講座を作ろうと決めたのに、動画のところで手が止まる。顔を出すのは抵抗がある。カメラの前で話すのも苦手。そんな理由で、講座づくりそのものが先送りになっている方は多いです。
私も、独立したころはセミナーやZoomのライブに苦手意識がありました。だから、その気持ちはよく分かります。
結論から言うと、講座の動画に顔は要りません。受講生が見たいのは講師の顔ではなく、「次に何をすればいいか」だからです。そして、止まる本当の原因は顔出しではなく、作る順番にあることがほとんどです。いきなり動画から作ろうとするので、何を話せばいいか決まらず、カメラの前で固まってしまいます。
この記事では、AIを相棒にして、カリキュラム、1回分の部品、台本、スライド、顔を出さない講義動画を、この順番で作っていく流れをお伝えします。どのAIを使うかで迷う必要はありません。ChatGPT・Claude・Geminiのどれでも進められる考え方で書いています。
なお、この流れは講座づくりの5段階のうち「作る」にあたります。作る前に「誰に何を約束するか」を決め、需要を確かめておく順番は、決める・確かめる・作る・直す・届けるの5段階で解説しています。
AIは「講座メモ」と「依頼文の型」で相棒にする
AIの答えがいまひとつなとき、原因はたいていAIではなく頼み方です。「講座の台本を書いて」だけでは、AIは誰に向けて、何のために、どんな長さで書けばいいのか分かりません。
講座メモを1枚作っておく
最初に、講座の基本情報を1枚にまとめた「講座メモ」を作ります。講座名、自分の経験、講座の中心になる1文、回数と期間、受講生が最後に持っているもの、口調、書かないこと。これをAIに何かを頼むたびに材料として貼ります。毎回ゼロから説明しなくて済むので、答えのぶれが減ります。
依頼文は5つの部品で組む
依頼文は、次の5つで組み立てます。
| 部品 | 中身 |
|---|---|
| 役割 | どんな立場で答えてほしいか(例:講座の構成を考える編集者) |
| 目的 | 何のために作るのか。誰が読み、読んだ後どうなってほしいか |
| 材料 | AIが使ってよい情報。講座メモ、過去の資料、決めたこと |
| 形式 | どんな形で返してほしいか。箇条書き、表、文字数、案の数 |
| 条件 | 守ってほしい決まり。書かないこと、口調、分からないときの扱い |
特に効くのは「材料」と「条件」です。条件に「材料にないことは書かない。足りないときは、作る前に質問する」と入れておくと、それらしい作り話が減ります。
一方で、AIに任せてはいけないこともあります。誰に何を約束するかの最終決定、需要があるかの判断、受講生の声や実績を作ること、事実と数字の最後の確認です。AIに作らせ、AIに点検を手伝わせ、最後は自分の目で見る。 この流れを決めておくと、AIの間違いをそのまま受講生に届ける事故を防げます。
動画の前に、カリキュラムと1回分の部品を決める
動画が作れない方の多くは、何を話すかが決まっていません。話す中身は、先にカリキュラムと1回分の部品を決めれば、ほとんど自動的に決まります。
カリキュラムは、最後の状態から逆算する
受講を終えた日に、受講生の手元に何があり、何ができているか。これを先に1文で書き、そこから1回ずつさかのぼって組みます。問いはいつも「この状態になる直前に、何ができていればいいか」です。
最初の回から組むと、「まず基礎から」と話が増えていきます。気づけば全10回になり、受講生は途中で息切れします。目指すのは、受講生が最後までたどり着ける「終われる講座」です。
そのための決まりが2つあります。
- 1回=1つの完成品にする。講義1回ごとに、シートや手順書など、受講生の手元に1つ残るものを決める
- 入れたい話の8割は外す。外した話は捨てずに、特典・2本目の講座の種・個別の質問対応に置き場所を変える
回の題名も「何を学ぶか」ではなく「何ができあがるか」で書きます。「AIの基本を知ろう」より「メールの下書きを短く終わらせる手順」のほうが、その週に何を持ち帰るかが分かります。
1回分にそろえる6つの部品
カリキュラムが決まったら、1回分ずつ、次の6つをそろえます。
| 部品 | 中身 |
|---|---|
| 完成品 | この回で受講生の手元に残るもの |
| 完成基準 | どこまでやれば完成かを、講師が1〜2文で言い切ったもの |
| 手順 | 完成品までの作業を3〜5つに分け、目安の時間を付けたもの |
| AI依頼文 | 手順の中で使う依頼文。差し替える欄を〔 〕で示す |
| 見本 | 講師が実際に作った完成品 |
| できたかチェック | 受講生が自分で「はい・いいえ」で答えられる3〜5項目 |
この中で最初に手をつけるのは、見本です。講師が自分で、受講生と同じ手順で完成品を1つ作ります。やってみると、頭の中では短く済むはずだった作業が倍近くかかったり、名前や社名を消し忘れそうになったりと、手順の抜けが見つかります。受講生が止まる場所を、見本づくりで先回りして防げるわけです。
できたかチェックは、「理解した」ではなく見て判断できる言葉で書きます。「メールの書き方が分かった」ではなく「手順書どおりに1通書き、時間を測って記入した」です。受講生の進み具合を見える形にする工夫は、進み具合が見えるチェックリストで学びを行動に変える5つの工夫でも紹介しています。
台本が先、スライドはあと
6つの部品がそろったら、台本を書きます。作る順番は「台本が先、スライドはあと」です。スライドから作ると、スライドの文字を読み上げるだけの講義になりがちです。
台本は、聞く文章で書く
台本は読む文章ではなく、聞く文章です。受講生は家事の合間に、画面を見ずに音だけで聞いていることもあります。
- 1文は40字前後まで。長い文は2つに分ける
- 「これ」「上記」のような指示語は使わず、名前で言い直す
- 結論から話す。最初の2文で、この回で手元に何が残るかを言う
長さは、1分あたり約300字で見積もります。10分の動画なら約3,000字です。中身は新しく考えなくてかまいません。1本目で「何を作るか・なぜ作るか・完成見本」、2本目で「手順を一緒に進めて、できたかチェックを付ける」と、部品を話す順に並べるだけです。
AIに台本を頼むときは、講座メモと1回分の部品を材料に貼り、「部品にない実績・受講生の声・数字は足さない」を条件に入れます。
スライドは、台本の言葉をそのまま抜き出す
スライドは、台本の要点を画面に出すものです。決まりは「1枚に1メッセージ」。講義動画なら1枚10〜15秒、台本50〜75字ごとに1枚が目安です。
大事なのは、台本の言葉を言い換えないことです。台本で「手順書」と言っているのに、画面に「作業マニュアル」と出ると、受講生は別のものだと思って迷います。耳で聞く言葉と目で見る言葉は、同じにします。
文字の大きさは、作る前に下限を決めておきます。私は、横1920×縦1080のスライドで、動画用は36ピクセル以上にしています。スマホで見る受講生が多く、パソコンで読めた文字も縮むと読めなくなるからです。画面のいちばん下のあたりは字幕が重なるので、大事な言葉を置かないようにします。見やすいスライドの決まりは、講座スライドを「引き算」で見やすくする6つの決まりにまとめています。
台本とスライドができたら、出す前に突き合わせます。数字が見本と合っているか、画面の言葉が台本と同じか、話す順に並んでいるか。こうした食い違い探しはAIが得意です。色や見やすさは、全枚を縮小して並べた一覧を自分の目で見て確かめます。
顔を出さない講義動画の3つの作り方
台本とスライドがそろえば、顔を出さない講義動画は3通りで作れます。違うのは「声」と「画面に何を映すか」だけです。
| 作り方 | 中身 | 向いている回 |
|---|---|---|
| 自分の声 | スライドを映し、台本を読んだ自分の声を重ねる | 考え方や体験を伝える回 |
| AIの声 | スライドを映し、読み上げのAIが台本を読む | 説明が中心の回、撮り直しが多い回 |
| 画面収録 | パソコンの操作を録画し、声を重ねる | AIへの依頼文の貼り方など、操作を見せる回 |
3通りは、1つの講座の中で混ぜてかまいません。考え方を伝える前半をAIの声とスライドで作り、操作を見せる後半を画面収録にする、といった組み合わせができます。講座の動画は、見ながら手を動かしてもらうものです。操作を見せる回は、画面収録がいちばん伝わります。
画面収録では、映してはいけないものに気をつけます。会社の書類や、お客様・同僚の名前が入ったファイル、メールの受信一覧、ほかの人とのチャット、パスワードの入力欄、デスクトップのファイル名、閉じ忘れたタブ。録る前に見せる画面だけを開き、録ったあとも最初から最後まで一度見て確かめてください。
1本は10分以内、1回は動画1〜2本
動画は1本10分以内に分けます。受講生はすき間の時間で見るので、短いほどその日のうちに見てもらえます。手を動かしながら何度も止めるので、どこまで見たかも分かりやすくなります。
もう1つの理由は、直しやすさです。モニターの反応を見て直すとき、60分の動画だと全部作り直しですが、10分ずつなら止まった1本だけで済みます。
AIの声を使うときの決まりと、完成した動画での確認
AIの声は、顔も声も出さずに講座を作れる便利な方法です。そのかわり、守る決まりが2つあります。
- 「音声はAIで生成しています」と表示する。動画の最初から最後まで画面の隅に出し、会員サイトの説明にも書く
- 他人の声を無断で使わない。自分の声を覚えさせて読ませる方法を使うなら、使ってよいのは自分の声か、本人からはっきり許可をもらった声だけ
表示があって信頼が下がることはありません。後から知られたときのほうが、信頼を失います。自分の声の録音ファイルは、その声を再現できる元データなので、受講生に配るファイルや人と共有するフォルダには入れないでください。読み上げのサービスによっては、販売する講座に使える条件が決まっているので、使う前に公式の案内で確かめます。
読み間違いは、音声を作る前に探す
AIの声で事故が起きやすいのは、数字・英字・名前です。音声を作る前に、台本から読み間違えそうな言葉を探し、読み上げ用の文字だけをカタカナやひらがなに直します。字幕に出す文字は直しません。視聴者には誤字に見えるからです。直したあとも、完成した音声を聞いて確かめます。直した言葉が、別の読み方に化けることがあるからです。
確認は、完成した動画そのもので行う
ここがいちばん大事なところです。 音声もスライドも1つずつ確かめて合格だったのに、つないだ完成品ではずれていた、ということが実際に起きます。私も、部品の確認はすべて通っていたのに、完成した動画の後半で声が字幕より先に進んでいたことがありました。
だから最後の確認は、必ず完成した動画そのもので行います。最初から最後まで再生し、特に最後の1分を見てください。ずれは後ろへ行くほど大きくなるからです。台本をスライドの区切りごとに番号で分け、「そのスライドで最初に話す言葉」と「最後に話す言葉」を並べた表をAIに作ってもらうと、見ながら1枚ずつ確かめられます。
まとめ
- 講座の動画に顔は要らない。止まる原因は顔出しより、何を話すかが決まっていない順番の問題
- AIは講座メモと、役割・目的・材料・形式・条件の5つの部品で頼む。決めることと事実の確認は任せない
- カリキュラムは到達点から逆算し、1回=1つの完成品。1回分は6つの部品をそろえ、見本を先に作る
- 台本が先、スライドはあと。画面の言葉は台本から抜き出し、言い換えない
- 顔を出さない動画は、自分の声・AIの声・画面収録の3通り。AIの声には表示を付け、確認は完成した動画そのもので
次の一歩として、講座の1回分だけを選び、その回の完成品と完成基準を1〜2文で書いてみてください。そこが決まれば、台本もスライドも、その回の動画も、迷わずに作り始められます。

