、AIを仕事で使うときの出発点になります。
心構え2:AIの間違いはゼロにならない。公開前に必ず目を通す
AIは、もっともらしい間違いを書くことがあります(ハルシネーションと呼ばれます)。性能が上がって減ってきてはいますが、ゼロにはなっていません。
私自身、今でも「この日本語は少しおかしい」「英語と日本語が混ざっている」といった出力に出会います。AIの文章をそのまま貼りつけて公開するのは、とても危ないことです。自分の名前で出す以上、公開前に一語一句、自分の目で確かめます。
心構え3:架空の「お客様の声」や「実績」は使わない
3つの中で、最も大切なのがこれです。
AIにセールスコピーを書かせると、良かれと思って、架空のお客様の声や実績を作ってくることがあります。「この講座のおかげで売上が大きく伸びました(東京都・Aさん)」のような文章です。もちろん、そんな人はどこにもいません。
これを実在するかのように販売ページに載せれば、法律に触れるおそれがあるだけでなく、お客様をだますことになります。AIが作った架空の声や実績は、迷わず削除してください。本物のお客様の声があるなら、「この実際の声を、こういう形で入れて」とAIに指示し直せばいいのです。
AIを使うときの注意点は、生成AI利用の注意点でさらに詳しくまとめています。
AIは「アシスタント」、人は「最後の確認係」
AIは、人の仕事を奪うものではありません。仕事を手伝ってくれる、とても優秀なアシスタントです。
これまで何時間もかけて書いていたセールスレターの下書きも、AIに材料と指示を渡せば、短い時間で8割ほどの形にしてくれます。そのうえで、最初の指示と最後の手直しを人が担う。この分担が、AIと一緒に働く基本の形です。
最後に人が確かめるのは、次のようなところです。
- 誤字や脱字はないか
- 事実と違うことは書かれていないか
- 語り口が、ちゃんと自分の言葉になっているか
- お客様をだますような表現はないか
特に最後の項目は、どれだけAIが進化しても、人が責任を持つところです。この確認と手直しこそが、AI時代に人に残る、価値のある仕事だと私は考えています。
まとめ
- AIの性能が上がっても、手本と背景を渡す「指示の技術」は人の仕事として残る
- AIは「優秀だけれど、あなたのことを知らない入社1日目の新人」と考える
- AIツールは「一番」を探さず、用途ごとに役割を決めて選ぶ
- 「自分の責任で公開する」「公開前に必ず確かめる」「架空の声や実績を使わない」の3つを守る
- AIはアシスタント、人は最後の確認係
まずは、自分がAIに任せたい仕事を「文章・長文・画像・文字起こし」の4つに分けて書き出し、それぞれに今使っているAIを1つずつ当てはめてみてください。


