仕事のあとの食事会、友人とのおしゃべり、家族との団らん。楽しいはずの時間なのに、なぜか心がもやもやしたり、帰り道にぐったり疲れていたりする。そんな経験はないでしょうか。
こういうとき、「自分は人付き合いが苦手だから」「気にしすぎる性格だから」と、自分を責めてしまう方がいます。でも、それはあなたが弱いからではありません。
結論から言うと、人は一緒に過ごす人の表情や言葉、行動から、知らず知らずのうちに影響を受けていると言われています。その説明によく使われるのが「ミラーニューロン」という考え方です。この仕組みを知っておくと、疲れの原因を自分の性格ではなく「誰と、どう過ごしているか」という環境の側から見直せるようになります。
この記事では、ミラーニューロンとは何か、そして人間関係を見直すための5つの方法をお伝えします。なお、ここでお伝えするのは考え方のヒントです。医学的な診断や治療に代わるものではありません。
人は、周りの人から影響を受けている
「類は友を呼ぶ」ということわざがあります。人は、自分と似た価値観や考え方を持つ人と、自然と一緒にいることが多いと言われます。
ただ、これは逆の見方もできます。似た人が集まるだけでなく、一緒に過ごすうちに、だんだん似ていくという面もあるのではないか、ということです。
たとえば、いつも前向きな話をする人と一緒にいると、自分まで「やってみようかな」という気持ちになることがあります。反対に、愚痴や不満の多い場にいると、自分の気持ちまで重くなってしまうこともあります。
こうした経験は、多くの方に心当たりがあると思います。人は、自分で思っている以上に、周りの人の影響を受けている。 そう考えておくと、人間関係の見直し方が変わってきます。
ミラーニューロンとは
見ているだけで、脳が反応すると言われる神経細胞
ミラーニューロンは、1990年代にイタリアの研究チームによって見つけられたと言われている神経細胞です。「ものまね細胞」と呼ばれることもあります。
たとえば、目の前の人がコーヒーカップに手を伸ばすのを見たとします。このとき、自分は手を動かしていないのに、自分が手を伸ばすときと似た反応が脳の中で起きている、と説明されます。まるで鏡に映すように、相手の行動を脳の中でなぞっているという考え方です。
共感とも関係があると考えられている
ミラーニューロンは、行動だけでなく、相手の気持ちを理解したり、共感したりすることにも関わっているのではないかと考えられています。親しい人が落ち込んでいるのを見て、自分まで胸が痛くなる。そうした経験の説明に、この考え方が使われることがあります。
ただし、ミラーニューロンの研究はまだ途中で、人の感情や共感とどこまで関係しているのかについては、分かっていないことも多いと言われています。ですから、「ミラーニューロンのせいで、こうなる」と決めつけるのではなく、「人は周りの人の影響を受けやすい」ということを考えるきっかけとして受け取ってください。
方法1:自分の周りにいる人を見直してみる
人間関係を見直す最初の一歩は、今、自分の周りにどんな人がいるのかを、落ち着いて書き出してみることです。
| 一緒にいると… | 例 |
|---|---|
| 元気になれる | 話したあと、前向きな気持ちになれる人。あなたの挑戦を応援してくれる人 |
| 疲れてしまう | 話したあと、ぐったりする人。否定的な言葉が多い人 |
ここで大切なのは、人を「良い人」「悪い人」に分けることではありません。同じ人でも、会う場面や話題によって、受ける影響は変わります。あくまで、「自分は、誰と、どんなときに疲れやすいのか」を知るための整理です。
書き出してみると、疲れの原因が特定の人や場面に偏っていることに気づくことがあります。それが分かるだけでも、気持ちは少し軽くなります。
方法2:元気になれる人と過ごす時間を増やす
次に、一緒にいて元気になれる人と過ごす時間を、意識して少し増やしてみます。
人は周りの人の影響を受けやすいと考えるなら、その影響を良い方向に使うこともできます。挑戦している人や、前向きに学んでいる人と過ごす時間が増えると、自分も自然と「やってみよう」という気持ちになりやすくなります。
これは、仕事や学びの場でも同じです。目指す姿に近い人の考え方や行動に触れる時間を増やすことは、成長の近道になります。お手本となる人から学ぶ考え方は、成功者から学ぶモデリングでも解説しています。
方法3:自分の気持ちを、言葉にして伝える
人間関係の疲れの多くは、自分の気持ちを我慢したり、相手に伝えられなかったりすることで生まれます。相手の空気を読むことを大切にする人ほど、自分の本音を後回しにしがちです。
我慢が続くと、心の中のもやもやは少しずつ大きくなっていきます。「私はこう思っている」「私はこう感じている」と、相手を責めない形で、自分の気持ちを言葉にしてみてください。
たとえば、「そういう言い方をされると、少し悲しいです」「今日は疲れているので、早めに帰りますね」のように、自分を主語にして伝えると、相手も受け取りやすくなります。
方法4:相手の気持ちを想像してみる
自分の気持ちを伝えるのと同じくらい大切なのが、相手の気持ちを想像してみることです。
「どうしてこの人は、いつもこんなことを言うのだろう」と感じたときこそ、相手の立場に立って考えてみます。もしかしたら、相手はあなたを傷つけようとしているのではなく、自分の不安をうまく言葉にできていないだけなのかもしれません。
人は相手の表情や言葉に反応しやすいと考えると、相手のいらだちに、こちらまで引きずられていることもあります。一歩引いて「この人は今、何に困っているのだろう」と考えるだけで、受ける影響を小さくできることがあります。自分がどうにかできることに目を向ける考え方は、影響の輪の法則でもお伝えしています。
方法5:どうしても疲れる相手とは、距離を調整する
気持ちを伝え、相手を理解しようとしても、すべての人間関係がうまくいくとは限りません。一緒にいると、どうしても心がすり減ってしまう相手もいます。
そんなときは、会う時間や頻度を減らすなど、距離を調整することも考えてみてください。関係を完全に断つかどうかを、すぐに決める必要はありません。会う回数を少し減らす、二人きりではなく何人かで会う、連絡を返す時間を決めるなど、できる範囲の調整から始めれば十分です。
そのうえで、新しい出会いの場に目を向けてみるのもおすすめです。学びの場、趣味の集まり、同じ目標を持つ人のコミュニティなど、「この人たちと一緒にいると心地よい」と思える場所は、探してみると見つかることが多いです。自分に合う場所を選んでいいのだと考えてみてください。
なお、つらい気持ちが長く続いたり、眠れない日が続いたりするときは、一人で抱え込まず、信頼できる人や専門の窓口に相談してください。
まとめ
- 人と一緒にいて疲れるのは、あなたが弱いからではない。人は周りの人の影響を受けやすいと言われている
- ミラーニューロンは、相手の行動を脳の中でなぞるように反応すると言われる神経細胞。ただし、分かっていないことも多い
- まずは、誰と、どんなときに疲れやすいのかを書き出してみる
- 元気になれる人と過ごす時間を増やし、自分の気持ちは相手を責めない形で伝える
- どうしても疲れる相手とは、会う時間や頻度を調整する
まずは、この1週間で会った人を思い出して、「会ったあとに元気になれた人」と「疲れてしまった人」を、それぞれ一人ずつ書き出してみてください。



