人間関係で疲れてしまう。頑張っているのに報われない気がする。このままの人生でいいのかと、ずっともやもやしている。そんなとき、ふと「子どもの頃の親との関係が影響しているのでは」と考えたことがある方もいると思います。
実際に、「親の愛情不足が原因で人生がうまくいかないのでは」と調べてこの記事にたどり着いた方もいるかもしれません。
最初にお伝えしたいのは、今の生きづらさの原因を、「親の愛情不足」の一つに決めつけなくていいということです。人の悩みには、育った環境だけでなく、今の仕事や人間関係、体調、そのときの状況など、たくさんのことが重なっています。原因を一つに決めてしまうと、かえって自分や親を責める気持ちが強くなることもあります。
この記事では、原因探しよりも先にできることとして、「自分を縛っている思い込み」に気づくための3つのステップをお伝えします。専門家ではない私がお伝えできるのは、あくまで考え方の一つです。つらさが強いときは、この記事よりも先に、専門の人に相談してください。
「親のせい」とも「自分のせい」とも決めなくていい
生きづらさを感じたとき、人は理由を探したくなります。理由が分かれば、少し安心できるからです。
ただ、「親の愛情が足りなかったから」と考えると、親を責める気持ちと、そんなふうに考える自分を責める気持ちの両方が生まれて、苦しくなることがあります。逆に「自分が弱いから」と考えれば、今度は自分を責めることになります。
どちらかに決める必要はありません。ここで大事にしたいのは、次の考え方です。
- 過去に何があったかより、今の自分が何に縛られているかに目を向ける
- 誰かを責めるためではなく、自分が楽になるために振り返る
- 一人で答えを出そうとせず、必要なら人の力を借りる
自分を縛る「〜しなければならない」に気づく
多くの方が、自分でも気づかないうちに、心の中にいくつかの決まりごとを持っています。
- 「いつも笑顔でいなければならない」
- 「人に頼ってはいけない」
- 「完璧にできないなら、やらないほうがいい」
- 「自分の意見を言うと、嫌われる」
こうした決まりごとは、かつてのあなたを守ってくれたものかもしれません。ある時期には、それが周りとうまくやっていくための工夫だったこともあるでしょう。
ただ、今の生活や仕事の中では、その決まりごとが窮屈に感じられたり、挑戦のブレーキになったりすることがあります。問題は、決まりごとがあること自体ではなく、それに気づかないまま縛られ続けていることです。
こうした思い込みは、子どもの頃の経験から生まれることもあれば、学校や職場、これまでの人間関係の中で身についたものもあります。どこから来たのかを正確に突き止めることよりも、「自分にはこういう決まりごとがあるんだな」と気づくことのほうが、次の一歩につながります。
ステップ1:自分の中の「決まりごと」を書き出す
まずは、日常の中で「苦しいな」「窮屈だな」と感じた場面を思い出してみてください。そして、そのとき自分の中にあった「〜しなければならない」「〜してはいけない」を書き出します。
| 苦しかった場面 | そのときの決まりごと |
|---|---|
| 頼まれた仕事を断れず、抱え込んだ | 頼まれたら断ってはいけない |
| 会議で意見を言えなかった | 反対意見を言うと嫌われる |
| 新しいことを始められなかった | 失敗するところを見せてはいけない |
ノートに書くだけで大丈夫です。誰かに見せる必要はありません。書き出してみると、同じような決まりごとが何度も出てくることに気づくはずです。それが、今のあなたをいちばん強く縛っている思い込みです。
ステップ2:その決まりごとが、今も必要かを確かめる
次に、書き出した決まりごとの一つひとつについて、次の問いを投げかけてみてください。
- この決まりごとは、いつ頃から持っているだろう?
- この決まりごとは、当時の自分をどう守ってくれていただろう?
- 今の自分にも、この決まりごとは必要だろうか?
- もし少しだけゆるめるとしたら、どんな言葉に変えられるだろう?
たとえば「頼まれたら断ってはいけない」なら、「自分に余裕があるときは引き受けて、余裕がないときは相談する」と言い換えられるかもしれません。
1つ目の問いを考えるときに、子どもの頃のことや家族のことを思い出す方もいると思います。つらい記憶が出てきて苦しくなったら、そこで無理に続けないでください。一人で振り返るのがつらい内容は、カウンセラーなど専門の人と一緒に扱うほうが安全です。
思い込みを外していく考え方は、思い込みを外す4つのステップでも解説しています。
ステップ3:小さく試して、自分を楽にする選択を重ねる
言い換えた決まりごとが見つかったら、日常の小さな場面で試してみます。
- 急ぎでない頼まれごとに「明日でもいいですか」と返してみる
- 信頼できる人に、一つだけ自分の意見を伝えてみる
- 完璧でなくても、途中のものを誰かに見せてみる
一度で変わる必要はありません。小さく試して、「思っていたほど悪いことは起きなかった」という経験を重ねていくことで、決まりごとは少しずつゆるんでいきます。
試してみてうまくいかなかったときも、自分を責めないでください。長い間持ち続けてきた決まりごとは、すぐには変わらないのが自然です。「今日は言えなかったけれど、言いたいと思えた」。それだけでも、以前とは違う一歩です。
できたことは、ノートに一行書き留めておくのがおすすめです。あとで読み返したときに、自分が少しずつ変わってきたことを確かめられます。
もし、信頼できる友人や家族がいれば、試してみたことを話してみるのもよいと思います。自分の中だけで考えていると、どうしても厳しい見方になりがちです。人に話すことで、「それは十分頑張っているよ」と、自分では気づけない見方をもらえることがあります。
親と話すかどうかは、あなたが決めていい
振り返りを進めるうちに、親に気持ちを伝えたいと感じる方もいるかもしれません。伝えることで気持ちが軽くなる方もいます。その場合は、相手を責める言い方ではなく、「あのとき、私はこう感じていた」と自分の気持ちを伝える形にすると、話しやすくなります。
一方で、親と話すことが必ずしも必要なわけではありません。話すことでかえって傷つくおそれがある場合や、今は距離を置いたほうが自分を守れる場合もあります。親と話すかどうか、いつ話すかは、あなたが自分の安全と気持ちを一番に考えて決めてかまいません。
つらいときは、一人で抱えずに相談してください
この記事でお伝えしたのは、自分を縛る思い込みに気づくための、一つの考え方です。心の問題の専門家として書いているわけではありません。
次のようなときは、この記事の方法よりも先に、医師やカウンセラー、公的な相談窓口など、専門の人に相談してください。
- 気持ちの落ち込みや不安が何週間も続いている
- 眠れない、食べられないなど、体に影響が出ている
- 家庭の中でつらい経験をしたことがあり、思い出すと苦しくなる
- 消えてしまいたいと感じることがある
専門の人に相談することは、弱さではありません。自分を大切にするための、とても大事な選択です。
働き方のことで無理を続けてしまう方には、人生を失敗して後悔する典型的なパターンも読んでいただきたいです。我慢を続けるかどうかを考えるための問いをまとめています。
まとめ
- 生きづらさの原因を「親の愛情不足」の一つに決めつけなくていい
- 過去の原因探しより、今の自分を縛っている「〜しなければならない」に気づくことから始める
- 決まりごとを書き出す → 今も必要か確かめる → 小さく試す、の3つのステップで進める
- 親と話すかどうかは、自分の安全と気持ちを一番に考えて決めてよい
- つらさが強いときは、一人で抱えずに専門の人や相談窓口に相談する
まずは、今日「苦しいな」と感じた場面を一つだけ思い出して、そのときの自分の中にあった決まりごとを一行書いてみてください。気づくことが、自分を楽にする最初の一歩です。


